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浜松五社公園の「男爵前田正名君碑」を読み解く

(浜松五社公園の「男爵前田正名君碑」)

掛川図書館主催の文学講座の、文学散歩で訪れた浜松五社公園で見つけた「男爵前田正名君碑」を読み解く。前田正名は「丸尾文六報恩碑」の題額を書いた人として出て来た。加賀百万石の前田家の一統かと思ったが、違っていた。

男爵前田正名君碑
正二位大勲位、公爵松方正義題額
※ 松方正義(まつかたまさよし)- 薩摩藩士。明治期に内閣総理大臣を二度務めるとともに、大蔵卿、大蔵大臣を長期間務めて、日本銀行設立、金本位制確立など、財政通として業績を残した。

君諱(いみな)正名(まさな)、姓前田氏、考(亡父)諱善安、妣澤氏。家世、鹿児島藩に仕う。君幼く頴悟好学、明治元年、朝命を奉じ、法国に游ぶ。農学を修め、一時法を学び、兵と交り、圍巴里を夾(はさ)む軍に学ぶ。君、城中に在り、備(つぶさ)艱苦を嘗める。(明治)九年帰朝。
※ 家世(かせい)- 代々続いてきた家柄。また、その家の代々の人 。
※ 頴悟(えいご)- すぐれて悟りのはやいこと。賢いこと。
※ 法国(ほうこく)- フランス国。
※ 圍巴里 - パリ全域を囲ったティエールの城壁のこと。1844年に完成。1919~29年に解体された。
※ 艱苦(かんく)- つらく苦しいこと。艱難辛苦。


十一年法国、大博覧会を巴里において開く。君、事務官長を拜す。掌理、庶務、数官を歴任し、農商務次官に至る。勅選貴族院議員、前後二回。従三位勲三等を叙す。君、身を倹素に奉ず。
※ 大博覧会(だいはくらんかい)- 1878年のパリ万国博覧会。
※ 掌理(しょうり)- 行政事務を一般的に指揮・調整すること。
※ 倹素(けんそ)- むだな出費をせず質素なこと。


当事、戦益を覆(くつがえ)す、興業意見、数万言、また五二会を起す。東奔西走、席を暖むる暇(いとま)あらず。殖産に始終如一力を致す。
※ 興業意見(こうぎょういけん)- 殖産興業の方策を説いた意見・資料集。明治十七年、前田正名編。
※ 五二会 - 明治二十七年、元農商務省次官であった前田正名が、織物・陶磁器・金属器・製紙器・雑貨類の5品の製造、販売奨励のために 品評会を計画した。そこに敷物類と彫刻が加わったため、五品会が五二会となった。
※ 始終如一(しじゅうにょいち)- ぶっ通し。端から端までずっと。


大正十年八月、病革まる。朝廷、その功を録(と)り、特に男爵を授け、正三位勲二等に叙す。十一日、薨越。二十四日、芝妙定院塋(墓)域に葬る。嘉永三年三月に生まれ、距(へだた)り、享年七十二。
※ 病革まる(びょうあらたまる)- 病気が重くなる。危篤状態になる。
※ 薨越(こうえつ)- 薨去。みまかること。


頃者(この頃)、浜松人、某、某等来り、諗(つげ)て曰く、前田君、浜松に実に百余回来たる。産業の勃興、その奨励者と頼む。郷人の追慕、鮮やかならず。将に碑を建て、以ってその徳を彰さんとす。この銘を余に願う。久辱、君を知る。辞すべからず。因って、その梗概を敘す。係るを以って銘に曰く、
※ 久辱(きゅうじょく)- 古くからの友人(へりくだっていう)。
※ 誼(よしみ)- 親しい間柄から生じる情や好意。親しみ。


  法国之遊  農学専修  勧行是務  富國是謀
  于朝于野  勤労不休  遺澤洋々  永傳千秋


(銘の意訳、七五調で)
朝命受けてフランスに、農学修む専らに、産業奨励これ務め、国を豊かに謀るべく、官と民とを駆け回り、休むことなく働きて、恩沢遺す洋々と、いついつまでも伝えけん。


   大正十二年八月   従二位勲一等平山成信
                   中邨利隆書
※ 平山成信(ひらやまなりのぶ)- 父は幕臣・神道家の平山敬忠(省斎)。農商務省・外務省・大蔵省などの勤務を経て、松方内閣で内閣書記官長を務める。貴族院勅選議員、男爵。
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