kirekoの末路

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シナリオ【再会】-3

2006年09月06日 23時56分23秒 | NightmareWithoutEnd
PM10時05分 旧政府施設敷地内


サイドに大きく『CBSF』と書かれた特殊装甲車は、
高圧電線の張り巡らされた柵を一周し、けたたましいエンジン音と共に
助走をつけると、来るものを拒む金属製の重厚門を突き破った!



ドゥルドゥ・・!グゥゥゥン!グゥィィィィィン!!


「何かに掴まれ!一気に目的地まで突破するぞ!!」

「・・・ッ!」

力ずくでこじ開けた門への衝撃が車体に恐ろしいほどの強振動を起こし
乗車しているメンバー全員の身体は否がおうにも激しい衝撃に襲われる。
強化ガラスの外に見える闇の世界を眺めることもなく装甲車は
エンジンをけたたましく鳴らせると止まることなく中央に伸びた通路を
躊躇することなく、まっすぐ進んだ!



ガサッ!バリバリッ!バキッ!バキバキッ!



通路をふさぐように生えた大木に装甲車がぶつかると、大木は音を立てて
その大きな体を四散させ、激しく破片があたりの通路や壁や電磁柵に当たり
無残な残骸を撒き散らしている。


ガンッ!ガンガンッ!ガッッ!


大量の軽金属や林の破片が、装甲車の強化ガラスの窓にあたる。
これには強行突入には慣れているはずのDチームの隊員達も
強化ガラスに当たっているものを見て無意識に視線が運転席に行く。
Dチームのメンバーはその光景に声や表情さえ変えずにいるが、
内心、ドライバーのその『過ぎる荒運転』に動悸を隠しきれていない。

なぜなら、今現在装甲車が受けている衝撃の多さには、
今までの突入作戦では感じたことのない驚くべきものがあったからだ。

装甲車後部座席の一部にもたれ掛かるように
掴まっていたレンもこれには動悸を隠しきれなかったのか
助手席にいるパッショーナに大声を張り上げた。


「もうちょっと安全運転できないのか!」

「激しいのが性分でね!嫌いじゃなかろう!」

「空挺部隊との連絡もあるし、少しゆるめたら・・・」


ガンッ!ガガガッガツッ!




レンが喋ろうとした瞬間、大木の破片がフロントガラスにぶつかる!
強い衝撃が座席を立って喋っていたレンを襲い、レンはそのまま衝撃で
座席にスッポリ入る具合で座ってしまった。


「無駄口言ってると舌噛むぞロシア野郎!」

「ぐっ・・なんだと!運転手!早くスピードを緩めろ!」

「わかってねえな。俺の部下に貴様の命令が聞けると思うか?」

「化け物に殺されるのもゴメンだが、スピード違反で味方に殺されるなんて冗談じゃない!」

「冗談?そいつは人生において一番愉快なことだぜ!スピードあげな!地下で遅れた分、取り戻すぜッ!」


グィィィィィンッ!グゥィィィンィィン!


さらにけたたましいエンジン音を上げ、スピードに乗る装甲車。


「ロシア野郎は、メインがくるまで御上品に黙って座って待ってやがれ!」

「チッ・・・楽天家のクソイタリア野郎がッ!あとで始末書覚悟しておけよ!」


二人の怒号とも思える言葉の掛け合いが装甲車を包む。
およそ今回の作戦に対して緊張している全員へのリラックスを
促したいのだろうか?それにしても荒療治だ。


レンの言葉に少し笑みを浮かべると正面に見えてきた円柱状の建物を発見し
何かを制する様にスッと息を吸い込むパッショーナは、視線を前へともって行き、
息を吸い込むと空に向かって放つように口を開いた。




「へっ上等!なさけねえ理由だが、生き残ってやるよ!始末書のためにな!」




パッショーナの声が聞こえると、車はスピードを緩め始める。
どうやら目的地に着いたらしい。
二人の隊長達のやり取りを見ていた
隊員たちの目にも、その円柱状の巨大な建物が確認できた。



PM10時15分 多目的研究施設『ガイア』入り口

外の暗闇を切り開くように
装甲車がなぎ払った大木などの破片が当たりに巻き散らかされた
通路の終わりには、巨大な円柱型の施設が存在した。


―――政府公認多目的研究施設『ガイア』

旧S県の統合化が囁かれていた時に建築が完了した、
国立の多目的研究施設である。
当時最先端の科学技術の粋を集めて作られた
総合研究施設としては最大のもので、
半径400m、全長80mの円柱型のデザインで
全10階層構造。地上2階層と地下8階層に分けられた建物内部には
直径200mもある温室、マイナス50度まで完全に室温を下げられる冷室、
人工的な擬似太陽を作り出すライトと変異型土壌を用いた
ケミカルバイオ農場などなど、150もの専門的な研究室があり
それぞれの研究にあった施設設定をするために、独自の発電システムや
3000もの排気塔とコンデンサーによる排気清浄循環システムを備えており、
空調システムも24時間、選出されたスタッフによって完全管理されている。
地上2階層の屋上にはヘリポートが完備されており、
どうやらここから空挺部隊が進入するようだ。


ガイアの周りの視界は割と開けており、ぼうぼうに伸びた雑草や
死体が平然と横積みされていた一般道とはまた違う
人の手が入っているような印象を抱かせる。


「なぜココだけ整備されているのか?」


隊員達は目の前にそびえる巨大建造物ガイアを見て一斉にそう思った。

一年間ほぼ放置状態であったこの地域にあって
深く生い茂る森林地帯の真ん中に整備された区画。
隊員達が疑問を抱くのも当然であった。

比較的新しそうな白色の壁は少しくすんでいるが
まだその白さを保っているところを見ると
何か特殊な加工をされたものなのだろうか?



「全員突入開始!」


隊員達はそれぞれ怪訝そうな表情を浮かべていたが
チームの隊長であるレンの言葉で一気に現実に戻され
張り詰めた表情に一瞬にして戻る。


「いくぞ!」


「「了解!」」

総勢9人の隊員達は声を合わせると、張り詰めた表情を浮かべ
それぞれの決意を固めると、次々と足音を立てて
その物言わぬ建物『ガイア』の入り口へと
吸い込まれるように消えていくのだった。



戦いは始まる。目的の物を奪取するまでは
脱出をも許されない。非情の作戦。
命の保障はない。
あるのは確実に襲い掛かってくるこの『ガイア』の中にいる
化け物との戦いだけであった。



PM10時18分 多目的研究施設ガイア1F 西側入口

ガイア内部に突入すると、全体的に白を基調とする配色の
壁が通路に沿って永遠と伸びるように配置されている。
内部は外とは違い煌々とライトが点灯しており
相当の明るさを保っている。
発電所も兼ねているこのガイアならありえる話だが、
外の暗闇の状態から考えると、どこか不思議だ。

西側入口から入った9人の前には、道が3本に分かれており
正面に直線に伸びる通路は、中央に設置された
エレベーターを降りるためのものだろう、
天井に設置された道案内の白いプレートに、矢印で『中央エレベーター』
『実験室101~110』という名前が指し示されている。

もうひとつの道は円柱状の建物を反るような
二本のカーブラインを描いていることから
他入り口や、側面に設置された研究室に行くためのものだろう。
天井に設置された白いプレートには『研究室111~124』
『ロッカー室』『研究員用休憩所』『警備員詰所』と書かれている。


「エレベーターに向けて前進!周囲警戒怠るな!」

「さて、いきますかねっ・・・と」

「さっさと行くわよ貴美子!」

「あ、ケリーさん待ってくださいよ」
レン、フィクシー、ケリー、貴美子が正面の通路に向けて走り出す。
それを後ろから見ていた綾香はポツンとつぶやく。


「…出てきなさい化け物…一匹残らず丁寧に『狩って』やるわ…」

「・・・」
怪我も気にせず銃を持ちながら軽々と走り出す綾香を尻目に
パイは緊張感をものともせずに無表情で綾香の後ろにつくように
平行して走っていく。


「・・・死と対峙してるにしては元気すぎる」
深くため息をつくようなその言葉をポツンと放つと
パイは再び口を閉ざし、通路を走っていく。
しかしパイのその表情には、なぜだかわからないが
この作戦を通して見たこともない何か『陰り』のようなものを
感じざる終えなかった。


「パッショーナ隊長、我々は後方で退路確保を」

「…三人で確保するってのも難しい話ですね」

「Retroguardia(しんがり)は任せなDチーム、さっさとブツを手に入れてきな」
Dチームの後方をゆっくりと動き出すAチームのパッショーナ達三人。






不安や焦燥感で一杯な心の中の暗闇とは反対に
まばゆいほど煌々としたライトだけが彼らの全身を照らしていた。
これから起こる惨たらしい悪夢のような出来事をまるで皮肉るように…。






PM10時18分 多目的研究施設ガイア屋上


ダダッ!ダダダダダッ!ズガガガガッ!ダララララッ!


屋上の一つのヘリポートに暗闇を照らすライトの下
外の静寂をぶち壊すような、とてつもない数の銃声が聞こえる。
『C・B・S・F E-TEAM』と背中に書かれた黒の戦闘服の
何人かが巨大な何かを囲むような姿が見える。


巨大な何かの周りには何人かが血を流して拉げた様な無残な姿で絶命している。


「撃ち方やめ!」


銃声が鳴り止むと火器を使うことによって起こった
白い粉塵煙がだんだん引いていく。



粉塵煙から出てきた一つの巨大な影。
それは人間に酷似したものであった。
屈むように手に持った
人間が持つには大きすぎる、幅40cm長さ2mほどの剣のような金属の塊
野外用ライトに反射して鈍く光る。



「馬鹿な・・!あれだけの銃弾を受けて平気だと・・・!?」

「再掃射用意しろ・・・」
うろたえるEチームのメンバーを尻目に、真ん中の影は
ゆっくりとその大きすぎる大剣を背中のほうへ持っていく。



「グオオオオッ!」



震えるような雄たけびと共に疾風のように飛び出した影は
正面にいたEチームの隊員の一人に向けてその大きすぎる大剣を
いとも簡単に振り下ろした。



グシャッ!


ブシュルルルルッ・・・


鈍い音を立てて物言わぬ肉塊へと変わる戦闘服を着た人間。
吹き出る大量の血は大剣をひりつくように赤く染めていく。




「ッ・・・うっ・・・撃てッ!!」
思わず声にならない声を二、三度あげる指揮官らしき人間が言葉を放つ前に
隊員達は恐怖からか、その巨大な影に対して銃を放つ。


ダラララッ!ダラララララッ!!!


キンッ・・キンッ・・キュインン!キュィィィン!



ブンッ!

ドグシャ! 

ブンッ!

ズガッ!

ズゴォォッ!

グべシャッ!

ビタビタッ!

ビタビタビタッ!!



銃弾が金属にあたって跳ねる音が聞こえると
そこに居た4人の隊員がまるで虫けらのように全身からほとばしる
血を撒き散らしながら一人は真っ二つに、一人はたたきつけられて
肉の塊と化し、横に陣取っていた二人は横なぎに払われた大剣に
足ごと斬られ、おびただしい血流を冷たく湿った床へと流している。


「た・・たすけて・・・たい・・ちょう・・たすけ・・・
ぐわあああああああああああああ!」


銃を持ちながら隊長と呼ばれた人間のほうへ向き、助けてと叫ぶ隊員。
だが、その言葉はむなしく空に放たれ次の瞬間には
すがるように這いずっていた胴体に大剣を突き立てられていた。


「・・・そんな・・ばかな・・・」
隊長と呼ばれた人間は、大剣によって部下の体に開けられた穴から
噴出する血を浴びながら、隊長は目の前にいる化け物めがけて震えるような
声でこういった。


「ハッ・・ハハッ・・・馬鹿げてる・・こんな化け物が・・・この世に存在するなんて・・俺は馬鹿げた夢を見ているんだ・・・そうに違いない・・・早く夢から覚めろよ!!!」
最後に残された隊長が銃に手をやると、巨大な影は躊躇することなく
隊長の体を大剣で貫いた。



ブシュゥゥゥゥゥ!



血と硝煙の臭いが充満するヘリポートで
その巨大な影は、落ち着き払った様子でその場を立ち去る。
野外用ライトに影が着ている服の胸の金属製プレートが光る。


『HBOW-01 ヘラクレス』



それは人間が生み出した地上最強の神の名を持つ悪夢だった。
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