社会統計学論文ARCHIVES(人生という森の探索)

社会統計学分野の論文を要約し、紹介します。
休憩タイムでは本、映画、音楽、絵画、演劇、旅、お酒、料理を楽しみます。

山田喜志夫「拡大再生産における固定資本の補填」『土地制度史学』第34号,1963年(『再生産と国民所得の理論』評論社,1968年,所収)【その1】

2018-10-05 20:48:58 | 社会統計学・社会科学方法論アーカイブズ
 固定資本の補填は独特の様式をもつ。固定資本はその耐用期間の間,生産過程でその価値を全額生産物である商品に移転するのではなく,部分的に価値を移転する。そして,固定資本には,摩損価値部分の貨幣形態での漸次的補填と,一定期間後での一挙的現物補填という補填関係がある。この固定資本の補填の特殊性に関しては,『資本論』第2巻第20章第11節で解明されている。しかし,拡大再生産の場合におけるそれは,『資本論』でも不十分である。したがって,社会的総資本の再生産と流通に関する再生産論を具体化するには,この拡大再生産における固定資本の補填問題が解明されなければならない。

 本稿の構成は次のとおり。「第1節:固定資本の貨幣補填と現物補填」「第2節:固定資本への追加支出のための貨幣の流通と源泉」「第3節:固定資本への追加支出による生産拡大現象の本質」「第4節:拡大再生産における国民所得の規定」。
単純再生産では耐用期間が完了して現物で補填され更新される固定資本の価値量(R)とその年に固定資本の価値移転によって貨幣形態で積み立てられる減価償却基金の価値量(D)は等しい。しかし,拡大再生産の場合には,事情が異なる。ここでは,固定資本の貨幣補填価値が現物補填価値よりも大きい。この理論的必然性は,どのように解決されるのだろうか。筆者の説明は,要約すると次のようである。拡大再生産の前提の下では,蓄積によって,年々の剰余価値の一部が追加固定資本として新たに投下され,固定資本の蓄積が生じ,年々固定資本価値量は増加する。拡大再生産では,後に投下された固定資本ほど,したがって年齢の若い固定資本ほどその価値量は大となる。総固定資本の構成は,新しい若いものに偏る。そこで,D>Rの関係が成立する。拡大再生産の場合は,固定資本に関して一方的販売額(D)が一方的購買額よりも必然的に大となり,両者の差額(D-R)に相当する固定資本の過剰部分が不可避的に発生する。

 拡大再生産における固定資本に関するD>Rの問題は,再生産論上でいかに理解すべきだろうか。これを固定資本である労働手段の生産過剰とする見解があるが(林直道),問題解決の方向は社会的総生産物が全て実現されるとしなければならない。全生産物の実現を前提とするならば,過剰労働手段に対して追加支出すなわち一方的購買がなされなければならず,Ⅰ部門とⅡ部門の追加支出によってこれは賄われる。拡大再生産の場合,「固定資本の貨幣補填価値(D)=固定資本の現物補填価値(R)+固定資本への追加支出価値(D-R)」の関係は本条件となる。固定資本への追加支出価値(D-R)に対応して追加流動不変資本と追加可変資本を必要とする見解(豊倉三子雄,富塚良三,都留重人,二瓶敏)があるが,固定資本への追加支出のない場合を想定すること自体がそもそもの誤りであるので,筆者はこれらの諸見解に同意できない,と述べている。(続く)

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
« 大橋隆憲「階級構成」大橋隆... | トップ | 山田喜志夫「拡大再生産にお... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

社会統計学・社会科学方法論アーカイブズ」カテゴリの最新記事