波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

「エピソードーボリビアに生きた男」

2019-08-05 10:56:08 | Weblog
亡くなってから、何年過ぎたことだろう。私は今でも時々ふと彼の姿を思い出す。そしていつかまた会って話ができる気がしている。亡くなったことを知らされたのは葬儀が終わってしばらく過ぎていた。知らないでまだ自宅で療養されていると思っていたが、医者に言われた2年の告知期間は」「肺がん」過ぎていたので心配はしていた。私はお供えを持ち自宅へと向かった。
仏前に線香をたて最後のお別れの祈りと生前受けた数々のご指導を思い感謝の祈りをささげた。奥様と向き合い、その後の最後の様子を詳しく聞くことができた。彼からの呼び出しがあって会社の専務をしていたY氏と3人で会食をしたのが最後だったが、それから死の覚悟を決めた彼の行動をつぶさに聞くことができた。
彼にはそれからいくつかの責任を果たす仕事があったようだ。第一はボリビアに残してきた女性への思いであった。日本へ帰国してからも毎月東京銀行へ行き月々の養育費を送金すること。亡くなったその月も気息器を抱えて東京まで行き、ボリビアに帰国する友人に手紙を添えて託していた。(それにはおそらくこれが最後になることが書かれていたことだと思われる。)それから、しばらくは静かな生活をすごしていたが。その年も暮れになり、大みそかを迎えていた。奥さんの話によると普段からやさしい人であったが、大みそかの夜、珍しく「足の爪を切ってあげよう」と爪切りをしてくれたそうです。奥さんは長いリュウマチで体が不自由になっていて彼は何かと介護かねて世話をしていたのだが、その日は珍しく何かと世話をしていたようです。
そして夜も更けてやすんでいると隣で寝ていた彼が急に苦しみ始めうなり声をあげたが、そのまま息絶えて倒れたそうです。あっけない最後ではあったが、また誰にも世話にもならずあまり苦しむこともなく天国への旅立ったとのことでした。それはその年の元旦の朝だった

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