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江戸繁昌記初篇 40 火場 1

(女房の実家のムクゲ)

「江戸繁昌記初篇」の解読を続ける。

     火場
※ 火場(ひば)- 火事場。
江都、火に厄(わざわ)いする、明暦以還、その大なるもの、多からずとせず。小々なるものは、則ち毎歳、冬春の、殆んど虚日無し。或は一日に再三発す。これを都下の一大患事と為すなり。
※ 以還(いかん)- 以来。
※ 交(こう)- 季節などの変わり目のころ。
※ 虚日(きょじつ)- 何事もない平穏な日。
※ 患事(かんじ)- 心配事。


(すなわ)ち、夫人(人々)、厄いする所以(ゆえん)の理を論じ、防禦すべきの方擬す。云々啄(口)を費して置かず。予は則ち謂わく、これまた、全盛世間、繁華地方の事のみ。人戸稠密、四里間の竃烟無慮数百万。油煎燭焼、一日、薪炭の用いる所、泰山童山にし、林にす。
※ 夫人 - (「ひと/\」とルビあり。)
※ 擬す(ぎす)- 決定していないことなどを、仮に当てはめてみる。はかる。
※ 稠密(ちゅうみつ)- 多くの人家・人間などがある地域に密集していること。
※ 竃烟(そうえん)- かまどのけむり。
※ 無慮(むりょ)- おおよそ。ざっと。
※ 油煎燭焼(ゆせんしょくしょう)- 油を煎り、灯りを焼く。
※ 泰山(たいざん)- 高く大きな山。
※ 童山(どうざん)- はげ山。樹木のない山。
※ 林(とうりん)- 広大な橙の林。
※ 髠(こん)- 丸坊主。


要する火は燥(かわ)くに就くの数、奈何(いかん)ぞ、これをここにおいて免れん。但し、思うに、都俗(都会の風俗)奢侈の致す所、また或は有りて、これに加うるに、人気軽脱を以ってす。
※ 奢侈(ししゃ)- 度を過ぎてぜいたくなこと。
※ 人気(じんき)- その地域の人々の気風。
※ 軽脱(けいだつ)- かるはずみなこと。軽率。


京氏が所謂(いわゆる)下節せざれば、盛火数々起ると、第(ただ)敬戒(警戒)を第一義と為す。須(すべから)く、切に心を尽くすのみ。防禦の術(すべ)に至りて、至要と雖ども、なお末なり。何をか奢侈と謂う。曰く、車馬、衣服、門廡堂墻の如きは、則ち国に常制有り。豪族、富商、固より僭することを得ず。
※ 京氏(きょうし)- 前漢の人。字は君明。東郡頓丘の人。元の姓は李であったが、自ら京氏に改姓した。易経の大家。災異について詳しく、 易の六十四卦を一年間に割り当て、日々に起こる事を知るというものであった。
※ 下節(げせつ)- 季節が移ること。
※ 至要(しよう)- 非常に大切なこと。
※ 門廡(もんぶ)- 門とひさし。
※ 堂墻(どうしょう)- 堂と垣。
※ 常制(じょうせい)- 常のさだめ。
※ 僭する(せんする)- おごって身分不相応なことをする。
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