木のつぶやき

主に手話やろう重複の仲間たちのこと、それと新聞記事や本から感じたことを書き込んでいきます。皆様よろしくお願いします。

政見放送手話通訳研修会(6)実技研修編

2007年06月18日 23時54分31秒 | sign language
午後はいよいよ実技研修です。実際に政見放送のテープを聞いて通訳します。これが実にきつかったです。
合格年度別に3グループに分かれて、それぞれに政見放送手話技術検討委員会の委員さんがサポートに入り、ビシバシと厳しいチェックを入れてくれました。
私が注意を受けたのは、
(1)語彙の選択が悪い、同じ手話が多い(変わる、良くする、交代、改革、変える)
(2)力強さがない(民主党の岡田代表の演説なのに、その雰囲気を伝えていない)
全員がテープを聞きながら通訳し、その都度容赦なく批評をしていただきました。普段はなかなかこのような機会がないので、本当に勉強になりました。
鋭い指摘がいくつもあったので、以下にメモしておきます。
(3)音に反応しない→ちゃんと内容を伝えなくてはだめ
(4)誤訳をしない。例文「無駄遣いをなくす」→「ムダ/使う/なくす」と表現すると、ろう者は「無駄遣いをしてお金を全部失ってしまった」と読むおそれがある。
(5)空間の使い方を間違えない(誤訳につながる)。例文「北朝鮮拉致事件」→右斜め前に北朝鮮を作って、手前に引っ張ってくると「日本が拉致した」ように読める。
(6)視線の使い方を工夫する。(主語の明確化。誰が、誰にを間違えない。)
(7)話のスピードが速いけれども、文の最初と最後を明確に表現する。→文の最初では「分かりやすい手話通訳者」は「目をむく(見開く)」動作で表現。文末はキチンと間を作る。 
(8)話の流れを伝えなければならない。(そのための技術が「緩急」「メリハリ」「強弱」「区切るか、続けて表現するか」など)
(9)手話を「かたまり」で表現しなさい。(ぶつ切りの表現もダメ、単調なリズムも伝わらない)
(10)緊張するとどうしても腕が上がり気味になる。ホームポジションの手が上がって「夢見る少女」か「オペラ歌手」みたいな手の握り位置になってしまう人がいる。
(11)日本語のリズムの人が多い。手話のリズムで表現することが大切。
(12)ろう者がどう見るのかを想像しながら内容・意味を考える必要がある。
(13)口形は、名詞中心に。故事諺は、そのまま口形をつけて表現し、時間があれば解説を加える。
(14)党の政策、キャッチフレーズは絶対に表現し漏らさない。
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政見放送手話通訳研修会(5)(その他)

2007年06月18日 22時14分48秒 | sign language
6月17日(日)に行われた「政見放送手話通訳に関する研修会」で勉強になったその他のこと。
(1)「新しい手話」
 ・新しい手話を創作する理由は、その都度意味を考えて表現していたのでは〔1〕時間がかかるというだけでなく、〔2〕公平性を担保するのに、「単語レベルでは統一している」「この手話表現を基本に表現している」といえる根拠を示すためとのことでした。
 ・確かに時事用語について表現が統一していれば、手話通訳者と候補者の「公平性」は保てるのでしょう。しかし、それを「初めて」見るかもしれない大多数のろう者の「公平性」は、日本手話研究所の大杉さんの選挙関連手話表現紹介のような努力・工夫がもっともっとなされなければならないと思います。

(2)「新しい手話」(その2)
 ・構造改革;日聴紙2001年7月号に掲載。「改革」がなかなか慣れません。
 ・IT革命;「改革」と「革命」の違いがよく理解できませんでした。
  ※「革命」は「日本語-手話辞典」299ページに掲載されています。
 ・靖国参拝;両手で指文字「や」の形を作って、門がまえ(鳥居)を描きます。

(3)リアルタイムキープ
 ・政見放送に限らずテレビの手話通訳は「遅れる」ことが許されない特殊な環境で通訳することになります。ややこしい話を丁寧に通訳していたらコマーシャルになってしまった、というわけにはいかないのです。政見放送でも「皆さん、○○党の△△をどうぞよろしくお願いします。」という候補者の締めの言葉と共に手話通訳も完了していなければならないわけです。これはかなりキツイです。プレッシャーも感じます。でも「声の終わりは、収録(カメラ)の終わり」なのです。
 ・通常の通訳なら、たとえ話に遅れたとしても次の話題を圧縮してショートカットすることによって「遅れを取り戻す」ということが可能ですが、17分間の政見放送では、ほとんどそれが許されないと考えて良いと思います。できる限りリアルタイムで手話を表出することが求められるのです。
 ・そのくせ講師からは、「手話が早過ぎて意味が分からなかった」とか「間がない」とか批判されるのです。

(4)フレームに収まるとは・・
 ・これは対談方式の政見放送の場合、手話通訳者は画面に向かって左奥後方に立っていて、通訳者の右手側が狭いという条件下にあることから来る制約です。要するに「右手が切れないようにコンパクトな手話をするように」という指導になります。
 ・また通訳者の左手も下手をすると、画面を見た視聴者からは候補者の頭の上に手が出てしまって見えたというような失敗もあったそうです。
 ・それとロールシフトというのは適切な表現ではないかもしれませんが、対談方式で画面に向かって右側に司会進行役がいる場合、手話通訳者が「右側」を意識しすぎると、画面の左外に向かって手話で話しかけているような誤解を受けることがあるようです。
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政見放送手話通訳研修会(4)(衆院比例区への道)

2007年06月18日 00時44分06秒 | sign language
今日の「政見放送手話通訳に関する研修会」の冒頭の経過報告で、今後の政見放送の課題として「衆議院比例区政見放送への手話通訳の挿入」が挙げられていました。
衆議院比例区は全国11ブロックあり、そのうち実際の収録があるのがNHKの8拠点局なんだそうです。
1.札幌(北海道)○
2.仙台(宮城)
3.東京(東京)
4.名古屋(愛知)○
5.大阪(大阪)
6.広島(広島) ○
7.松山(愛媛)
8.福岡(福岡) ○
このうち日本手話通訳士協会の支部があるのが、○をつけた4つの県。
3年に一度定期的に選挙があるのと違い、衆議院選挙は解散があるため行政側が、政見放送に手話通訳をつけるに当たってネックになるとしているのが
(1)拠点局ごとに必要な士の人数を揃えられるか
(2)急な解散があった場合にも士の通訳配置体制を整えられるか
(3)立候補する政党が増えた場合にも人数を増やすことが可能か
という点なんだそうです。
やはりそうした場合には、都道府県レベルの士協会支部体制の確立が必要となってくるとのこと。
というかむしろ行政側から見た場合、政見放送のような公平中立性が強く求められる手話通訳には、正式な士協会支部という受け皿がなくては任せることができないと考えるのでしょう。(通研支部は「運動団体」ですし、通訳者協会がある県でも「士」位置づけが曖昧な形では「受け皿」となりにくいと思います。)
また、通訳者の緊急手配や増員を考えると近県の協力体制が求められるでしょう。その「近県協力体制」を支えるにも県ごとの士協会支部体制の整備なのだということを実感しました。
仙台や愛媛は比較的「士」支部体制をまとめやすいのではないかと思うのですが、問題は大都市である東京と大阪でしょうね。大阪はまとまろうと思えばすぐ「士」支部化できるのかな。東京はかなり難しいでしょうね。
手話の世界は西高東低というか関西が強いし組織的なまとまりもがっちりしているのに比べ、東京・神奈川はイマイチですよね。都市が大きすぎるんですよね、きっと。
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