未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第12章 ロング・ホームルーム ③

2021-06-21 15:45:38 | 未来記

2008-02-27

3.いざこざ

 

カイと一緒に部屋から出て行ったユウキ先生に、すぐにメールを送って、タケルのメールアドレスを教えてもらったヒロは、早速タケルへメールした。

 

いったい、あいつは何やってるンだ!

 

オレの言うこと聞いてから出て行けばいいのに、

 

勝手に黙って出て行きやがって! 』

 

 

一方、病室で先生からタケルのことを初めて聞いたキラシャは、しばらくボウ然としていたが、心配そうに見守るパールに気づき、照れ笑いをした。

 

「ちょっと、びっくりしたンだ。先生がタケルのこと知っててだまってたなンて…。ずるいよね、知ってたら教えてくれてもいいのに」

 

「キラシャ タケル スキ? 

 

ワタシ タケルノコト シラナイ。

 

デモ キラシャ ワタシ タスケタ。

 

ダカラ ワタシ タケルノ ブジ イノルネ…」

 

学習ルームでは、生徒ばかりでザワザワしていたが、ダンが議長として前に出ると、副議長にマキを選び、反省会が始まった。

 

先生がいると、言いたいこともなかなか言えないが、この時間は生徒だけとあって、ダンが今回のケンカについて発言するように促すと、意見が上がった。

 

「あのケンカで、やっとゼノンも裁判にかけられるけど、ゼノンにイジメを受けた子はかなりいたと思うよ」

 

「そうそう、いつも通り道をジャマするようにたむろして、変なカッコウで踊ったりしてたよね。ゼノンにちょっかいかけられて、困ってた子たくさんいたんじゃない?」

 

「親戚が金持ちだからさ。何やっても許されるって言うンじゃ、まじめにやってるオレたち迷惑だよな…」

 

「ホォー、まじめネェ~」

 

子供達は、先生がいないという解放感から、クラス中がザワザワし始めた。

 

「オイ、静かに! じゃぁ、ゼノンのことは裁判に任せて、オレたちは自分らのこと話そうぜ。仲良くするための反省会なんだから、何か意見のある奴、いないのか?」

 

自然といつもの口調になったダンに、ジョディから非難の声があがった。

 

「ダンだって、先生の前じゃ文句言えなかったけど、女の子のこと、陰でずいぶん泣かせてるじゃない」

 

「えっ? オレが? それは初耳だな。何かワルイコトしたとでも言うのか…」

 

マギィも参戦した。

 

「あたしたち知ってるけど、男の子使って、気に入った女の子くどいてるでしょ!」

 

一部の女の子からブーイングが起こり、勝ち誇ったようにジョディが大声で言った。

 

「今日はヴァレンタイン・デーなのよ!

 

お義理だけでも大変なのに、本命を強要しないで欲しいわ!」

 

「オレ、強要してないよ! 

 

マギィも、勝手にプレゼント送って、お返し強要してるじゃないか。

 

アレって、大迷惑だぞ! 」

 

マギィをかばうように、ジョディが強気で言った。

 

「あたし達は、本気なの! 恋愛学のパートナー選びって、一生に関わることなのよ!

 

女の子にとって、好意を示すことがダイジなんじゃない。アンタに、それがわかンないの? 」

 

 

「…オレだって、恋愛学のためにパートナー探してるンだ。

 

みんなも、同じだろ?

 

でも、オレはマギィみたいに、強要はしてないぞ!

 

かわいい子には、誰だって声かけたくなるジャン。

 

でも、プレゼントの無理強いはしてないぞ!

 

イジメの相手をやっつけてやったから、そのお礼にって、義理でくれる子もいるケド

 

正直、お返しのことを考えると大変なンだ…」

 

ダンの本音に、男の子からもブーイングが起こった。

 

「義理でも、いっぱいもらえていいなぁ~ 」

 

あせったように、ダンが言い訳を始めた。

 

「でも、お返しだって大変だぞ! 

 

オレ、自分のこづかいはたいて、ちゃんと返してるンだぜ。

 

頼むから、お義理は勘弁してほしいっていうと、

 

泣いたり、怒ったりする子がいるンだよな~ 」

 

当然、女の子から、激しくブーイングが起こった。

 

しびれを切らしたように、マキが大声で言った。

 

「もう、議長がコレじゃ、話になんないでしょ!

 

校長先生からスクール内でのプレゼント禁止されてるンだからさ、

 

こんなこと話し合ってていいの?

 

今は、ケンカしないためにどうすればいいか話し合っているのにさ、

 

議長が議題そらしちゃってどうするのよ? 」

 

周りからいっせいにはやし立てられ、さすがのダンも困った顔。

 

「…そうか、わかった。オレもう今年はプレゼントもらわない。絶対くれるなよ!

 

だから、女の子もプレゼント渡して、お返しを無理強いするのやめろ!

 

じゃ、時間もないことだから、もっと他にイジメで困ってることってないのか? 」

 

「ダン。ちょっといいか? 

 

話ぜんぜん変わるけど、オレ、タケルにメール送ってみたけど、返事がないンだ。

 

何だか嫌な予感がするンだ。

 

宇宙ステーションの警察に連絡した方がいいと思うけど、どうかな? 」

 

と、突然ヒロが言い出した。

 

「嫌な予感? タケルは大丈夫だよ。

 

あんな運動神経いいやつに、何があるってンだ。

 

それじゃ、他にもイジメで困ってる子はいないのか? 」

 

タケルが心配なキラシャは、たまらずにダンに問いかけた。

 

「ダン。お願いだから、タケルのこと考えてあげて! 

 

先生、タケルの耳が聞こえないって言ってたよ!

 

きっと、ここにいた時のタケルじゃないンだよ。

 

お願いだから、タケルのこと助けて欲しい! 」

 

学習ルームでは、男の子も女の子も口笛を鳴らし、ヤジを飛ばした。

 

「キラシャは、タケルのことがダイスキで~す! 」

 

「そんなにスキなら、今すぐ宇宙に飛んでっちゃえばいいのに~! 」

 

ダンが焦って、大声を出した。

                                                                                        

「オイ、あんまりうるさいとパトロール隊が入ってくるぞ! 

 

先生いないンだから、静かにしようぜ!」

 

そんな時、終了時間のチャイムがなった。

 

「じゃぁ、タケルのことはヒロに任せた。

 

でも、ユウキ先生に許可を受けてからにした方がいいと思うよ。

 

とにかく、これからも、お互いに相手のこと考えて行動しようぜ。

 

キラシャとパールがクラスに戻ってからも、みんなで仲良くやろうな!

 

以上で反省会終わります。

 

マキ、副議長引き受けてくれて、ありがとう! 」

 

ダンは、マキに握手を求めて、まだじっと自分をにらんでいるマギィやジョディには目もくれず、学習ルームを出て行った。


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