花熟里(けじゅくり)の静かな日々

脳出血の後遺症で左半身麻痺。日々目する美しい自然、ちょっと気になること、健康管理などを書いてみます。

「我が国の製造業が衰退していく」

2011年09月15日 16時19分48秒 | ちょっと気になること

最近、我が国の代表的なメーカーで気になる動きが報道されました。

一つは、トヨタ自動車がインドネシア第2工場建設するというものです。ジャカルタ郊外

の日系の工業団地にある第一工場(能力11万台)に隣接して、263億円を投じて能力

7万台規模の第2工場を建設するもので、小型車「エティオス」をベースに低価格車を生

産、インドネシアをタイと並ぶアジアの生産・輸出拠点にしていく戦略のようです。

(日経新聞:9月13日)


日本国内市場が飽和状態で、米国市場も頭打ちになって来ている中、急成長するアジアマ

ーケットをにらんだ布石です。自動車産業は裾野が広く、実に多くの部品メーカーが係っ

ています。 トヨタのインドネシア工場増強に伴って、日本国内の部品メ-カーもついて

いくところが出てくると思います。 規模の大小を問わず、企業が日本国内だけで生きて

いける時代はとっくの昔に終わったのです。


蛇足ながら、私が勤務していたインドネシアの工場は、トヨタの入っている団地(カラワ

ン工業団地)に近い別の日系の団地にありました。 トヨタの広い敷地にびっくりし、流

石に世界のトヨは違うと思っていました。 第2工場建設で、さしもの広大な敷地も埋ま

るのではないでしょうか。



2つ目は、パナソニックが部品調達機能をシンガポールに移すと言う記事で、パナソニッ

クは部品や部材などは、従来、日本からの調達が中心でしたが、2012年度に10年度比4割

減の約1万社に絞る方針で、主に日本国内の調達先が減少することになります。これは、

企業調達コストの大幅削減が狙いで、調達・物流の本部機能をシンガポールに移し、価格

競争力のあるアジアでの調達比率を増やし、合わせて、1社から部品を大量購入する集中

購買も積極化してコスト圧縮を進めるとのことです。 (日経新聞:9月14日)


調達機能をシンガポールに移すという動きは、今に始まったわけではありませんが、電気

製品は電子部品の集合体ともいえ、多くの部品が必要な製品だけに、国内の部品メーカー

が大きなダメージを受けること必死だと思います。 




3つ目は、茨城県沿岸の鹿島コンビナートで、塩化ビニール樹脂の原料を生産している5

社中、旭硝子・ADEKA・カネカの3社が撤退し、三菱化学と信越化学の2社は操業を継続

するものの、塩化ビニール樹脂の原料生産規模を3~5割縮小する。 撤退や生産縮小の

理由は、国内需要が減少してきていること、電力代が高く輸出競争力が低下しており、従

来から設備稼働率は5~7割程度だったこともあり、東日本大震災で被災した設備を全面

的に復旧せずに部分復旧にとどめることによるものだそうです。(日経新聞:9月14日)


東日本大震災の被害を受けた企業の中には、工場の完全復旧をせずに、国内需要の減少

や、電力コストが高いことなどを理由に、そのまま閉鎖したり、他の地域への移転を検討

しているところもあります。


(時事ドットコム:9月7日)

 ・工場閉鎖・撤退・移転

  ニチレイ(気仙沼)、JFEスチール(仙台)、日立化成(浪江町)、日本水産

 (女川町)、レンゴー(仙台)、日立化成(浪江町)、マルハニチロ(石巻)
 
 ・再開のめどが立っていない
 
  エスエス製薬(浪江町)、TOTO(富岡町・楢葉町)、エアウオーター(いわき)



東北地方での工場稼働による雇用の復活が図れないばかりか、日本国内でのメーカーの衰

退・雇用の減少に繋がっていく危険性があります。

原子力発電所稼働停止に伴う電力供給や電力コスト増加への不安から、製造業が海外移転

していくのではないかとの衆議院・予算委員会での指摘に対して、当時の菅総理は、再生

エネルギーを進めることにより、新たな産業が育成され雇用も増えてくるので心配ない

と、人ごとのような答弁していました。 再生可能エネルギーは今後5~10年かけて、

徐々に普及を図っていくものであり、この1~2年で急速な雇用増につながるような有力

な産業に育つわけではありません。総理大臣でありながら、日本国家・国民のことを考慮

することなく、社会運動家としての野望をむき出しにして日本国家の経済基盤を破壊しよ

うとした、菅直人氏の責任は誠に重いものがあります。



さて、円高が常態的になり、株価下落も続いています。ます。 政府・日銀は8月4日に日

本単独で為替市場介入を行いました。 この結果一時的に為替は1USDが80円近くまで戻

しましたが、翌週には、介入前と同じ水準の1usdが76円台まで戻ってしまい、その後現

在も同じ水準で動いています。介入の規模は過去最大の 4.5兆円と財務省が発表して

います。 要するに、4.5兆円が日本国民の負債となっただけです。円高・株安は専門

家によれば、米国の財政構造、またユーロ圏内の財政破たん懸念に起因するもののよう

で、日本単独では到底解決できるものではありません。

このような厳しい経営環境に対して、日経新聞が100社の社長にアンケートした結果が

あります。「円高、新興国へ生産シフト必要」と4割が回答しています。企業だけでの努

力も限界があり、政府・財界一体となって乗り切っていかなければなりません。民主党政

権も支持基盤の労組の声ばかりに耳を傾けないで、今は痛みを伴うかも知れないが、企業

存続に向けての大胆な施策を実施してもらいたいものです。



★日本経済新聞社が8月22日まとめた「社長100人アンケート」

『現在の為替水準が続くと新興国での現地生産を拡大する必要があると回答した経営者が 4割に達した。1995年の円高局面に比べ過半数の企業が円高抵抗力を高めてきたもの  の、現状の水準では7割の経営者が収益悪化の要因となると回答した。主要製造業が海 外での生産を加速。長引く円高で国内産業の空洞化懸念が強まっていることが浮き彫り になった。』(日経新聞:8月23日)
  
  {現状の円高が続いた場合に必要な方策}
  ・国内でのコスト削減       50%
  ・部品、原材料の海外調達拡大   50%
  ・新興国での現地生産拡大     40%
  ・為替変動分の製品価格への上乗せ 20%
  ・為替予約の枠、期間の拡大    20%
    
  {収益改善のための政府・日銀に望む政策}
  ・為替介入の継続、拡大      45%
  ・法人税率の引き下げ       45%
  ・TPPやFTAへの参加        45%
  ・成長戦略の具体化        30%

 
★塩ビ樹脂原料、大幅に生産縮小:鹿島コンビナートで競争力低下に震災追い打ち、旭硝
 子など撤退

『三菱化学など化学5社は東日本最大の石油化学基地、鹿島コンビナート(茨城県神栖  市)で水道管などに使う塩化ビニール樹脂の原料生産を大幅に縮小する。共同出資会社 から2012年3月をめどに旭硝子など3社が撤退。残る三菱化学と信越化学工業は生産能 力を3~5割減らす。石化製品の国内需要が低迷している上、3月の東日本大震災で被 害を受けており、現状規模で生産を続けるのは難しいと判断した。 水道管のほか農業 フィルム、電線被膜などに使う代表的な樹脂の塩ビは、同コンビナートの主力製品のひ とつ。ただ、電力コストの高さなどから国際競争力が低下しており、原料設備の稼働率 は5~7割程度にとどまる。このため震災で止まった設備をすべて復旧せず、能力を削 減して稼働率を高める。 原料の塩素の生産能力は年35万トン、中間原料の塩ビモノマ ーは同60万トン。5社はそれぞれ共同出資会社を設けて生産している。旭硝子のほか、 カネカ、ADEKAが株式を信越化学などに売却して撤退する。ただ3社は設備縮小な どには協力し、70億~100億円の費用を負担する。
 塩ビモノマーの3~5割という能力削減幅は、国内総生産能力の約1割に相当する。生 産縮小に伴い、共同で運営する火力発電設備の能力も削減する。 樹脂など石化製品の 内需はここ数年、減少傾向が続く。また、低コスト・大量生産が武器の中東勢などの台 頭で、国内コンビナートの輸出競争力は低下している。 震災の被害を受けた企業で  は、日本製紙も宮城県などの工場を完全に復旧せず、一部設備を停止する。原子力発電 所の事故などを受けて国内では今後、電力コストなどが高止まりする見通し。震災を機 にコストなどを再点検し、生産体制を見直す動きが広がりそうだ。』(日経新聞:9月 14日)


★パナソニック、部品調達先4割削減 アジアに比重・12年度1万社に

『パナソニックは14日、部品や部材などの調達先を、2012年度に10年度比4割減の約1万 社とする方針を明らかにした。調達コストの大幅削減が狙い。従来、日本からの調達が 中心だったが、調達・物流の本部機能をシンガポールに移し、価格競争力のあるアジア での調達比率を増やす。1社から部品を大量購入する集中購買も積極化してコスト圧縮 を進める。  調達先は10年度時点で国内外に計1万6000~1万7000社あった。約1万 社への絞り込みでは主に国内企業との取引が減る見込み。一方、パナソニックが工場を 構えるマレーシアやタイ、ベトナム、中国などからの部品調達を増やす。12年度計画で はアジア(中国含む)からの調達額を全体の50%(09年度は33%)とする。 電子部品 はアジアの現地企業が急速にコスト競争力を高めている。日本中心だった調達を見直し コスト削減につなげる。同時に複数社から調達していた部品については、1社からの集 中購買を計画的に進める。 日本にある調達本部、物流本部の機能を12年度上半期中に シンガポールに移す。約20人が日本の両本部から異動する予定。今後、シンガポールが 全世界の調達の司令塔となり調達業務のほぼ全権限を握る形に段階的に移行する。 パ ナソニックの外部からの部品・部材の調達金額の合計は09年度で4.4兆円と連結売上高 に占める割合は6割。同社は10~12年度の3年間で毎年約5000億円の調達コストの削減 効果をあげる目標を掲げており、連結売上高に占める調達額の割合の引き下げにつなげ る。調達先の絞り込みはその一環だ。 大手電機の調達改革では、ソニーも11年春まで の2年間で調達先を半分に減らした。パナソニックも新興国市場の開拓にはコスト競争 力を一段と高める必要があると判断した。』(日経新聞:9月14日)


★被災工場、閉鎖相次ぐ=再開めど立たぬケースも-東北沿岸部、震災の爪痕深く

『東日本大震災の発生から間もなく半年。津波に襲われた東北の太平洋沿岸部では、港湾 設備の復旧や東京電力福島第1原発事故の先行きが見通せないことから、工場の閉鎖を 決める企業が相次ぎ、いまだに再開のめどが立っていない工場も少なくない。被災地の 復興が絡むだけに、閉鎖と再開のはざまで苦悩する企業も多く、震災の深い爪痕は色濃 く残ったままだ。 鉄鋼大手JFEスチールは電炉子会社の東北スチール(仙台市)の 再開を断念。段ボール最大手レンゴーも仙台工場(同)を閉鎖し、内陸部の宮城県大和 町での新工場建設を決定した。 マルハニチロホールディングスはグループ会社「大洋 エーアンドエフ」の石巻食品工場(宮城県石巻市)を、ニチレイはグループの水産会社 「まるいち加工」の気仙沼工場(宮城県気仙沼市)を、それぞれ閉鎖。日本水産も宮城 県女川町の2工場について、従業員を転勤させるなど、再開を事実上断念した。 福島 第1原発から半径20キロ圏内の警戒区域にある工場は、そもそも立ち入りさえできな い。福島工場(福島県浪江町)を抱えるエスエス製薬は「再開についての判断は一企業 ではできない」と頭を抱える。同区域にブレーキ用摩擦材料の工場を持つ日立化成工業 も再開を諦め、他拠点で代替生産を始めた。子会社の2工場があるTOTOも「再開の めどは立っていない」としている。 「放射能の風評を考えると、現実には(再開を) 諦めている。ただ、地元の復興に水を差すことになり、簡単には結論は出せない」-。 福島県に拠点を持つあるメーカー関係者は、こう苦しい胸の内を明かす。子会社である 「日本海水」の小名浜工場(福島県いわき市)が製塩事業を手掛けてきたエア・ウォー ターは、事故の影響をにらみながら、年内に最終結論を出す意向だ。 生化学工業の子 会社「三陸加工」(宮城県気仙沼市)は、鎮痛剤などの中間原料を生産する工場が津波 で全壊。気仙沼港で原料となるサメの水揚げが戻れば工場再開を検討するが、現時点で は「いつになるか分からない」という。 被災した岩手、宮城、福島各県でも、内陸部 に位置する自動車、電機関連などの工場は比較的立ち直りが早かった。しかし沿岸部を 見ると、原発事故の影響が残る福島はもちろん、津波で深刻な打撃を受けた宮城の各港 湾に接する素材メーカーや水産業者などの工場は、再開への道のりは険しいのが現状  だ。』(時事ドットコム:9月7日)



(2011年9月15日 花熟里)


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