著者はモンゴメリの小説「赤毛のアン」に小学校5年生の時に出会いました。その読書体験はただの感動だけではなく、「敗戦体験」だったそうです。
初めての生身の西洋文化との出合い、西洋に対する強烈な憧れ。しかし、著者は長く、『赤毛のアン』への憧れを隠していたのです。
その著者は今、大人になって封印を自ら解き、その魅力を解明し、学びとるべきものを提示してくれています。
「アン」の魅力はまず主人公の個性。赤毛でニンジンのようだけれども、彼女の想像力はとめどつきないのです。美しい自然に名前を与える想像力。彼女の個性はマシュウとマリアという老兄妹の人間性にも影響を与え、周囲の人々を感化していきます。
この老兄妹はもとよりリンド夫人、ギルバート、ダイアナとの関係も丁寧に描かれ、読者はストーリーを楽しみながら、アンと一体となって成長していくことができます。
また、『赤毛のアン』のベースにあるのはキリスト教的ヒューマニズム、そして運命を受け入れるという世界観(残念ながら日本での『赤毛のアン』のブームは表面的で、この小説の核の部分の理解が不足していると著者は書いています)。
では、テーマである「幸せになる方法は?」。それは奇蹟を見つけること。そして奇蹟はどんなにつまらなく見える日常にも必ずある、と著者は語っています。
奇蹟を起すには「ひたむき」に生きること。「ひたむき」に生きるには「仮想」の世界、魂がむかうべき目的地を感じ取ること。さらに、気持的には「ゆらぎ」を感じること。
著者は結論のようにこう書いています、「常に自分の中に美しい世界を持ち、毎日の生活の中に沢山の感動を見つけ出す。そうして「ひたむき」生きる中で、やってくる「運命」を受け入れる。/それこそが、アンやマシュー、マリラに起こった「奇蹟」に巡り合う方法。幸福になるための、「奇蹟」を生み出す方法なのではないでしょうか」と(p.263)。
茂木健一郎『赤毛のアンに学ぶ幸福になる法』講談社文庫、2008年
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