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「江戸繁昌記 ニ篇」 22 散楽(能)4

(早くも咲きだしたヒガンバナ)

こちらに向かっていた台風13号も、今朝未明に温帯低気圧になって、名残りの雨が一日降ったり止んだり、降る時は屋根を叩くように降った。

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。

また清世余事、繁華の一具、天保元年秋、観世氏、勧進楽場幸橋外に設け、演戯百曲限りに旬日を以ってす。鼉鼓龍笛以って太平を鳴らす。
※ 清世(せいせい)- 穏やかに治まっている世。太平の世。
※ 余事(よじ)- 仕事のあい間などにする他の事。余暇や余力でする事。本筋以外の事柄。他事。
※ 天保元年秋 - 観世大夫は、江戸幕府によって、太夫一代一度限り許される勧進能を行う特権を持ち、これを「一世一代能」、「一代能」、「御免能」と称した。これは数日間に渡る興行で、江戸町民は強制的にこの入場券を割り当てられたため、かなりの収益をもたらした。正しくは「天保二年秋」。
※ 楽場(がくじょう)- 能楽堂。
※ 幸橋(さいわいばし)- 江戸城外堀に架かった幸橋と幸橋御門は江戸城三十六見付の一つ。
※ 演戯(えんぎ)- 演技。俳優などが舞台で芸を演じて見せること。また,そのわざ。
※ 旬日(じゅんじつ)- 10日間。10日くらいの日数。
※ 鼉鼓(だこ)- 長江に棲息するワニの皮を張った太鼓。大太鼓。
※ 龍笛(りゅうてき)- 雅楽で使う管楽器の一つ。竹の管で作られ、表側に「歌口」と7つの「指孔」を持つ横笛。和楽器の横笛の原型。


予が来たり観る、第十一日に値(あた)る。楽名一に曰う、邯鄲。二に曰う、土蜘(蛛)。三に曰う、雲雀山。四に曰う、鉄輪(カナワ)。五に曰う、融(トヲル)
※ 土蜘蛛(つちぐも)- 室町時代の末期に制作されたと言われている鬼退治もの。
※ 雲雀山(ひばりやま)- 中将姫が登場する能の作品。狂女物に分類される。
※ 鉄輪(かなわ)- 夫に捨てられた女が貴船神社へ丑の刻参りをして恨みを晴らそうとするが、安倍晴明に祈り伏せられる。「鉄輪」は五徳のことで、頭に付けその足に蝋燭を縛る「丑の刻参り」の扮装。ヘッドランプの役割であろう。
※ 融(とおる)- 貴人物・太鼓物に分類される。世阿弥作。平安時代の左大臣源融とその邸宅・河原院をめぐる伝説を題材とする。


觚、觚ならず。士、士ならず。商、商ならず。儒、儒ならず。世皆な然り。而して、千古一日、古を古中ならずに覧るは、また妙ならずや。然も既に已に、古(いにし)えなり。また甚だ、今の人の眼に上らず。観る者多くは(う)。因って知る。儒にして儒なる者もまた、今の人の眼に上らず。
※ 千古(せんこ)- 遠い昔。太古。また、太古から現在にいたるまでの間。
※ 倦む(うむ)- 退屈する。嫌になる。飽きる。
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