ブラジル・リオデジャネイロ郊外のスラムで暮らすラファエルは、ある日、ゴミ山の中から財布を拾う。この財布が、ラファエルと、その友人ガルド&ラットの少年3人を、大人の陰謀の世界へと巻き込む、、、。この財布、一体何なの?
・・・スラム街を舞台にしたファンタジー。
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監督のスティーヴン・ダルドリーは、私の最愛の映画の1つである『リトル・ダンサー』を撮ったお方。これまで4作撮っていて、前作『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』は未見だけれど、4作とも一般に評価は高いですね、、、。
まぁ、正直、私には、『めぐりあう時間たち』も『愛を読むひと』も、それほど、、、。特に『愛を読むひと』は、原作のオハナシが悪いんだろうけど、好きじゃないわぁ。みんシネでもかなりこき下ろしてしまいましたが、でも、本音の感想です。
本作は、監督が彼だからというのも少しあるけれど、単純に宣伝を見て面白そうと思ったから見てみました。
、、、で、思ったのは、スティーヴン・ダルドリーという人は、少年を撮らせると非常に上手いなぁ、ということでした。実に生き生きと見せてくれます。これは、『リトル・ダンサー』のジェイミー・ベルもそうでした・・・。
ゴミ集積場で拾った財布に秘められた謎を、拾ったラファエルと親友ガルド、地下排水溝で暮らすラットの3人が、知恵と少年ならではの身軽さで解いていきます。まあ、この謎解き、一応ミステリーと言って良いでしょう、これだけで、見ている方の興味は引っ張られて最後まで行けます。
その謎の中身は、書いても良いんだけれど、書いちゃうと本作を見る価値が半減するのでやめておきます。つまり、本作は、この謎解きが全て、ってことです。
もちろん、先般見た『ゴーン・ガール』ほどひどくはありません。少年たちの成長譚も描かれていますし、何より、彼らが大変な危険を冒してまで謎に挑んだその理由は「そうすることが正しかったから」という、極めてシンプルなもので、それが逆に説得力があるしグッとくるのです。子どもの頃って、そうやって、突っ走ることがあるよな、と単純に共感できますので。
しかし、ミステリーものにしては、ちょっと脇が甘いというか(暗号を解くカギになる聖書の入手が簡単すぎたり、暗号解読がスムーズ過ぎたり。一番気に入らないのは、財布の持ち主だったジョゼの娘ピアが出てきて、その後少年たちと行動を共にしていくところだけど)、ミステリーの顔をしたファンタジーと言った方が良いかも知れません。
少年たちが正しいと思ったことを貫いた、大人たちの世界に怯むことなく挑戦し成し遂げた! それによって、社会をも動かした! つまり、謎を秘めたあるものを入手→謎解きの旅に出る→さまざまな困難に出会う→謎を解く→英雄になる、という、ファンタジーの王道を行く筋立てです。
別にそれが悪いとは思わないし、本作は、決して駄作だとも思いません。、、、でも、何か物足りないのです。
それは恐らく、少年たちに、謎解き以外の「葛藤」があんまりないからかも知れません。ラファエルたちは貧しいけれども、彼らの周囲は割と「良い人」たちばかりだし(そもそも、彼らの親はどーしたんだろうか・・・?)、自分たちの境遇を楽しんでいるようにさえ感じられるのです。「ここから抜け出したい!!」という強い思いがあるように見えないのよね。
例えば、同じ貧困を生きる子どもたちを描いたブニュエルの『忘れられた人々』とか、もう、とんでもなく悲惨でしょ。ああいう切迫感が、本作の3人の少年にはないのです。
敢えて描かなかったのか、それとも、描き足りなかったのか・・・。それは監督に聞いてみないと分かりませんが。私は多分、敢えて描かなかったのだろうと思います。だから、これはこれで、作品としてアリだとも思いますが。私的には物足りなかった、というだけで、、、。
書き忘れていましたが、本作の最大の魅力は、ちゃんと「ポルトガル語」で作られていることですね。これは英断でしょう。英語でやられていたら、もうファンタジーなんか超えてウソ臭い作り話に成り下がっていたと思うので。『愛を読むひと』で反省したんですかねぇ。
そう、「正しいことだから!」なんて、躊躇なく声にして言えるのは、子どもの特権かも。大人になると、正しいことが時にはアダになることを知るし、正しいことが良いこととは限らないことも分かってしまうし、それはそれで良いんですけどね。信じられることを信じるままに行動できる、それは、掛け値なしに素晴らしいことです。
ラストの札が舞うシーンには賛否あるようですが、私は、あれで良いと思いました。
少年たちにとって正しいことは、大人にとって不都合なことだった。
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