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仏マクロン、安倍首相に日産・ルノー介入を要求し拒否される…G20で冷遇、仏国内でも窮地(渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」)

2018-12-08 | 日本の政治・経済
2018.12.03

G20での安倍晋三首相(右)とフランスのエマニュエル・マクロン大統領(左)(写真:代表撮影/AFP/アフロ)

アルゼンチン・ブエノスアイレスで開催された主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が閉幕した。

大きな注目を集めたのは、ドナルド・トランプ大統領と習近平国家主席による米中首脳会談のゆくえだ。これについては、アメリカが中国への追加関税を90日間猶予することで合意するなど、貿易戦争の激化は避けられた。しかし、米中は知的財産権の保護や技術移転の強要、サイバー攻撃などの5分野で協議を始め、90日以内に合意できなければ、アメリカは約2000億ドル分の中国製品の関税率を25%に引き上げる方針だ。中国は対米貿易黒字を減らすために、アメリカ産の農産品やエネルギー、工業製品などを購入することにも合意した。

いわば、アメリカは90日をタイムリミットに中国に構造改革を迫っているわけだ。すでに広く知られている通り、米中間の貿易摩擦は単なる通商問題ではなく、次代のハイテクノロジー覇権や軍事覇権をめぐる争いである。そのなかで、アメリカ側は当初の「貿易赤字」から「仕組みと構造」に焦点を切り替えている。そのため、より本質的な解決は遠のいているといっていい。また、それゆえ関税率などの数字は最初から重要な問題ではなく、中国に構造改革を迫るための手段のひとつといえる。

ただし、アメリカとしても自国の経済が大きなダメージを受ける事態は避けたいため、今回のように時間的な調整を行いながら中国への圧力を強めていくことになるのだろう。

サプライチェーンの切り替えには最低6カ月、長いものでは2~3年はかかる。アメリカとしては、アナウンスしながら企業などに中国からの切り替えを促し、影響を軽減させながらハードルを引き上げるという戦略に出るものと思われる。そして、安全保障上の優先順位の高いものから禁輸や制裁といった措置を採っていくだろう。まずは通信、次に軍事転用技術やハイテク産業などが標的になるはずだ。

すでに、アメリカは同盟国に対して華為技術(ファーウェイ)の製品の使用を中止するように求めており、中国製の防犯カメラにおいても同様に導入を中止する動きが広がっている。

日仏首脳会談で釘を刺した安倍首相

次に、採択された首脳宣言について見ていきたい。今回はアメリカの反対により「保護主義と闘う」という文言が入らなかったことが大きく報じられているが、筆者が注目したいのは29番目の項目だ。少し長いが、以下のような内容である。

「我々は、腐敗の防止及び腐敗との闘いに引き続きコミットしており、模範を示す。我々は、新たな行動計画2019-2021に合意し、『国有企業における腐敗防止及び清廉性の確保に関する原則』及び『公的部門における利益相反の防止及び管理に関する原則』を支持する。これらの原則は公的部門及び民間部門における透明性及び清廉性を促進する。我々は、我々のG20のコミットメントに沿ったものを含め、腐敗と闘いための実際的な協力を継続する。我々は、腐敗とその他の経済的犯罪との結びつき、及び、そのような犯罪関係の捜査対象者の送還及び奪われた財産の返還に関する、国際的な義務及び国内法制度と整合的な形での協力を通じたものを含め、そのような結びつきに対処する方法について更に模索する。我々は、関係国際機関に対し、次期議長国の下で、これらの課題に関して報告するよう求める。我々は、外国公務員への贈賄を犯罪とすることを含め、全てのG20構成国による国連腐敗防止条約の効果的な実施を求めるとともに、OECD外国公務員贈賄防止条約へのあり得べき加入に向けた作業に留意する」

名指しこそされていないが、これは実質的にフランス政府とルノーおよびカルロス・ゴーン容疑者も該当するのではないだろうか。

また、同宣言が採択される前、安倍晋三首相とフランスのエマニュエル・マクロン大統領が会談を行い、マクロン大統領は3社連合の安定維持を強調したものの、安倍首相は「今後については民間の当事者で決めるべきで、政府がコミットするものではない」と釘を刺している。いわば「フランス政府は口を出すな」というわけで、G20後のルノー・日産をめぐる日仏両政府の駆け引きも見逃せないポイントだろう。

マクロン大統領、G20で思わぬ“冷遇”?

また、今回のG20では珍事が相次いだ。マクロン大統領夫妻は政府専用機で現地入りした際、待ち受けるはずのガブリエラ・ミケティ副大統領が不在で出迎える要人の姿がなかったことが伝えられている。とりあえず、マクロン夫妻は空港の作業員と握手を交わしたようで、迎えのクルマに乗るところでようやくミケティ副大統領が到着。結局は連絡ミスだったようだが、外交儀礼上はあり得ないことが起きたといえる。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は搭乗した政府専用機に電気系統のトラブルがあり、途中で引き返してドイツ国内に緊急着陸する事態となった。その後、スペインの民間航空機で半日遅れで現地入りするという大遅刻を演じてしまった。

意図的かどうかはさておき、G20で思わぬ“冷遇”を受けてしまったマクロン大統領は国内でも窮地に陥っている。パリをはじめとする各地で燃料税引き上げに抗議するデモが3週連続で行われ、一部が暴徒化した上に死亡者も出るなど大問題になっているのだ。

かねて失業率が改善せず支持率が低下しており、閣僚の辞任も相次ぐなど反マクロンの動きが強まっているが、そこにゴーン容疑者の逮捕という予想外の事態も飛び込んできたため、フランスの政局は一気に不安定化している。2017年5月の就任以来、マクロン大統領は最大の危機を迎えているといっていいだろう。そして、それらの動きがルノー・日産の問題にどのように影響するかも、注視すべきポイントだろう。
(文=渡邉哲也/経済評論家)
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