2023.03.13
この日、
足かけ7年間に及ぶ
園庭拡張・農場設置・駐車場拡張整備等による
学校環境整備事業がフィナーレを迎えました。
前夜から聞こえ始めていた雨音が静まり、
子どもたちが月曜の朝を迎える頃には
雲の合間から光が届くほど天気が回復しました。
「公園など他の場所には無いもの」
「最先端の研究により開発がなされたもの」
「身体的なことだけでなく、心と知性を刺激するもの」
「遊びという運動に広がり・発展・応用という要素のあるもの」
あれでもない、これでもない・・・
随分と長い間、探し物をしていました。
(閑話休題)
みなさんにとって
遊具とはどのような存在でしょうか?
学校や公園にある遊具の一つ一つに
それが生まれた理由や意味があります。
例えば、
当園の園庭にもあり
また、
大勢の方に馴染みのある「のぼり棒」一つとっても
大切な意味があります。
「上肢は屈曲優位、
下肢は伸展優位(上肢屈曲・下肢伸展)」
という言葉をご存知ですか?
人の体の構造上、
腕は伸ばす力より曲げる力の方が大きく
足は曲げる力より伸ばす力の方が大きい
ということを表す言葉です。
いろいろな物を持ち上げる時に
人は腕を屈曲させることにより持ち上げます。
走るために地面を蹴る動きも
平泳ぎのキックも
ヨットでオールをこぐ時も、
人は足を伸ばす時の力を利用します。
神経系の発達が著しい幼少期の日常生活に
この2つの動作を同時に取り入れられる
のぼり棒を使う運動は、
体の発育上、とても有効な運動なのです。
そして、
意味のある一つ一つの遊具の集合体が
大型遊具です。
一方で、
一つ一つの具体的な意味があるからこそ、
使用上のルールも明快に存在します。
滑り台には、
登る方(入り口)と滑る方(出口)があります。
ブランコには、
「乗り方」や「待ち方」にルールがあります。
違う角度からこの「ルール」を考えると、
それは「遊びの制約」であり
「遊びの限度」とも言えます。
探していたのは、
こういった「制約」や「限度」から
出来得る限り子どもたちを解放し、
まず、見た目「なんだこれ 」
という不思議を抱くことができ、
次に、「どうやって遊ぶんだ 」
という想像を膨らますことができ、
そして「こうやってみよう 」
という発想を広げることのできる、
新しい遊具の姿(概念)です。
この新時代の遊具のお披露目に立ち会った
記念すべき第1号となったのが、今年度の年長児です。
「遊んでいいよ!」と先生から声をかけられた後の
子どもたちの歓声は
この遊具のすばらしさを
言葉以上に説明してくれました。
この遊具に、入り口はありません。
出口も無いのです。
ルールという制約をでき得る限りそぎ落とし、
残ったのは「マナー」です。
1人で遊んでもいいですし、
2人でも3人でも
5人でも8人でも遊んでいいのです。
「遊ぶ方向」というルールも無いので、
時に譲り合わなければ先へ進めません。
相談できるかな?
譲ってもらったら「ありがとう」を言えるかな?
ケンカになっちゃうこともあるのかな?
そして、
ルールという制約をでき得る限りそぎ落としているので、
遊ぶ間のネガティヴな言葉も少ないのです。
この遊具の基本構造を成す太いパイプは、
足で踏んでもいい、
その上を歩いてもいい、
それにつかまってもいい、
そこに飛びついてもいい、
そこから下りてもいい、
「やっていい」ことが
あふれかえっています。
子どもたちは
ゲラゲラと笑っていました。
この遊具の存在を知り、
パンプレットを手にし、
どのように研究開発がなされたのかを読み込み、
実機を見学できる機会に恵まれ、
「これだ!」と感じた瞬間に、
子どもたちが目を丸くする顔が想像できて
ワクワクしました。
そこからが、新たなスタートでした。
通常の取引の流れをしていたら、
到底、年長児の卒園に間に合いません。
この遊具は、
最新の安全基準を満たし、
その上で更に子どもの安全のために
セイフティースペース(安全地帯)と共に設置されます。
単にセメントを使用した基礎工事を行うだけでなく、
その基礎の上に厚さ50㎜という
幾層にも重ねられた衝撃吸収層を形成し、
頭から落下した際でも
子どもの身体への影響を最小限に抑える配慮が
なされています。
逆に言うと、
基礎工事だけでなく
安全地帯を形成する工程も必要であり、
一般の遊具と比べ工程期間も長くなります。
「3月16日が卒園式なんです。
間に合わせて頂けないでしょうか?」
との申し出に、
「できる限りのことをやってみます」
と、反応して下さったJAKUETSU(ジャクエツ)社。
そこからスタッフ皆さんが、
部材調達・福井県からの輸送・愛媛県での設置を
総がかりで手掛けて下さり、
2023年3月13日のお披露目を
実現して下さいました。
卒園を前に
触れることができたかどうか、
遊んだことがあるかどうか、
数日のことですので
それはささやかなことかもしれないのですが、
自分で体験したことから、
人はより多くを学び、吸収します。
だからこそ、
そのささやかなことにも意味があると
思っています。
この遊具の正式名称は
「SAPIENCE」。
今回、年長さんたちが
この遊具に名前を付けてくれるそうです。
幼稚園のスクールバスの車体に
この園で育った子どもたちの絵が散りばめられ
そして生き続けてくれているように、
今回、子どもたちがつけてくれる名前が
思い出の一つとなり、
この園で生き続けてくれます。
さぁ
どんな名前になるのでしょうか(笑)!?