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ソフトバンク、通信障害とダブル危機…盟友・ファーウェイを米国が世界から排除(渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」)

2018-12-09 | 日本の政治・経済
2018.12.07

ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(写真:東洋経済/アフロ)

12月6日にソフトバンクの携帯電話サービスに大規模な通信障害が発生した。全国で約4時間半にわたり音声通話やデータ通信が利用不可あるいは利用しにくい状態となり、海外11カ国でも同様の障害が発生したという。スウェーデンの通信大手エリクソン製の交換機のソフトウェアに異常が発生したことが原因のようで、同社のボリエ・エクホルム最高経営責任者(CEO)が謝罪する事態となっている。

また、総務省は今回の通信障害を電気通信事業法上の「重大事故」にあたるかを判断し、ソフトバンクに対して業務改善命令を出すことも検討するという。ソフトバンクは2月にも大規模な通信障害が発生しており、12月19日に株式上場を控えるなかで最悪のタイミングといえる。

さらに、ソフトバンクにはもうひとつの危機が潜んでいる。それは、中国の通信大手である華為技術(ファーウェイ)との関係だ。

5日、同社の副会長兼最高財務責任者(CFO)である孟晩舟容疑者がカナダで逮捕されていたことが明らかになった。これはアメリカの要請によるもので、アメリカが経済制裁を科すイランへの製品の違法輸出および銀行を介した不正行為の疑いがあるという。

イランに通信機器を売ったとしても、代金を受け取れなければ意味がない。イランはアメリカによる金融制裁の対象になっているため、孟容疑者が銀行を騙すかたちで不正に送金させた違法金融取引の疑いでも捜査が進んでいるようだ。かねてアメリカはドルのコルレス(国際決済口座)を監視しており、1万ドル以上の送金に関しては常にチェックする仕組みが導入されているため、その過程で不正な送金が発覚した可能性が高い。お金の流れに関しては記録が明確に残るため、立証しやすく言い逃れは難しい。

ファーウェイの創業者は人民解放軍の出身者で、逮捕された孟容疑者はその娘にあたる。かねてアメリカはファーウェイ製品には情報漏洩の恐れがあり、スパイ活動に利用されているとして政府調達を禁じるほか、企業などにも使用禁止を求めてきた。

その動きは同じく中国の通信機器大手である中興通訊(ZTE)に対しても同様であり、4月にはイランへの違法輸出を理由にZTEに米企業との取引を禁じる制裁を科し、同社を経営危機に追い込んだ。

今後の捜査次第では、アメリカがファーウェイにZTEと同様の重い制裁を科す可能性もある。巨額の罰金と技術移転禁止などが命じられれば、ファーウェイの生産ラインが機能不全に陥り、工場が事実上の閉鎖状態になる可能性もあるだろう。

日本政府もファーウェイ排除へ

さらにいえば、ファーウェイ排除は世界的な流れだ。アメリカは8月に成立した「2019年度米国防権限法」のなかで、ZTEとファーウェイ、さらに中国の監視カメラ大手3社の締め出しを明確に打ち出している。19年8月13日以降は、連邦政府や軍などの米政府機関が計5社の製品はもちろん、5社が製造した部品を組み込む他社製品を調達することも禁止される。

さらに、20年8月13日以降は、5社の製品を社内で利用している世界中の企業は米政府機関との取引が禁じられるという、非常に厳しい内容となっている。ファーウェイらの製品を使っている企業は、それらの利用をやめた上で、アメリカ側にその旨を報告しなければならない。いわば、「アメリカと中国のどちらを選ぶか」と迫られることになるわけだ。

こうしたアメリカの“本気の圧力”を感じたのか、すでにオーストラリアやニュージーランドではファーウェイ排除の動きが進んでおり、イギリスでも英秘密情報部(SIS)のアレックス・ヤンガー長官が安全保障上の脅威を理由にファーウェイ製品の利用禁止を促しているほか、通信大手のBTグループは次世代の通信規格「5G」はおろか現行の3G、4Gからもファーウェイ製品を排除すると表明している。さらに、日本政府もファーウェイおよびZTEの製品を各府省庁や自衛隊などから事実上排除する方針だ。

ファーウェイの基地局を採用するソフトバンク

背景にあるのは、アメリカによる「中国製造2025」潰しだ。中国は産業用ロボットや航空宇宙分野などの成長が見込まれる10大産業に資金を集中投下して重点的に育て上げる政策を掲げており、25年に「製造強国」となることを目指している。その重点分野のひとつが5Gであり、中国はインフラ整備に注力しているわけだが、旗振り役ともいえる存在がファーウェイだ。

ファーウェイは通信基地局の世界シェア1位で、すでに66カ国の通信会社向けに約1万件の基地局を出荷している。そこで問題になるのが、ソフトバンクだ。ソフトバンクはファーウェイの基地局を採用しており、同社と5Gの共同開発や実証実験を行っている。しかし、前述のように今後はファーウェイとの関与が経営リスクとなりかねない上、たとえば米政府機関と取引のある企業はソフトバンクから他社に乗り換えるという動きも予想される。そのため、かねてソフトバンクの対応が注目されていたわけだが、仮にファーウェイを切り離すとしても、事業計画や資金計画に狂いが生じることは不可避だろう。ソフトバンクは、現状維持でも路線変更でも大きな経営上のリスクを抱えているといえる。

日本は19年から5Gの導入を進め、20年の東京オリンピック・パラリンピックまでに実用化を目指している。そのため、3大キャリアは基地局メーカーなどと実証実験を行っており、すでに一部で設備が導入済みだ。NTTドコモはノキア、KDDIはエリクソンと実証実験を進めており、前述のようにソフトバンクはファーウェイと組んでいるという構図だ。

中国と5G覇権を争うアメリカにとって、やっかいなのは入れ替わりの激しい端末よりもインフラである基地局のほうだろう。そのため、今後はファーウェイの基地局を狙い撃ちにするかたちで制裁などの標的にしてきてもおかしくない。これは極論だが、ファーウェイやZTEの基地局や設備を使用している通信会社は「セキュリティ上の問題」を理由にアメリカとの通信が遮断される可能性もある。アメリカとは電話ができず、インターネットにも接続できないというわけだ。

いずれにせよ、孟容疑者の逮捕でアメリカを中心とする世界的なファーウェイ排除が加速することは間違いなく、5Gをめぐる米中の対立が激化すると思われる。そして、ファーウェイと通信障害という2つの問題に悩まされるソフトバンクは上場を前に危機に直面しているといっていいだろう。
(文=渡邉哲也/経済評論家)
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