未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第17章 未知の世界へ ①

2021-04-24 16:50:04 | 未来記

2010-07-23

1.家族への思い

 

キラシャ達の乗った車は、長い長い時を経て、ようやく終点に着こうとしていた。

 

気配を感じてか、子供達もみな目を覚まして、車の遠く先を見やった。

 

目的地のドームに着くまでは安心ができないので、子供達は暑くても重装備に耐えていた。

 

 

突然、エア・カーの後方で、耳が痛くなるくらいの爆発音が鳴り響いた。

 

後ろに座っていたケンとマイクは悲鳴をあげて、頭を抱えてしゃがみこんだ。

 

立て続けに、エア・カーのそばで爆発音が起こった。

 

「オレ達、狙われてる? 」

 

ケンが前方を指して、大声で言った。

 

キラシャは、黙って横にいるパールの腕を握りしめた。

 

遠方からこっちへ、全速力で向かってくるエア・カーが何台か、見えてきた。

 

「タクサン テキ イル。バック バック・・・」

 

マイクが叫ぶ。

 

急ブレーキをかけた運転手の青年と、デビッドおじさんは緊張した顔で、前方の様子を伺いながら、Mフォンでどこかと連絡を取りながら、方向転換した。

 

ドームとは逆の方向に、スピードを上げ、追手を逃れる場所はないかと、森へ続く道に入り、地面からグゥーンと垂直に傾いて浮かぶと、そのまま木々の間を走り続けた。

 

エア・カーの中では、座席のベルトで固定はされているが、木にぶつかりそうになるたびに子供達の悲鳴が上がった。

 

仮想遊園地のジェットコースターより数倍の、目の前に突然やってくる恐怖に、運転するカールのハンドルさばきの正確さを信じて、無事に逃げられることを祈るしかない。

 

そこへ、戦闘機の飛んでくる音が聞こえた。

 

「あっ、コズミック防衛軍のアフカの風だ!」

 

アフカ・エリアで活躍している戦闘機を見つけて、ケンが叫んだ。

 

戦闘機は、キラシャ達の上空をあっという間に通り過ぎると、追って来るエア・カーを攻撃し始めた。

 

追っ手も、木と木の間をすり抜けながら、攻撃をかわして追いかけてくる。

 

一台、二台と、車に砲撃が当たり、ボガーンと爆音がして、炎があがった。

 

エア・カーは、木々をギリギリに避けながら高速飛行すると、何とか追っ手との距離を離すことができたようだ。

 

ただ、エア・カーに乗ったままだと、位置をすぐに特定して狙われるので、かえって危険だ。

 

大きな岩穴があるのを見つけ、いったんそこへ避難しようと、デビッドおじさんは言った。

 

低い場所に止めたエア・カーから降り、周りに積もっていた枯れ葉を振りかけ、岩穴に向かって、デビッドおじさんはオパールおばさんを抱きかかえて、全員が走って逃げた。

 

キラシャはケンと、マイクはパールと、お互いをかばい合うように肩を寄せ合って走った。

 

爆音が鳴り響く中、キラシャは心の中で叫んでいた。

 

『タケル…助けて…。今はケンのそばじゃ、死にたくないよ~』

 

ケンには悪いが、キラシャにとって、タケルが一番守って欲しい男の子なのだ。

 

青年とおじさんは、子供達とオパールおばさんを奥に隠れさせると、敵がいつ来ても攻撃できるよう銃を構えた。

 

息が詰まるほど、緊張した時が流れた…。

 

しばらくして、エア・カーの止まる音がした。

 

おじさんは、サッと銃をその方向に向けた。

 

しかし、おじさんのMフォンにコズミック防衛軍からの電話があり、襲ってきた車は、すべて大破したとのこと。

 

岩穴から出ると、防衛軍の服を着た兵士の笑顔と、軍旗がなびくエア・カーが見えた。

 

 

防衛軍の誘導で、再びドームへ向かっていると、砲撃で爆発したエア・カーだろうか、森のあちこちで炎と白煙が上がっているのが見えた。

 

「どういう目的で私達に攻撃したのかわからないが、防衛軍が危険とみなしたものは、有無を言わさず攻撃対象となるのだ…」

 

デビッドおじさんは、淡々と言った。

 

「でも、コズミック防衛軍が攻撃してくれなかったら、ボク達、殺されてたかもね。

 

こんな怖い思いしたの初めてだよ…」

 

ケンは、ホッと胸をなでおろした。

 

そのとき、パールがポツンと言った。

 

「アノ ヒト タチモ… カゾクガ イル…」

 

キラシャは、それを聞いて胸がキュンと痛くなった。

 

『そうだよね。誰だって、みんな家族がいるンだよね…

 

あたし達を殺そうとした人達にも…

 

でも…もし、あたしがここで死んじゃってたら、パパとママはすごく悲しむよね…』

 

キラシャは、キャップ爺が天国へ行ってしまった日のことを思い出した。

 

『家族が急にいなくなると、ホントにつらいよね。

 

タケルが急にいなくなった時だって、つらかったもン…

 

タケル…、今ごろ、どこで、何をしてるンだろう…』


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