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山田茂「階級構成表と『労働力調査』」『統計学』第34号,1978年3月【その1】

2018-07-12 22:38:28 | 社会統計学・社会科学方法論アーカイブズ
 階級構成表は従来,国勢調査,就業構造基本調査を使って作成された。筆者は本稿で,「労働力調査」によってこの表を作成する方法と手続きを示している。構成は次のとおり。「はじめに」「1.原資料の吟味:A.季節バイアス,B.非標本調査,C.標本調査,D.統計の平板性」「2.『労働力調査』にもとづく階級構成表」。

 階級構成表作成の代表的手続きである「大橋方式」は,国勢調査の「労働力状態」によって区分した表と「職業」・「従業上の地位」クロス表にもとづいて階級構成表を作成する手続きである。前者は「非労働力人口」「完全失業者」「就業者」の分類をもち,後者は「就業者」をさらに「職業」と「従業上の地位」の2つの標識で分類している。「国調」の集計で前者は1950年以来,毎回,全数集計されている。後者は1960年の全数集計を除き,1%,10%,20%の抽出集計である。大橋隆憲がこれまでに公表した階級構成表は,抽出集計結果を使っている。そうであるかぎり,そこで使われた統計は標本誤差を伴う。階級構成表といえども速報性が余儀なくされるかぎり,抽出統計を利用しなければ対応できない事情は理解できるが,後日より抽出率の高い集計や全数集計が公表された場合には,差し替えられなければならない。「労調」は「国調」と調査内容で多くの共通点をもち,しかも階級区分に必要な「従業上の地位」区分では「就調」よりも細分されているので,階級構成表の作成により適合的である。

 筆者は当該問題を考察するにあたって,原資料の対象反映性を,季節バイアス,非標本調査,標本調査,統計の平板性に論点をしぼって,吟味している。あまり指摘されないことであるが,「国調」の労働力状態の把握は「労働力方式」をとっているため,調査票へのその記入は9月末週を対象とする。したがって,農業就業者はこの季節にかなり高い水準になる。「国調」の統計は一部このように季節変動のバイアスを含む。これに対し,「労調」による統計は標本誤差をもつものの,季節変動を量的に把握できるだけでなく,年平均が意味のある項目である場合にはその利用が可能である。
非標本誤差は「国調」にも「労調」にも同様に存在するが,「国調」では「顔見知り調査員」による調査になりがちであるが(このことからもたらされる非標本誤差が生じる),「労調」の調査員は公務員が多く,経験も積んでおり,老齢者が少ないので比較的質が高い。

 「労調」が標本調査であるために生じる誤差は,層別基準の妥当性にかかわるものと純確率的な原因によるものとが考えられる。「労調」の第一次抽出は,主として産業別就業者数による「国調」調査区の特性によって行われる。「国調」の調査区の設定は実査の1年ほど前に行われ,その特性は「国調」実査の2-7年後の「労調」抽出の層別基準として用いられる。「国調」以降の新設集団住宅もひとつの層として別の資料によって追加抽出される。第二次抽出は住戸を単位として系統抽出によって行われる。「労調」関連の報告書は「推定誤差の標準誤差」表を1965年5月分から掲げている。労働年齢人口の増加にともなってサンプル数が増えるが,この誤差表がそのまま掲げられている。その妥当性には疑問が残る。(続く)
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