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文在寅大統領の“陰謀”に乗せられるな 金正恩委員長は軍との緊張が激化か(混迷する朝鮮半島 重村 智計)

2019-01-07 | 日韓関係
2019年1月7日(月)

日本が哨戒機の動画を公開したことに遺憾の意を表明する韓国国防部の崔賢洙(チェ・ヒョンス)報道官( 写真:YONHAP NEWS/アフロ)

韓国と北朝鮮の両首脳は、2019年年頭から危機に直面している。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、支持率が昨年末に43%に落ち込み回復しない。今年は30%台に落ち込む公算が大きい。日本との関係は、自衛隊機へのレーダー照射事件で悪化したまま越年した。

北朝鮮の駐イタリア代理大使(大使は退去処分)の亡命が、年明けに報じられた。北朝鮮経済はマイナス成長で、外交も行き詰っている。習近平(シー・ジンピン)国家主席の訪朝は見通しが立たず、金正恩(キム・ジョンウン)委員長は訪韓できなかった。米朝関係も停滞し、軍部の不満に直面している。

反日世論を喚起し、支持率を高める

韓国国防省報道官は1月2日、声明で「自衛隊機が威嚇的な低空飛行をした」と述べ、日本に謝罪を求めた。「威嚇的」の表現は、友好国には使わない。この言葉には「悪意」と「挑発の陰謀」が込められている。「高位級の人物」との表現で、安倍晋三首相を批判したのも失礼で、安倍首相を怒らせようとの意図がアリアリだ。日本が怒れば、反日世論が盛り上がり、大統領の支持率アップにつながるとの“陰謀”を考えている。

ところが、朝鮮日報によると韓国のネット世論は冷静で、70%以上が「韓国政府の主張は信用できない」と書き込んだ。日本政府は、文大統領の“陰謀”に乗せられてはいけない。

報道官声明は、「争点をすり替える意図」が明白だ。「自衛隊機へのレーダー照射問題」を「日本の謝罪問題」に、すり替える“陰謀”だ。いつもの手口である。「レーダー照射は、自衛隊機を狙ったものではない」というが、それなら誰を狙ったのか説明がない。何かを隠そうとしている。

責任問題を隠そうとしている

事件が起きたのは、昨年12月20日の午後3時過ぎだった。昼日中の明るい時間帯で、海上も穏やかで相手を認識できる状態にあったのに、自衛隊機に攻撃を意味するレーダーを照射した。考えうる可能性は(1)自衛隊機に見られると困る行動をしていた(2)韓国軍はすでに自衛隊を敵軍と考えている(3)兵士が勝手に行なった――である。

韓国大統領はクーデターを警戒し、各師団や部隊の司令官の指揮と行動を厳しく規制し監視している。大統領が許可してもいないのに勝手にレーダーを照射することは、絶対に許されない。だが、誰かがレーダー照射を命じたから、事件は起きたのだ。その責任問題を懸命に隠そうとしている。

韓国海軍艦艇の作戦活動に、北朝鮮の漁船を救助する「任務」はない。偶然に発見した場合は救助するが、救助のために「作戦活動」をすることはない。自衛隊機が撮影した映像では、海洋警察の救助艇が作業を終える状態にある。海軍艦艇の救助行動は見られない。

韓国国防省は、当初は「北朝鮮漁船救助」と公式に述べ、「海が荒れていた」と嘘の説明をしたが、2日の声明では「作戦活動」「遭難漁船」と言葉を変え、「北朝鮮」の表現を消した。まずいのだろう。

百歩譲って韓国の主張通りなら、韓国艦艇は自衛隊機の位置と距離を測るためにレーダーを作動させた。このとき、間違えて「火器管制レーダー」を使ったのかもしれない。それなら「誤作動」と、なぜ言わないのか。

日本政府には、韓国国防省の発表に韓国民の多くが疑問を抱いている事実を、よく理解してほしい。「日本は正直だ」との韓国民の意識を、裏切ってはならない。文在寅政権と韓国民を「離間」する戦略を取るべきだ。事実確認と再発防止の要求に徹し、批判や非難は避けるべきだ。ただし、曖昧な合意をしてはいけない。喧嘩する必要はないが、言うべきことははっきり言うべきだ。

金正恩委員長のジレンマ

金委員長は、1月1日に恒例の「新年の辞」演説を行なった。昨年実現した南北首脳会談と米朝首脳会談を偉大な業績として高く評価し、戦争の危機を解消する必要性を強調した。国民に初めて「核兵器の製造中止」と「核の不使用」、「核不拡散」を語った。この衝撃は、大きいはずだ。

一方、「主体思想」の言葉が消え、軍を評価する言葉がなかったのは、奇妙だった。思想教育の重要性を述べたが、「主体思想」に言及せず、「政治思想」と「社会主義文明」を強調した。

金委員長は執務室でソファーに座り、テレビカメラに向かった。これは、金正日(キム・ジョンイル)総書記と金日成(キム・イルソン)主席のスタイルとは、まったく異なる。父親や祖父の権威から離れ、自らの権威が確立したことを印象付けた。老幹部や軍幹部に、世代交代を宣言する演説スタイルであった。

演説は、反発や熾烈な勢力争いが存在する事実も、浮き彫りにした。軍を国防の柱として讃える言葉が消えた。奇妙だ。中国と韓国の情報関係者によると、軍エリート層には、核実験と核兵器製造を中止したことへの反発がなお根強い。指導者と軍との間には、微妙な緊張関係があるという。

経済が問題だ。新年の演説は旧来の「計画経済」を強調し、「市場経済」と「改革開放政策」の言葉はなかった。開城工業団地と金剛山観光事業の再開を強く求めており、経済制裁解除が北朝鮮経済を左右する現実を強く示唆した。

韓国の経済学者は、北朝鮮の昨年の経済成長はおよそマイナス3%と推計した。国連や米国が主導する経済制裁が効果を上げ、深刻な影響を与えているという。特に石油の不足は深刻で、昨年の石油輸入は70万トン程度しか許されなかった。これでは軍は維持できないので、海上での「石油瀬取り」(密輸)を展開せざるを得ないのだ。

このため、韓国海軍艦艇による自衛隊機への「火器管制レーダー照射」も、北朝鮮の「瀬取りに協力する行動」ではなかったか、との疑惑を生んでいる。北朝鮮の密輸行為に協力しているのを自衛隊機にみつけられたと思い、レーダー照射をしたとの観測だ。

国連制裁の解除や緩和が2019年中に実現しないと、北朝鮮経済は一層苦しくなる。経済を好転させるには、米朝首脳会談と日朝首脳会談が必要だ。日本への言及はなかったが、批判的表現もなく、水面下で接触が継続していることを示唆した。中国政府高官によると、習近平国家主席は日朝首脳会談の実現を、金委員長に強く求めている。米中貿易戦争を戦うには、日本の経済協力が必要で、日本を取り込もうとしている。拉致問題解決で、安倍首相に恩義を売る戦略だ。

(東京通信大学教授 早大名誉教授 重村 智計)
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