映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

エル・クラン(2015年)

2018-07-01 | 【え】



 以下、上記リンクよりストーリーのコピペです。

=====ここから。

 1983年アルゼンチン。裕福なプッチオ家は父と母、5人の子どもたちと幸せに暮らしていた。

 ある日、二男が通う学校の友達が誘拐され、姿を消す。以降、金持ちだけを狙った身代金事件が多発し、近所の住民たちが不安な毎日を送っていた。

 そんな中、プッチオ家の主のアルキメデスは、妻の作った夕食をなぜか2階にある鍵のかけられた部屋に運ぶという不審な動きをしていた。

=====ここまで。

 実話が元ネタで、アルゼンチンでは知らない人はいない事件らしい、、、。


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 公開当時、見に行きたかったんだけど行きそびれた本作。まあ、DVD鑑賞で正解だったかな、、、。でも、アルゼンチンでは大ヒットしたらしい。予告編は異様に明るい仕立てだけど、内容は陰惨そのもの。ぎょえ~、、、。


◆ものすごい杜撰な犯行に唖然、、、。

 プッチオ家は、つまり、ほぼ一家総出で身代金目的の誘拐をしていたのです。誘拐に関わらなかったのは、三男のギジェと、二女のアドリアナだけ。実際の事件では、アドリアナも関わっていたっぽいが、よく分からない。

 本作で描かれている誘拐事件は、3件+未遂1件。実際はもっとやっていたのかどうか、それもイマイチ分からないけど、まあ、そんだけやってりゃ十分でしょ。

 この誘拐を主導していたのは、一家の主、アルキメデス・プッチオ。退役軍人らしい。……というか、この話は、アルゼンチンの独裁政治が終焉を迎え、曲がりなりにも民主国家に移行したことが大きな背景にある。つまり、アルキメデスは、軍人としてお役御免になることを見越して、生きる術として“誘拐事業”を思い付いた、ということのようだ。そこで、誘拐を思い付く、ってのがもう尋常じゃないんだけど、まあ、だからこそ全国民が知る事件にもなり、こうして映画にもなったわけだ。

 で、アルキメデスは、長男でラグビーのスター選手であるアレハンドロと共謀し、アレハンドロのチームメイトで金持ちの息子を誘拐し、なんと自宅の2階にあるゲスト用(?)バスルームに監禁する。上記あらすじにある「アルキメデスは、妻の作った夕食をなぜか2階にある鍵のかけられた部屋に運ぶという不審な動き」ってのは、人質に食事を運んでいたってこと。

 そこで人質に自筆の手紙を書かせ、生きている証拠として身代金を巻き上げると、あっさり人質を殺してしまってビックリ。確かに、あんな誘拐の仕方をしたら、生きて返せば絶対にアレハンドロが疑われるわなぁ、、、と思って見てはいたのだが、あそこまであっさり殺してしまうとは思わなかったから、唖然としてしまった。もとより、最初から殺すつもりだったわけだ。

 ほかにも、地声で脅迫電話掛けちゃったり、身代金を堂々と取りに行ったり、、、まあ、大胆というのか、杜撰というのか、こんなんで捕まらないのか? と、日本に暮らす我々は一様に不思議に思うが、これも、軍事独裁政権の名残が濃い社会だからこそ、なのかも知れない。実際、終盤には、アルキメデスの元上司と思しき大佐とかいうオッサンから電話があり「もう庇いきれん」とか言われているシーンがある。つまり、プッチオ家がやっていることはこの大佐によって隠蔽されていた、ってことかしらね。

 とにかく、どれもこれも、荒っぽく人質を拉致してきて、地声で脅迫電話を掛け、大金を巻き上げたら、人質を殺して捨てる、、、というやり方を繰り返していたプッチオ家の人々。本作では、妻(学校の先生!!)や、娘達の関与はあまり描かれていないが、実際はバッチリ関与していたらしい。

 プッチオ家が割と絵に描いたような良き家庭だったから、誘拐事業とのギャップがニュースになったんだろうけど、当時のアルゼンチンでは誘拐はゴマンとあったらしい。


◆卑劣漢アルキメデス

 それにしても、私が本作を見て驚いたのは、家族で誘拐という犯罪を生業にしていたことではない。そんな映画は、他にもたくさんある。

 何が驚いたって、アルキメデスのその人と成りである。中盤までは、家族を守るため(養うための責任感から)の誘拐ビジネスか、と思われたのだが、大間違いだった。このオッサン、もう、トンデモ爺ィなんである。

 どうトンデモかというと、家族のためでも何でもない、ただただ、自分の生きるため、自分の身を守るために、一連のことをやっていたのである。こんな自己チュー爺ィ、あんまり映画でもお目に掛かった記憶がない。犯罪を生業にしている家族の長は、概ね浪花節で、家族のために自己犠牲的な感じが多いという印象があるんだけど、このアルキメデスは違う。

 長男のアレハンドロが、もう誘拐なんかしたくないと、次の計画から抜けると宣言する。で、アレハンドロ抜きで誘拐を実行したところ、見事に失敗する。すると、アルキメデスは、アレハンドロの所に殴り込みに行って、首を窒息寸前まで締め上げて「てめぇのせいで失敗した! 白昼失敗した! 父親に対してなんてことしやがったんだてめぇ!!」みたいな(もっと酷い罵り方で)ことを吠え立てるのである。そこには、父親としての顔などなく、ただただ、自己チューな爺ィの顔があった。

 終盤、遂にプッチオ家は御用となる。アルキメデスは、弁護士や判事に「私はゲリラに脅されてやっただけだ」等と言って飽くまで潔白を主張するが、何しろ地声の脅迫電話やら証拠が満載なので、そんな言い分は認められるはずもない。判事にも「お前が罪を認めれば家族は救える」と言われ、普通のゴッドファーザーならば、一身に罪を被って家族を解放させる、というものだろうが、アルキメデスは違う。

 留置場でのアルキメデスとアレハンドロのシーンが、もうおぞましいというか、不快指数100%。アレハンドロにアルキメデスは「明日の公判では否認する。看守に殴られて仕方なく自供したと言う。殴られた証拠の傷を作るために、お前、オレを殴れ」と言うが、当然アレハンドロは拒む。すると、そこでアルキメデスがアレハンドロに浴びせる言葉が、もう、卑劣極まりないのである。

 言ってみれば、自己保身のためなら、どんな卑劣なことでも平気で実行するのである。息子に恩に着せまくり、脅迫し、思考停止させて、自分の言いなりにさせるためなら手段を選ばない。自分の身が安泰になれば、息子に嘘をつかせようが、さらなる罪を重ねさせようが一蓮托生、構わないのである。

 ……なんか、どっかの国のソーリダイジンを見ているようであった、、、ごーん。

 というか、私の母親そっくりで嫌になった。もちろん、私の母親はこんな大それた犯罪をやらかすことはないが、我が娘を思い通りに支配するため、恩に着せ、脅迫し、思考停止させるというのは、全く同じ手法なのである。だから、アレハンドロが、その後、アルキメデスをボコボコにしてしまった気持ちは痛いほど分かる。そして、恐らくそう仕向けるためのアルキメデスの罵詈雑言であったのだろうことも、また不快指数が上がる要素だ。


◆その他もろもろ

 アルキメデスは、軍の会計士であり、外交官であったようで、きっと頭は非常に良い人なんだと思う。実際、この事件で刑務所に入っている間に弁護士資格を取得し、刑期を終えたら、弁護士として活躍した、ってんだから、、、、ボーゼン、、である。再婚もして、出獄後はそれなりの生活をしていたみたいだ。

 アルキメデスを演じたギレルモ・フランチェラという人は、アルゼンチンのコメディ俳優らしい。このアルキメデス、瞬きをしないのである。ブルーの瞳なんだけど、見開いたような目で、相手や状況をじっと凝視するのが、ものすごく不気味というか、気持ち悪いし、不自然。でも、その演技が、この爺ィのイカれっぷりを表わしていて素晴らしい。

 本作では、長男のアレハンドロは、嫌々アルキメデスに協力していた、という感じだったが、実際には積極的に関わっていた様である。ただ、捕まってから精神的に異常を来したのは事実らしく、それはそれで気の毒ではある。……が、被害者のことを思えば、それも自業自得といったところか。

 アレハンドロに可愛い彼女が出来て結婚しようとして、アレハンドロ自身の人生を送ろうとすると、アルキメデスは「親を捨てるのか!」と息子を締め上げ、牙を剥いた。結局の所、頭は良いが、卑劣極まりない一人の男のせいで、家族みんなが犠牲になったというプッチオ家の悲劇を描いていたのだと思うと、コメディタッチの演出ではあるが、その根底に流れるのは極めて陰惨で、切ないものである。

 アレハンドロは、49歳で亡くなっている。アルキメデスは弁護士になって再婚して長生きしたけれど。








プッチオ家の一員に生まれたことがアレハンドロの悲劇だった。




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