村松友視さんの同名の小説を映画化したもの。
東京の大井町のあたりで、独り者の安さん(渡瀬恒彦)が「時代屋」という屋号をもつ骨董屋を営んでいた。夏のある日、野良猫をかかえ日傘をさした、真弓(夏目雅子)がそこに飛び込んできて、店に居ついてしまう。
一緒に暮すようになっても、安さんは、真弓がどういう過去を持っているか訊かない。そんな真弓はときどき無断で家を出ていき、7日目になると戻ってくる。
喫茶店サンライズのマスター(津川雅彦)やクリニーング屋の今井さん夫婦、飲み屋トン吉の夫婦などが心配するが、真弓は何事もなかったかのように帰って来る。理由は言わない。
闇屋育ちのマスターの乱れた生活、クリーニング屋の今井さんと奥さんとの古いトランクをきかっけとした逸話が挟み込まれている。
真弓が不在の間、安さんは、どこか真弓に似ている美郷(夏目雅子=二役)という女と知り合い、関係する。東京の孤独で華やいだ暮しをやめ、彼女は東北の郷里に戻って結婚しようと考えている。その寂しさの中で、安さんと出会ったのだ。
マスターは経営がうまくいかない店を閉めることにあんり、店で働いていたユキちゃんと渡辺クンに店を引き取ってもらい、自分は小樽の旧い友人を訪ねることになる。
安さんも、岩手でのぞきからくりの売り物があると聞き、マスターと途中まで一緒に車で旅に出る。道中、しみじみと人と人との絆について考える安さん。
そんなことを考えていた安さんが店に戻った翌日、真弓がまた日傘をさして帰ってきた。ペコリと頭を下げる真弓だが、もちろん安さんはもちろん何も問わない。