波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

パンドラ事務所    第八話  その4

2014-05-09 16:21:38 | Weblog
「私は先生が怒って言った言葉の意味がよく分からなくてね。それからと言うものはそれを考えるとよく眠れなくてね、どう考えてもどうして私がそんな事を言われて怒られなくてはいけないのかと思うと悔しいやら、何故だろうとか」青山はここまで話を聞きながら分かった事は友達の婆さんのために良かれと思って先生に頼んだことが原因の一つであることは間違いないことだと思うが、どうやらそれだけではないようだ。それは先生が別れ際に婆さんに言った、これからは
もうその人には出来るだけ関わりを持たないように付き合わないようにしなさい」と言う言葉にあると考えた。何故そんな事をわざわざ行ったのだろう。その理由については触れていない。
その病人の婆さんとは長い友達として、お付き合いをしてきたなかであった。まして女同士で
の話は愚痴であったり食べ物の話であっても楽しいものであり、トラブルのようなことは一度もなかった。そんな二人の仲を裂くようなことを先生はどうしていうのだろう。
これからも元気になればお互いに行ったり来たりすることになると思うのに、「かかわりを持たないようにしなさい」とだけ言われてもどうしたら良いかわからない。
まして「もう来ないで」と鍵をかけて締め出すようなことは出来ないと思うのだった。
青山は話を整理するために、救急車を呼んで病院へ行くように指示した夜の様子から整理をしてみた。確かに呼ばれていった友達の婆さんの様子は尋常ではなかった。だからおろおろしている子供たちに自分が余計な事と思いながらとっさに命令したことは事実だった。
そして病人は病院で手当てを受けて入院して無事に退院できたことも事実であった。
ここでわかっていないことは議員の先生が病院へどんな手配をしてくれたのか、そして病院の先生と議員の先生との間でどんなやり取りがあったかという事である。
常識的に考えればこうして何とか退院できて落ち着いたとすれば病人の家から議員の先生へ何らかの挨拶があったかどうかという事かも知れない。
そういえば、「退院したことも知らなかったよ」と寿司屋で話していたことを思い出していた。
そこまで考えを整理してみると、青山には何となくひらめくものがあった。議員ともなれば例えどんなに地方であってもいささかのプライドやメンツもあることだろう。
まして病院への世話、先生への口利きもしたとあればそれなりのやり取りもあった事だろうと察しが付く。それが退院したことも知らなかったとあってはメンツ丸つぶれもいいところだったとしか言いようがない。