花熟里(けじゅくり)の静かな日々

脳出血の後遺症で左半身麻痺。日々目する美しい自然、ちょっと気になること、健康管理などを書いてみます。

「小沢氏の政治資金問題と検察審査会について」

2010年11月06日 12時54分48秒 | ちょっと気になること

最近、小沢氏の政治資金問題がらみで検察審査会のあり方が話題になっています。

小沢氏の資金管理団体である「陸山会」の収支報告書虚偽記入が政治資金規正法違反で

問われていた事件で、東京第5検察審査会が小沢氏強制起訴を議決しました。

我々一般国民は、マスコミから情報を得るしか知る方法がありません。 マスコミによ

り日々情報操作され、洗脳されていると言っても過言ではないと思いますが、そのため

か、小沢氏は、自民党田中派時代から現在に至るまで、ゼネコンなどからの巨額な政治

資金を、極めて巧妙に操作して、政治資金規正法をすり抜けてきたという印象を持って

います。

したがって、検察が不起訴処分にしたことに不満を覚えていたところに、検察審査会が

強制起訴の議決を行ったので、現代の‘必殺仕置人’のように錯覚し、胸のつかえが

とれたという雰囲気になっています。



しかし、今回の検察審査会の結論には、なにかしら釈然としないものを感じます。


検察審査会は、昭和23年7月に検察審査会法が公布・施行されて発足しました。 

くじで選ばれた11名の検察審査員が一般国民を代表して、検察官が不起訴と判断した

のが正しかったのか否かを審査する制度です。司法に一般国民の声を反映するという意

味では、裁判員裁判に先駆ける制度で、これまでに15万件以上の事件を扱っており、

近年は年間2000件近くになっています。


2009年5月に、法改正がなされ、改正法が裁判員制度発足と同時に施行されています。 

この改正法では、検察審査会が起訴相当と議決した場合、検察官は3カ月以内に起訴す

るか否かを判断しなければならず、起訴しなかった場合、再び検察審査会が起訴すべき

と議決すれば、強制起訴となります。 今回の小沢氏の強制起訴はこれが適用されたも

のです。


今回の小沢氏関連の事件について、経緯と議決要旨を読むと気になる点が浮かんできま

すので下記します。

(主な経緯、第2回目の議決要旨(平成22年9月)、第1回目の議決要旨(平成22年4月)は

本文末に記載)



1、検察審査会への審査申し立てが ‘甲’ となっており実名ではない。


検察審査会法第2条第2項では、検察審査会に審理を申し立てることが出来るのは

「告訴若しくは告発をした者、又は、犯罪により害を被った者(犯罪により害を被った者

が死亡した場合においては、その配偶者、直系の親族・兄弟姉妹)」と定めています。

今回の小沢氏の陸山会政治資金問題に関しては、被害者がいないので、申立人は告発をし

た者となりますが、マスコミでは「市民団体」とされており、議決要旨では「審査申立人

 甲」とされ、実名は公表されていません。

申立人が非公表を希望し検察審査会が認めた場合は、実名を公表しないようですが、

検察で2回も不起訴と判断された事件を、一転、強制起訴にする極めて重要な審理でもあ

り、実名で公表すべきと思います。 


                                                                                                            
2、第2回目の議決の日(9月14日)と公表の日(10月4日)に20日間ある。


通常であれば、議決したら速やかに結果を公表するものと思います。 第1回目では4月27

日に議決され、同日に議決書が作成・公表されています。 しかし、第2回目では議決が9

月14日の行われたにもかかわらず、議決書の作成・公表が 20日後の10月4日になってい

ます。なぜ20日間も間をおいたのだろうかと勘ぐってしまいます。 検察審査会の審理結

果を公表する日程は誰が決めるのでしょうか? 審査会会長? 審査会事務局長? 他


                                                                                                                                                 
3、審査補助員はどのような手続きで選任されるのか不明である。


議決要旨によると、「議決の作成を補助した審査補助員」が記載されています。

検察審査会法第39条の2によれば、審査補助員について、「検察審査会は審査を行うにあ

たり法律に関する専門的な知見を補う必要があると認めるときは、弁護士の中から、事件

ごとに審査補助員を委嘱することが出来る」と定めてあります。

 検察審査員 11名 は国民の中からクジで選ばれた司法の素人ですから、専門家が必要

なことは理解できますが、この専門家(弁護士)はどのような手続きを経て選ばれたのか

不明です。 審査補助員の選任手続きを明確にする必要があると思います。



4、検察審査会での審理結果は「議決の要旨」のみ公表され全文は公表されない。
  

審査結果は「議決要旨」として、議決の趣旨、議決の理由が公表されます。 審査議決に

至った経過や議決の詳細(全員一致か多数決か、多数決ならその内容、異なる意見はどう

いう内容か 、審査補助員はどの部分でどういう風に関与しているのか 等)が不明のま

まです。 裁判ならば判決文が公表されますが、検察審査会の審理ではなぜ要旨だけ公表

されるのでしょうか。 

特に、強制起訴という極めて重要な議決がなされた場合には、被疑者は‘被告人’になる

わけであり、影響が大きいこともあり、簡単な議決の要旨だけで済ませるのは、 あまり

にも被疑者に対する配慮を欠くものと思います。

さらに、裁判員裁判の場合には、裁判員が顔の映像なし、匿名で裁判の感想を述べていま

すが、検察審査会の場合には、審査員が裁判員のように感想を述べることもありません。  



5、検察審査会は国民の責任や感情で刑事事件の被疑者の黒白を追求する制度ではない。  


第2回目の審理の議決書要旨の 6、まとめ の最後のところで検察審査会制度の趣旨に

ついて触れています。

「検察審査会の制度は,有罪の可能性があるのに,検察官だけの判断で有罪になる高度の

見込みがないと思って起訴しないのは不当であり,国民は裁判所によってほんとうに無罪

なのかそれとも有罪なのかを判断してもらう権利があるという考えに基づくものである。

そして,嫌疑不十分として検察官が起訴を躊躇した場合に,いわば国民の責任において,

公正な刑事裁判の法廷で黒白をつけようとする制度であると考えられる。」


起訴の権限は検察官のみが有していますが、検察官が起訴するに足る証拠が不十分として

嫌疑不十分で不起訴と判断した事件について、特別に国民の申し立てに基づいて検察審査

会が、‘国民目線で証拠を見直して’、検察官の不起訴という判断が正しかったのか否か

を審理すべきで、‘国民の責任において刑事裁判の場で黒白をつける’性格のものではな

いと思います。
 

また、第1回目の審理の議決では、「直接的証拠と状況証拠があって、被疑者の犯罪の成

立を強く推認される場合は、政治資金規正法の趣旨、目的、世情等に照らして、被疑者を

起訴して裁判所で真実の事実関係と責任の所在を明らかにすることが善良な市民感覚であ

る」としています。

起訴するだけの十分な証拠がなくても、犯罪を犯しているのではないかと推測される場合

には、国民の感情(世情)を背景に起訴し、裁判の場で決着を図るべしという恐るべき論

理を展開しています。 


裁判はあくまでも司法の専門家と国民(裁判員裁判の場合)が法律と証拠に基づいて厳正

な手続きの下に行うべきものであり、第2回目の議決要旨のように、起訴を躊躇する検察

官にとって代わって、国民が権利を行使する場(裁判所)であってはならず、ましてや、

第1回目の議決要旨のように、国民の一時的な感情で刑事裁判が行われることは絶対にあ

ってはならないことです。 国民はマスコミの情報によって小沢氏は有罪と操作されてい

る可能性が高いのでなおさらです。


起訴になれば、政治家の場合には、政治生命を失う可能性もあり、公務員や民間企業勤務

の場合は、失職する場合も考えられます。 いずれにせよ、起訴されるということは、そ

の人の社会的な名誉が失われる危険性があります。 特に申し立て人が実名を公表しない

ような場合には、何らかの意図を持って申し立てする場合もありうるので、この危険性が

大きいと思われます。もし、強制起訴.した裁判において、無罪となった場合には、起訴

された被疑者の失われた名誉や人権、社会的な地位などはどのようにして取り戻すのでし

ょうか?


今、我々国民に問われているのは、「疑わしきは本人(被告人・被疑者)の利益に」とい

う刑事事件の大原則をしっかりと見つめなおすことだと思います。



6、検察審査会の法的な組織的位置づけが曖昧である。
 

検察審査会法第20条によれば、事務官及び事務局長は裁判所事務官のなかから最高裁判所

が任命するとなっていますので、組織的には、最高裁判所に属していると考えられます

が、起訴の議決を行うので、三権分立の考え方からは、行政の組織とも考えられます。

東京地方裁判所は準司法機関と指摘していますが、小沢氏弁護団は「検察審査会の議決も

行政訴訟の対象となる『処分』ととらえるべきだ」と主張して行政訴訟を提訴しました。

東京高等裁判所がこれを却下しましたが、検察審査会法に組織的な位置づけをきちんと

記載すべきと思います。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 <主な経緯>


 (2010年) 

 ・2月04日  東京地検が 04・05年分 不起訴処分。(石川議員ら3人起訴)

 ・2月12日 ‘市民団体’が東京第5検察審査会に審査を申し立て

 ・2月23日  東京地検が 07年分 不起訴処分

 ・2月23日 ‘市民団体’が東京第1検察審査会に審査申し立て   

 ・4月27日  第5審査会が「起訴相当」と議決

 ・5月21日  東京地検が 04・05年分 で再度不起訴処分

 ・7月08日  第1審査会が 07年分 で「不起訴不当」を議決

 ・9月14日  第5審査会が04・05年分 を議決(公表されず)

 ・9月30日  東京地検が07年分 につき再度不起訴処分。 07年分捜査は終結

 ・10月04日  第5審査会が04・05年分 で小沢氏を「強制起訴」すべきだとす

         る「起訴議決」を公表 

 ・10月15日  小沢氏側は「起訴議決」無効として東京地裁に行政訴訟提訴

 ・10月18日  東京地裁は審査会は准司法機関で行政訴訟にはなじまないとして

         申し立てを却下

 ・10月21日  小沢氏側は東京高裁に即時抗告

 ・10月22日  東京高裁は即時抗告を棄却

 ・10月27日  小沢氏側は最高裁に特別抗告

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

<平成22年9月14日の第2回目の議決書>


平成22年東京第五検察審査会審査事件(起相)第1号

(平成22年東京第五検察審査会審査事件(申立)第10号)

申立書記載罪名 政治資金規正法違反

検察官裁定罪名 政治資金規正法違反

議決年月日 平成22年9月14日

議決書作成年月日 平成22年10月4日


議決の要旨

審査申立人

 (氏名) 甲

被疑者

 (氏名) 小沢一郎こと 小澤一郎

不起訴処分をした検察官

 (官職氏名) 東京地方検察庁 検察官検事 齋藤隆博

議決書の作成を補助した審査補助員 弁護士 吉田繁實


 当検察審査会は,上記被疑者に対する政治資金規正法違反被疑事件(東京地検平成22

年検第11022号)につき,平成22年5月21日上記検察官がした再度の不起訴処分

の当否に関し,検察審査会法第41上の2第1項により審査を行い,次のとおり議決す

る。


   議決の趣旨

 別紙犯罪事実につき,起訴すべきである。


   議決の理由


第1 被疑事実の要旨

 (省略)

第2 検察官の再度の不起訴処分

 嫌疑不十分

第3 検察審査会の判断

 (1~5 省略)

 6 まとめ

 以上の直接証拠及び状況証拠に照らし,検察官が,被疑者とAやB,Cとの共謀を認め

るに足りる証拠が存するとは言い難く,結局,本件は嫌疑不十分に帰するとして,不起訴

処分としたことに疑問がある。

検察官は,起訴するためには,的確な証拠により有罪判決を得られる高度の見込みがあ

ること,すなわち,刑事裁判において合理的な疑いの余地がない証明ができるだけの証拠

が必要になると説明しているが,検察官が説明した起訴基準に照らしても,本件において

嫌疑不十分として不起訴処分とした検察官の判断は首肯し難い。

検察審査会の制度は,有罪の可能性があるのに,検察官だけの判断で有罪になる高度の見

込みがないと思って起訴しないのは不当であり,国民は裁判所によってほんとうに無罪な

のかそれとも有罪なのかを判断してもらう権利があるという考えに基づくものである。そ

して,嫌疑不十分として検察官が起訴を躊躇した場合に,いわば国民の責任において,公

正な刑事裁判の法廷で黒白をつけようとする制度であると考えられる。


  よって,上記趣旨のとおり議決する。


    東京第五検察審査会

  別紙

   (省略) 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<平成22年4月27日の第1回目の議決書>


平成22年東京第五検察審査会審査事件(申立)第10号

申立書記載罪名 政治資金規正法違反

検察官裁定罪名 政治資金規正法違反

議 決 年 月 日 平成22年4月27日

議決書作成年月日 平成22年4月27日


議決の要旨

審査申立人   (氏名) 甲

被疑者 (氏名)  小沢一郎こと 小 澤 ― 郎


不起訴処分をした検察官 東京地方検窯庁 検察官検事 木 村匡 良

議決書の作成を補助した審査補助員 弁 護 士 米 澤 敏 雄


上記被疑者に対する政治資金規正法違反被疑事件(東京地検平成22年検第1443号)につき,

平成22年2月4日上記検察官がした不起訴処分(嫌疑不十分)の当否に関し,当検察審査会は,

上記申立人の申立てにより審査を行い,検察官の意見も聴取した上次のとおり議決する。


議決の趣旨

本件不起訴処分は不当であり,起訴を相当とする。


       議決の理由


第1、被疑事実の要旨

 (省略)
     
第2、検察審査会の判断

 (1~4 省略)

5、 政治資金規正法の趣旨・目的は,政治資金の流れを広く国民に公開し,その是非につい

 ての判断を国民に任せ,これによって民主政治の健全な発展に寄与することにある。

 (1)「秘書に任せていた」と言えば,政治家本人の責任は問われなくて良いのか。

 (2)近時,「政治とカネ」にまつわる政治不信が高まっている状況下にもあり,市民目

   線からは許し難い。
 

6、 上記1ないし5のような直接的証拠と情況証拠があつて,被疑者の共謀共同正犯の成

  立が強く推認され,上記5の政治資金規政法の趣旨・目的・世情等に照らして,本件事

  案については被疑者を起訴して公開の場(裁判所)で真実の事実関係と責任の所在を明

  らかにすべきである。これこそが善良な市民としての感覚である。
   

  よって上記趣旨のとおり議決する。


  東京第五検察審査会


            
(2010年11月6日  ☆きらきら星☆)
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