波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

 パンドラ事務所   第四話   その4

2013-11-08 15:09:46 | Weblog
忘れるともなく忘れつつあったとき、青山の所は分厚い手紙が届いた。今回の問題を持ち込んだ妹の方からの手紙であった。もう関係がないのに何だろうかといぶかしげに読んでみた。そこには綿々と姉との確執が書かれていた。もともと姉は両親が病気になってからもほとんど面倒を見ることなく、家にも来ることがなかった。じぶんは夜でも電話で呼び出されて看病に行くことがあったり、生活のすべてを任されて手伝ってきた。
父親の晩年は非常に苦しがって手がかかったが、それをやりぬいた。そして遺産についてもすべてをお前に任せると遺言らしきことも聞かされていた。だからこそ今回の相続についても姉と二人だけの話で自分が全ても仕切って終わろうとしていた。
その為には事業の後始末、その他生活に関する雑事を整理して処理をしたうえで、その上で説明をして処理をしようと思っていた矢先に、姉が弁護士を通じて相続を請求してきたことは妹の思いを踏みにじる信頼を裏切る行為にとれた。
そしてすべてが壊れたのである。それは今までの肉親としての関係をすべてなくしてしまうことにもなったのである。(姉はそれほどのことに考えが親ばなかった。嫁ぎ先の親や主人の意向をくんで行ったつもいであったが)青山は当初その相談を受けた時は夫婦同士で話し合いを進めていたのだが、二人だけの話を主張する妹の考えは変わらず、完全に切れたのである。その結果金銭的なものは分配され、家屋敷はいもうとへ、そして父の事業をしていた土地は姉の方へと言うことで話はついたとあった。
しかし、二人の人間関係は完全に切れて電話での話も交流も全くの断絶となった。両親の記念会の一年忌の行事も別々と言った具合である。
同じ家に育ち、世の中に立った二人しかいない姉妹の関係がこんな決裂で終わったのである。天国いる両親の思いはいかばかりであろうかとも思わずにはいられない。
そして世の無常を思わざるを得ない。こんなことが実際に起こりうるのである。
物が人間をこのように変えてしまうのである。ものが人間を差配したのである。あってはならないことが起きたともいえる。青山はこの問題を終わるにあたって他人事とは思えず肝に銘じて人生を大切に最後まで人間の誠を大切にしなければならないと考えさせられたのである。