春日直樹『ミステリイは誘う』講談社新書、2003年
「死体」「探偵」「美女」「手がかり」「推理」の5つのタームから、ミステリーの魅力を読みと解いた本です。
アメリカにヴァン・ダインという本格的ミステリイの創始者がいたらしく、その人の『探偵小説作法二十則』という本が援用されています。このテキストによれば、ミステリーには「死体を登場させるべし」[死体](p.18)、「事件には、ちゃんとした探偵が登場して問題の解決にあたるべし」[探偵](p.50)、「恋愛を持ち込むなかれ」[美女](p.78)、「手がかりはすべて明確に提示せよ」[手がかり](p.110)、「殺人方法と推理方法は合理的で科学的たるべし」[推理](p.136)という鉄則があるらしいです。
確かにミステリイは読者の心を摑むために「死体」を登場させることが多いですね。「死体」を抜きにはミステリイは成り立たないと著者は書き出します(p.18)。
「死体」が登場すれば、次は「探偵」」です(p.50)。ミステリイには、いろいろなタイプの探偵がでてきますが、彼らの仕事は「あたり一面の<外観>の奥底から、大切な<存在>を取り出す」ことです(p.58)。
ミステリイの魅力を際立たせるのは死体や探偵の傍にいる「美女」です。しかし、彼女のミズテリイの中での居場所は難しいらしいです。主役になっては困るし、しかし読者は美女の存在に気がきでないのです。「彼女に引かれるほど、彼女がわからなくなる」くらいがよいのでしょうか?
引っ張ると謎がほどける一本の糸、それが手がかりです(p.110)。その手がかりがミステリイのなかでどういうふに重要なのかが、本書では哲学的に考察されています。
最後に「推理」。ヴァン・ダインは上記のように言っていましたが、「探偵の推理は呪術とも科学ともいいきれない。逆にいうと、呪術にも科学にも似ている」(p.157)というのが著者の結論です。
引用例がたくさんでてくるので、ミステリイをたくさん読んでいれば面白い本なのでしょうが、わたしのこの分野の読書は貧しいので、残念でした。
でも、そのうちこの未開拓の分野にも分け入っていきたいとと思います。
著者は人類学者で、大阪大学の先生です。
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