「(3)批判的デモグラフィー研究」では、出生性比の法則、人口転換、年齢構造の変化と人口高齢化の統計的研究成果がまとめられている。上杉正一郎は出生性比の法則の社会経済的要因の重要性を指摘している。関弥三郎は戦後における出生性比の比較的高水準での安定的変動を観察し、それが長期的には社会経済的水準や医療水準などによってもたらされている、とした。他に、丙午の迷信による人為的攪乱に関する検討を、青盛和雄、関弥三郎が行っている。
人口転換論とは、先進国における少産少死への到達を人口動態の近代化として捉える一般的理論である。この問題については、出生率や死亡率の低下をもたらす社会経済的要因をを具体的に明らかにすることが重要である。筆者はここで本田龍男の労によって実現した『人口白書』による人口転換現象に対する批判的分析、愛甲勝矢による戦後日本の人口転換の「不自然な急激さ」の指摘、人口現象と資本主義経済との連関分析が必要であるとの提唱、上杉正一郎の貧困少産論、伊藤陽一による諸階級・階層の状況との関連での人口現象の解明の必要性、小川和憲による資本主義経済の発展段階に対応した人口現象の解明(労働力価値と価格[賃金]との乖離)を紹介している。
年齢構造の変化と人口高齢化では、1960年代の生産年齢人口の異常な膨張こそが高度成長経済の基盤となったという林直道の指摘がとりあげられている。また注目すべきは、豊田尚が人口と経済の関連把握を具体的に行ったことである。その特徴は、両者を関連づける媒介要因を検証していることにある。それらの要因とは、労働力の世代別分析から高度経済成長期における農業の既就業者、新規若年労働力の排出と製造業への吸収、その後の製造業における労働力排出傾向のなかでの中高年労働力の排出と若年労働力の吸収傾向など、である。坂寄俊夫は人口の高齢化過程の把握のために、農村部における高齢化の進展地域や都市内部での高齢化地域と非高齢化地域の不均等発展のパターンを分析し、人口高齢化の地域的特徴を明らかにした。藤岡はこの方向で、階層別の人口の年齢構造の変動を実証分析し、年齢構造の地域性と階層性との関連把握を試みている。
筆者は最後に「今後の課題」を展望している。人口統計の批判的利用では、階級・階層的視角が不可欠である。具体的方法論的試みがいくつかあるがまだ部分的で、将来的には人口統計の調査論から諸分野の利用方法論に至る体系的な理論的・実証的研究の進捗が課題である。また、これらの諸研究の成果を用いて、階級・階層的人口過程の統計的研究のを積みかさね、人口過程を総体的に把握し、デモグラフィーの批判的研究を進めることが必要である。この方向での研究は不十分で、未解明の部分が多い。今後の課題である。重要なのは、統計指標を社会・経済指標とを組み合わせて利用することで、人口現象の統計的研究をこえ、統計的人口法則から理論的人口法則、そして経済法則との関連把握にまで研究のレベルをあげることである。(終わり)
人口転換論とは、先進国における少産少死への到達を人口動態の近代化として捉える一般的理論である。この問題については、出生率や死亡率の低下をもたらす社会経済的要因をを具体的に明らかにすることが重要である。筆者はここで本田龍男の労によって実現した『人口白書』による人口転換現象に対する批判的分析、愛甲勝矢による戦後日本の人口転換の「不自然な急激さ」の指摘、人口現象と資本主義経済との連関分析が必要であるとの提唱、上杉正一郎の貧困少産論、伊藤陽一による諸階級・階層の状況との関連での人口現象の解明の必要性、小川和憲による資本主義経済の発展段階に対応した人口現象の解明(労働力価値と価格[賃金]との乖離)を紹介している。
年齢構造の変化と人口高齢化では、1960年代の生産年齢人口の異常な膨張こそが高度成長経済の基盤となったという林直道の指摘がとりあげられている。また注目すべきは、豊田尚が人口と経済の関連把握を具体的に行ったことである。その特徴は、両者を関連づける媒介要因を検証していることにある。それらの要因とは、労働力の世代別分析から高度経済成長期における農業の既就業者、新規若年労働力の排出と製造業への吸収、その後の製造業における労働力排出傾向のなかでの中高年労働力の排出と若年労働力の吸収傾向など、である。坂寄俊夫は人口の高齢化過程の把握のために、農村部における高齢化の進展地域や都市内部での高齢化地域と非高齢化地域の不均等発展のパターンを分析し、人口高齢化の地域的特徴を明らかにした。藤岡はこの方向で、階層別の人口の年齢構造の変動を実証分析し、年齢構造の地域性と階層性との関連把握を試みている。
筆者は最後に「今後の課題」を展望している。人口統計の批判的利用では、階級・階層的視角が不可欠である。具体的方法論的試みがいくつかあるがまだ部分的で、将来的には人口統計の調査論から諸分野の利用方法論に至る体系的な理論的・実証的研究の進捗が課題である。また、これらの諸研究の成果を用いて、階級・階層的人口過程の統計的研究のを積みかさね、人口過程を総体的に把握し、デモグラフィーの批判的研究を進めることが必要である。この方向での研究は不十分で、未解明の部分が多い。今後の課題である。重要なのは、統計指標を社会・経済指標とを組み合わせて利用することで、人口現象の統計的研究をこえ、統計的人口法則から理論的人口法則、そして経済法則との関連把握にまで研究のレベルをあげることである。(終わり)








