花熟里(けじゅくり)の静かな日々

脳出血の後遺症で左半身麻痺。日々目する美しい自然、ちょっと気になること、健康管理などを書いてみます。

日本は「水の技術」で世界に貢献できるか。

2010年07月05日 17時06分12秒 | ちょっと気になること
日本は降水量が多く、世界で水に恵まれた国の一つと言われています。水道の蛇口を

捻れば、常においしい水が出てきます。 年間の平均降水量は約1,700㎜で、世界平均

の約2倍になります。しかし、利用できる水は案外少なく、一人あたりの降水量は、

5,000㎥と世界平均の約1/4、水資源量では世界平均の1/2程度です。 
 

昨今の異常気象で瞬間的な豪雨で、まるで、熱帯地方のスコールを思わせるような集中

豪雨が毎年発生して来ていますが、他方、カラカラ天気も増えてきています。 

もともと緩やかな季節の変化が特徴であった日本の気候が近年、大きく変わってきて

おり、激しい季節的変化が見られるようになってきています。 地域的な大渇水に陥る

危険性も増してきているのではないのでしょうか。 


<1970年代以降の日本の主な渇水は次の通り>

・2005年(H17)「四国渇水」

・1994年(H6)「列島渇水」

・1987年(H7)「首都圏冬渇水」  

・1986年(S61)「西日本冬渇水」

・1984年(S59)「全国冬渇水」 

・1978年(S53)「福岡渇水」  

・1973年(S48)「高松渇水」  

 

水の惑星といわれる地球上に存在する水の量は約14億k㎥と言われていますが、海水

が97.5%で、淡水は、全体の2.5%に過ぎず、しかも、1.76%は南極や北極

の氷として存在しています。 湖沼や河川などの地表水は全体の0.01%、地下水

は0.76%です。 これらの大部分は利用するのが困難で、利用できる淡水は、全体

の0.1%に過ぎません。現在人類は、毎年、利用可能な水の54%を取水しており、

この比率は増加の一途をたどっています。
 

アフリカでは、干ばつのために飲料水や食料が手に入らない人々の姿が報道されます

し、中国内陸部や、アジア中央部、アフリカ北部など、世界の至る所で緑が減少し、

砂漠化が進行していることも周知のことです。 アメリカの穀倉地帯である中西部では、

農業用水として地下水(オガララ帯水層)を組み上げてきましたが、最近、過剰な取水

の影響で、水位の低下が著しくなり、新たな取水用の深い井戸を掘削する事態になって

いるようです。 中国では、東京都の1.1倍に相当する土地(約2500k㎡)が毎年砂漠化

しているとの報告がなされています。


人口の増加、生活水準の向上、工業化、耕作地の拡大による水の大量使用により、水資源

が枯渇の危機に瀕しているとの報告も多くなされています。  特に深刻なのは、中央

アジアの「アラル海」で、かつて世界で4位の面積でしたが、旧ソ連時代の綿花栽培用

の過剰な灌漑用取水のために、川からの流入する水が途絶えて、湖水面が低下し、今では

かっての1/3程度の広さまで小さくなってきていること、及び、塩分濃度が高くなって

いるために漁業も出来なくなって来ている様子が報道されています。流域5カ国(ウズ

ベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン)で、アラル海

救済国際基金を設立して、アラル海の保全など各国間の利害調整に当たっています。



世界人口60億人のうち、12億人が安全な飲料水をえることができない、24億人が

下水道等の衛生施設を持っていない、年間約200万人の子供が水に由来する病気で

死亡しているといわれています。



以上は実際の水の場合ですが、「仮想水(バーチャル ウオーター)」という捉え方が

あります。農産物や畜産物 をある単位量(例えば1kg)を生産するのに必要な水を計算

したもので、これらの商品を輸入した場合に、輸入した国で生産する場合に必要な水を

輸入して生産したものと考えるものです。

たとえば、米1㎏生産するには、水が1,9㎥,牛肉1㎏には水が15㎥必要になります。 



日本は食料自給率がカロリーベースで40%ですので、60%は海外から輸入していま

す。日本では毎年 640億㎥の仮想水を輸入していると試算されています。 これは、

日本で農業用水として使用されている量 572億㎥を上回あり、国内年間の水使用量

の70%強に当たります。(工業用水は134億㎥、生活用水は164億㎥)。 

つまり、日本は、食料輸入などを通じて莫大な量の海外の水を輸入していると考えること

が出来ます。

(輸入先は、60%アメリカ、14%オーストラリア、8%カナダ)



世界の人口増加に水不足が重なり、将来も日本が安定して食料を輸入できるか極めて不安

な面があります。 食料の自給率を高めることにより、食の安全保障をしていくことが

極めて重要となると思いますし、世界的な水不足問題にも貢献していくことにもなると

思います。


<農畜産物に必要な水>  (東大生産技術研究所データ) 

・米      1.9㎥/㎏        

・大豆     1,7 〃         

・とうもろこし 1.1 〃        

・小麦     0.9 〃         

・じゃがいも  0.5 〃

・牛肉     15.0 〃

・鶏肉     3.5 〃



なお、ミネラルウオーターの輸入量は年間 40万㎥、生産は140万㎥、

合計180万㎥で、生活用水の 0.01%です。



水にもっとも敏感な国はシンガポールでしょう。 シンガポールは、淡路島ほどの広さの

島国で人口は420万人です。 もともとマレーシアとともに英領マレーシア連邦だった

経緯もあり、いまでも水をマレーシアから6本のパイプラインで輸入しています。消費

される水の半分を、これらパイプラインを通してマレーシアから買っており、残り半分は

シンガポール国内の19か所の貯水池から供給されています。まさに、生殺与奪をマレー

シアに握られているような姿になっています。 マレ-シアは2つに分けて結んでいる

水供給契約のうち、2011年に期限の来る契約分の更新は行わない意向ですので、

シンガポールは従来にも増して自前での水の確保を増やさなければなりません。

現在、シンガポールでは、雨水貯水池の増設とネットワーク化、海岸の入江(マリーナ

ベイ)を堰で仕切り淡水湖化する事業、海水淡水化プラントの建設に取り組んでいます。

また、家庭排水を浄化処理して上水として利用することを進めています。 飲料可能と

なった水は「ニューウオーター」と呼ばれ、再び上水に混ぜて使用されるとともに、

ペットボトルでも販売されています。

このようなシンガポールの水の循環利用の取り組みは、大量の雨水を河川などにそのまま

流出させている日本の大都市でも、是非取り入れて日本型のシステムを作りあげていた

だきたいと思います。



さて、国際河川と言われている河川は複数の国家間を流れていることから、水質問題や

取水権をめぐって、しばしば国家間の紛争の原因となることがあります。 1995年8月

イスマエル セラゲルディン世界銀行副総裁は、 「20世紀は石油争奪が原因で戦争

が勃発したが、21世紀には水獲得問題が原因で戦争が発生する可能性が高くなる」と

指摘していますが、過去60年間で水に起因する激しい紛争は40件近く発生していま

す。


<ヨルダン川>

ゴラン高原が源流。イスラエル、ヨルダン、パレスチナが水利権を巡り紛争の原因の

一つになっている。


<ナイル川>

上流のケニア、タンザニア、アチオピアなど7カ国と下流のエジプト、スーダンとの

間で水の配分を巡り紛争。


<ユーフラテス川>

トルコの山岳部が源流。 上流のトルコがケバンダムを、中流のシリアがタブカダム

を建設。下流のイラクで異常渇水が発生。 その後トルコがアタチュルクダムを建設

したので、トルコ対シリア・イラクの対立になっています。


<インダス川>

チベット高原が源流。パキスタンとインドが対立。1960年にインダス川水利条約を締結。


<メコン川>

チベット高原が源流。上流の中国が雲南省にダムを建設、さらに第2、第3のダム建設

計画もあり、下流のインドシナ半島のラオス、タイ、カンボジア、ベトナムなどが

水量減や水質汚染を懸念。 これら4カ国は、メコン川委員会を設置、中国とミャンマー

は対話パートナーとして参加。


<リオ・グランデ川>

アメリカとメキシコ国境を流れる。米テキサス州とメキシコのチワワ州の間で乾期の

水の配分で紛争になっている。


<ラ・プラタ川>

アルゼンチン、ウルグアイ、ボリビア、ブラジル、パラグアイの南アメリカの5カ国

を流れる。 支流におけるダム開発に伴い、水資源の保全と水質悪化が問題となって

いる。


<ドナウ川>

ドイツ南部から東欧10ヶ国を通って黒海に注いでいる。スロバキアとハンガリーで

ダムの建設計画があり、環境問題に発展。 1998年に国際機関「ドナウ川保全国際委員

会(ICPDR)が設立された。


この国際河川の水問題は、歴史的に長い経緯を持つものが多いのですが、関係国の英知で

紛争を解決しているところが多々あります。 今後とも、国際河川問題で国際的な紛争

が未然に解決されていくものと期待しています。



最近、「世界の水ビジネス」が話題になっています。 政府が5月に「産業構造ビジョン」

を発表、この中には、鉄道・送配電・石炭火力発電・原子力発電・水などのインフラ関連

産業の輸出が明記されています。 5月連休中には、2名の大臣がベトナムで新幹線や

原子力発電などのセールスを行っている姿が報道されました。 さらに菅新政権は

「成長戦略」を決定し、「環境・エネルギー」「アジア経済」「健康」「観光」など

7分野で施策を実施するとしています。

日本の最先端の海水淡水化技術の売り込みや、水処理技術や上下水道運営のノウハウを

持つ地方自治体と企業、さらに政府系の金融機関が協力して、水処理施設の建設から水道

事業の運営までを一括して手掛けることをセールスポイントにして、世界の水ビジネスに

参入する動きが出てきています。 

 (最近発表された例)

・北九州市 /日立プラントテクノロジー・東レ /国際協力銀行

・東京都 /三菱商事・荏原製作所・日揮 /産業革新機構


かつて、日本株式会社として政官民一体となって産業の育成に取り組み、驚異的な高度

成長をなしとげました。 欧米やロシアは従来より、首脳の海外訪問の時には、多くの

経済人を引き連れて、ビジネスを行っているのは周知の事実です。 昨今、韓国の現代

財閥出身の大統領がアラブ首長国連合(UAE)の原子力発電プロジェクトをトップセー

ルスで受注に結び付け、世界をあっと言わせました。


日本が、これら外国勢に負けじと攻勢に転じるのはよいのですが、日本の政治家でビジ

ネスのことを肌で理解できている人が果たしているのか、政官民一体の前提となる相互

信頼と意思の疎通が出来るような体制が作り上げられているのか、官はどういう役割を

果たすのか、民間の競争を削ぐことのないような体制を築けるのか、長期にわたる設備

の運転保証はどこが、どういう形で行うのか、等々具体的にはなにも決まっていない

ようであり、誠に心もとない感じがします。  

なお、海外巨大プロジェクトでは、かつては、すぐ利権がらみのきな臭い動きがついて

回っていたように思いますが、今ではないものと信じたいです。 


(参考)
藤田紘一郎氏(現東京医科歯科大名誉教授)の「癒す水 蝕む水」(1996年)という本が

あります。 私がジャカルタに駐在していたときにこの本の内容を知り、愕然としたもの

でした。 すなわち、「ジャカルタの水道水は、世界で最も糞便汚染されている。その

原因はジャカルタの上水道の施設が絶対的に整備不良であることと、下水道が全くないと

いうほど貧弱であることによる。」とありました。 

次の表は、藤田名誉教授が各都市の水道水を外国人が飲めるか否かを調査した結果です

(同著69ページ)。  調査時点から7~8年経過していますので、その後変化がある

のかも知れませんが、基本的には変わっていないのではないかと思います。

             
             飲める   飲まないほうがよい 飲めない
<東アジア、東南アジア>
 東京           ☆
 ソウル                   *
 北京                    *
 マニラ                             ★
 ジャカルタ                           ★
 クアラルンプール              *
 バンコク                            ★
 香港                    *
シンガポール       ☆

<南アジア>
 ダッカ                             ★
 デリー                   *
 コルカタ                            ★
 カラチ                             ★

<中東>
 バグダット                           ★
 アンマン         ☆
 イスタンプール               *
 ベイルート        ☆
 アビダビ                  *

<アフリカ> 
 カイロ                             ★
 ナイロビ                  * 
 ダルエスサラーム                      ★

<北米・南米>
 ワシントン        ☆
 ニューヨーク       ☆
 ロサンゼルス       ☆
 メキシコ                            ★
 パナマ          ☆
 カラカス                   *
 キト                              ★
 ボコタ                             ★
 サンティアゴ                          ★
 リマ                              ★
 リオデジャネイロ               *

<豪州>
 シドニー         ☆

<欧州>
 ローマ                             ★
 パリ                    *
 ロンドン         ☆
  
 

<2010年7月5日 ☆ きらきら星 ☆>





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内向き思考型の日本人

2010年07月01日 17時46分27秒 | ちょっと気になること

産経新聞が次のように報じています。

「カナダで開催されたG8 の日本記者との総括会見で菅首相は韓国大統領の

名前をイ・ミョンビャク(イ・ミョンバクが正しい)と言い間違え、ロシア大統領の名前

をメドメージェフ(メドベージェフが正しい)と言い間違えた。 さらに、インドや

インドネシアに触れたときには、『エマージング・カントリー(新興国)』というべき

ところを、『エマージェンシー・カンパニー(緊急会社?)』と発言した。」


菅首相は鳩山内閣時代には副総理でありながら、沖縄の普天間基地移設問題には、

まったく関わらなかったのを見ても、外交は鬼門のようです。 公表されていない

ので真相は不明ですが、もしかしたら韓国やロシア大統領との個別会談の場でも、

名前を間違っていたのではないかと勘ぐってしまいます。名前を間違うのは単に言

い間違えたというよりも、思い込みによる場合が多いからです。 もしそうであれば、

国のトップが相手だけに大変な失礼にあたります。 もしビジネスの場で相手の名前

を言い間違えたら、商談不成立間違いなしでしょう。 さらに、内向き思考型の政治家

である管首相には、「インド」と「インドネシア」の区別さえつかないのかも知れません。



GDP世界2位(2010年は中国に抜かれるとの報道があるが)の国の首相が国際感覚に欠

けるのは、恥ずかしい限りです。 公式会合・会談は別として、それ以外の時には各国

の首脳と通訳を交えずに話せるようでないと、これからの日本の首相は務まらないので

はないでしょうか。


企業レベルでは、一般社員や取締役.に外国人が多くなってきていますし、社長など

トップ経営陣が外国人という会社も増えてきています。 社内の公用語を英語にし、

会議は当然英語という企業も多くなってきています。  ビジネスの分野ではグロー

バル化が現実の姿になって来ているにも関わらず、政治家には旧態依然とした古臭い

感覚から脱皮できずにいる人が多いようです。


商社の若手社員が海外赴任を嫌がっていると言われています。 豊かな社会の中で

少子化で大事に育てられてきたので、海外への雄飛はおろか、新しい分野に飛び込ん

で自分を試すような覇気のある若者が少なくなってきているのです。 


先般、このブログで「オランダ東インド会社(VOC)と日本人」を書きましたが、

停滞している日本を再び蘇えさせるには、日本版大航海時代の ‘日本人としての矜持

を忘れず、海外に雄飛した日本人の『覇気と心意気』’ をもう一度思い起こす必要

があると思います。  日本文化への愛着もなく(かつて菅氏は国旗・国歌を定める

法案に反対していた)、日本人としての誇りを持たず(かつて菅氏は北朝鮮による

日本人拉致の実行犯とされる辛光洙(シン・グァンス)容疑者の釈放運動に携わった

される)、内向きの思考しかできない政治家には即刻「さよなら」を言いたいです。


 
インドネシアは私が6年間駐在した国であり、当時のことをこのブログで時々書いて

います。 インドについては、私の会社の先輩がインドのニューデリーに駐在して

いたので、様々な苦労などを耳にすることがありましたが、正直言って、よく知り

ません。


日本人の多くは、インドについて、「カレーの本場」、「カーストという時代錯誤の

身分差別.がある国」、「象とヒンズー教の国」、「非暴力主義のガンジーを生んだ国」

などのイメ-ジを持っていると思います。 


インドはBRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)の一角として今や中国と並ぶ

高度経済成長の大国であり、日本企業には中国ばかりでなく、インドマーケットを

視野に入れているところが多いのです。 


インドと比較される中国では最近労働争議が頻発して工場の操業が停止しているところ

が多いようです。 労働契約法の施行により労働者の権利意識の向上が発端となって

いるようですが、遅かれ早かれ、中国は安い労働力を使った世界の生産工場から

脱皮し、巨大なマーケットに変貌する時期が来るとみなされていましたが、丁度今が

その時期に差し掛かってきたのではないでしょうか。


インドは人口が約12億人で、いずれ、一人っ子政策をとる中国の人口を抜き去ると

みられています。 「ゼロや円周率の発見、インド式数学」でもわかるとおり、

インド人の頭脳の明晰さはすばらしいものがあり、インド人のIT関連ソフトウエアの

技術者は世界中から引っ張りだこの状態です。 インドを良質の安価な労働力を有

する生産拠点としてみる企業が増えていますし、さらに経済成長に伴って広大な

マーケットとしても注目されてきています。 魅力のある国ですが、分からないこと

や知らないことが多すぎるので、インドという国を冷静に分析してみることが必要と

思います。 


インド人ビジネスマンの日本体験記 「喪失の国、日本」(文春文庫)は一読に値する

書物と思います。 論理的に冷徹に日本人・日本文化を観察しており、その鋭い観察力

に感服します。 さらに「インド(人)ならこうだ」と対比して書いてありますので、

非常にユニークなインド人・インド文化論にもなっています。



(2010年7月1日 ☆ きらきら星 ☆)
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