波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

「友人達」その1

2019-08-12 10:12:09 | Weblog
人はこの世に生まれ家族をはじめとして多くの人との交わりをもって始まる。その中から「友人」「知人」と呼ばれる交わりができる。そして悲しい時嬉しい時悩みを持つとき折々に語り合い、慰めあい、励ましあって生きていく。成長と共に様々な人と巡り合い、繋がりを持つ。その中にあって友人と呼ばれる人間関係は大人になる過程で生まれてくる。私の場合は学生時代に閉鎖的な環境に置かれていたこともあって友人として語りあうほどの
人間関係が生まれなかった。(一般的には大人としての成長過程である学生時代に何人かの友人ができて大人になり、離れ離れになっても折に触れ、時に触れて連絡を取り、語り合うものだが)そんな人生だったが、私にも遅ればせながらその機会を得ることができた。
それは社会人として務めにつき実務についてからだった。入社した会社の技術者で私とはジャンルの違う世界の人であったが、話し合うと専門外のことになると何かと波長が合った。その主張は異なってもお互いに理解しあい納得する間柄に成長していった。やがて二人の間には共通する夢が生まれた。それは狭い日本を超えて海外へ出るというものであった。そのチャンスが来た。私が取引していた華僑の人から日本の技術を指導してくれという依頼だった。私は彼に話すと大賛成だった。しかし二人とも会社人間で拘束され、何でも許されるわけではなかった。しかしその思いは抗しがたく、二人は協力して台湾への道を築くことができた。やがて彼はその会社の役員として日本の会社を辞めて招かれ、自己資本で会社を設立して離れていったが、私との友情は固く結ばれ続いたのである。中国、香港と海外生活が長く続き苦労を多かったのだろう。帰国してから病に倒れ療養していた。見舞いを兼ねて訪ねたときはすでに話もできない状態であったが、私のことが分かったらしく手を握り合い、言葉にならない言葉でうなづきあったのが最後となった。