黄色い拍子木

たまのをよたえなばたえねながらへば しのぶることのよわりもぞする

平和記念資料館と大和ミュージアム

2005-09-20 14:15:07 | 旅行
戦争と平和。広島に来ると意識せざるを得ない相反する
二つのテーマです。

最初に、私は平和を望みますが、完全な平和主義者ではありません。
戦争は無いに越したことはありませんが、必要上止むを得ない
場合は手段の一つとして行使されるべきと考えています。
ただ、それは最後の方に残された選択肢ですので、安易に
選んだり行使されたりしてはいけません。あくまでも、最後の
手段として。

もうひとつ、先の大戦について誤った戦争であったか否かは
解かりません。他列強のブロック経済やABCD包囲網などの
経済的困難の打破から見れば必要であったと思いますし、
大英帝国やアメリカを敵に回した外交的失敗、そしてその後の
悲惨な状況を思えば誤りだったとも思います。正であったか、
誤であったかを判断する事自体が愚問に思います。
ただ、祖母や祖父らの世代が苦難と屈辱を味わった事を思えば、
二度と起きて欲しくない惨禍である事に違いはありません。

平和記念資料館と大和ミュージアム、両方を見回り、私はどちらの
資料館でも泣きました。

資料館では箸を付けられることも無く黒く炭化した弁当箱や
形を辛うじてとどめる国民服、三輪車の前で泣きました。
その惨禍そのものではなく、それら遺物の背景に潜んでいた
当たり前の日常(戦時と言えども、「おはようございます」で始まり、
「おやすみなさい」で終わる日常)がその瞬間、永久に失われて
しまったことに泣きました。

大和ミュージアムでは人間魚雷「回天」の前で流されていた、
搭乗員が帰省時にひそかに録音した遺言に泣きました。ごく当たり前の
日々を過ごしたい!みんなと楽しく暮らしたい!その事が切実に
述べられた前半部分と、国家のため、無念にも国に殉ずる事を
述べた後半部分と、それぞれに涙しました。

平和主義者、それこそフォークソングなんて歌ってどうにかなると
思っているような人に、この大和ミュージアムは「ミリタリズムの城」
みたく映るのでしょう。反面、頑なな民族主義者には平和資料館は
「臥薪嘗胆のソース」みたく映るのでしょう。上手くはいえませんが、
お互いの「真実」はかなりゆがんでいるに違いません。スプーンの
裏と表のように。

でも、それは違います。大和ミュージアムは「ミリタリズムの城」では
ありませんし、平和資料館は「臥薪嘗胆のソース」ではありません。

どちらも、ナレーションや展示に多少は感傷的な部分はあるにしろ、
「事実」を並べているに過ぎません。核兵器によって全て破壊された
事実と、戦艦大和が技術の向上と雇用を生み出し、その技術力が
戦後、多くの生活を支えた事実と。

どちらも事実なのです。ある特定の利益者によって歪められる
真実ではありません。事実なのです。戦争が生み出した事実
なのです。

もし、広島にて平和を考えるのであれば、両方行かれることを
お勧めいたします。事実に重みの違いはありませんが、資料としての
公平性は必要です。

それから、平和について考えても遅くはありません。

<追記>
一番の事実である、戦争を体験されたご敬老が涅槃に旅立たれています。
「事実」の証人である彼らや彼女らが消えた後、捻じ曲げられた「真実」が
「事実」に取って代わることを大変危惧します。
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4 コメント

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妹尾カッパさんの (Mee)
2005-09-20 21:10:33
少年Hを読みかけなんですけど、面白いです。



カッパさん自体が面白いってこともあるけど。



なんていうか、良い言葉が浮かびませんが、子供の目から見た戦争が、生き生きと描かれています。



「これは悪いことだから」とか「これは良いことだから」と頭ごなしに言うより、もっと説得力のある戦争でした。



私の知らなかったことも沢山出てきました。



また続きを読もうーーーっと。
Unknown (・×・)
2005-09-21 02:08:13
家のおばあちゃんも学徒動員で就業中に

「あかんわ、こりゃ負けると」と思った

らしいです。



そういう、一般の立場での戦時体験は資料館に

収まる資料とは異なる、素晴らしい価値を

持っていると思うのですね。



論より証拠、編集を含まない生々しいデータの

保存は非常に重要です。なぜなら事実ですからね。



私は最近、安部公房を読んでいます。

面白いですね、この人。
Unknown (・×・)
2005-09-21 08:33:05
私の平和へのスタンスは誤っているのでしょうか?

それとも正しいのでしょうか?



そんな事は愚問なのかもしれなくても、

ついつい尋ねたくなってしまいます。
勧善懲悪 (Mee)
2005-09-21 21:00:47
誰も「正解」なんてもってないでしょうね・・・。

そんなに簡単な問題じゃないのだと思います。



ただ、「良い」「悪い」で終わらせて、考えることをやめてしまうのが一番危険なのかもしれません。



日本は戦争をした。

じゃ、なんでアジアや太平洋に進出していったのか?

軍部の独走です、じゃ何も生まれないでしょう。



なんで戦争しないといけなかったのか。

何が日本を追い込んだのか?

どうして一部の兵隊さんはアジアや沖縄で住民を虐殺しちゃったりしてしまったのか?

そこらへんを観ないと次には進めないと思います。

「その人がマッドだったから」ではないでしょう。



同じように、何故広島に、そして長崎にまで原爆を落とさないといけなかったのか?

「原爆がなかったらもっと多くの血が流れていた」

うーん、その理由はホンマどうなんでしょうか。



何百年も前なら、強い軍隊を持つことはすなわち「その国の民を守る」ことだったと思います。

今の時代、大国が武力を行使して生まれるのはテロリストなんじゃないでしょうか??

「戦争」が、ホンマ簡単に使われすぎてると思います。どっかの国では。

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