地酒 玉川ブログ The Tamagawa sake blog

京都府京丹後市久美浜町の日本酒蔵元
木下酒造の日頃

「白い」酒の話

2012年02月11日 | 限定品
今年は私にとって玉川で5回目の酒造りです。
入社以来、蔵元から新しいアイディアを求められ、色々と提案させていただき、
次々と新しい玉川が生まれてきました。

その中でも、北錦という酒米で仕込む「自然仕込」純米酒(酵母無添加の
山廃)は特にお客様に喜ばれ、今では仕込本数の最も多い商品になりました。
搾ったままの受注生産限定品を、仕込別のシリーズでご案内しています。
この冬だけで、今までに4種類が出荷済みです。

清酒酵母の限界に挑む

一般論として、清酒酵母はアルコール度数が18%を越えると弱り、そして
死滅すると言われています。ところが、玉川の「自然仕込」タイプの純米酒は、
20%前後はあたりまえ、20%を超えることもしばしばです。

で、3年近く前、蔵元が蔵人の晩酌に同席していたとき、こんな会話が
ありました。

「考えたら、20%を超えるって、すごいことやな」
「いつも、まだまだ元気のある状態で搾ってるし」
「何パーセントまで行くもんでしょうかね」
「じゃあ、タンク一本、行けるとこまで行かそか?」

そんな経緯で、21BYの造りでは、仕込32号をとことん発酵させることに
しました。

北錦で仕込んでいるこのタイプの山廃は、通常は20日くらい発酵させ、
日本酒度+3くらいで揚げるようにしています。

その時は「2個酛」、つまり、タンク2本分のもろみを酛一つで造りました。
同じ酛、同じ米、同じ水で、仕込32号と33号を隣同士のタンクで仕込んだ
結果――33号はアルコール度数19.9%で例年並み。
ところが、相方の32号を35日間発酵させたところ、なんとアルコール度数が
21.5%まで伸びたのです。日本酒度は+14でした。
以後、毎年タンク1本は最後の最後まで、引っぱれるだけ引っぱるように
しています。

去年の米は全般的に硬く、アルコールが出にくかっただけに、完全発酵を
させても、アルコールは21%手前で終わりました。

さて、今年は?

今期も2個酛で造り、仕込25号のアルコール度数はおとなしい19.4%で
揚げました。相方の24号は一ヶ月以上発酵させ、ついこの間搾りました。
今年も日本酒度は+14。そして気になるアルコール度数は21.2%まで上がり
ましたが、惜しくも新記録達成ならず!


何が「白」なのか?

毎年一回だけ造るこの完全発酵の限定品は、通称「白ラベル」と呼ばれて
います。由来は、通常商品は朱赤の地に黒字で「山廃」と書かれているところ、
この商品は白地だから。黒いラベルの右上、ほんのわずかな面積なのに
「白ラベル」とはややこしい話ですが、お客様の間ではすっかり定着して
しまったので、どうかご容赦を。

ところで、この酒には「アルコール度数が高いのに、やさしい」という
コメントをよくいただきます。しかし、「やさしいけれど、アルコール度数が高い」
のも事実。くれぐれも翌日、後悔しない呑みかたをなさってください。

この酒に詰まっている旨味は半端な量ではありませんから、色々と遊べます。
●酒3、水1の割合で割り水をして呑むのも美味しい。
●氷を入れて呑むのも楽しい。
●寒さ対策としてお湯割りもいける。
●根気強く待つだけの忍耐力があれば、家で長期熟成させるのにも非常に面白い酒です。


新記録達成はなりませんでしたが、今年も旨みたっぷりの「白ラベル」は
2月8日に発売となりました。
ぜひお試しください。

杜氏
  フィリップ・ハーパー

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