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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

危機の経済 識者は語る② バブル崩壊と金融対策

2020-04-30 08:27:16 | 経済・産業・中小企業対策など
危機の経済 識者は語る② バブル崩壊と金融対策
群馬大学名誉教授 山田博文さん
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)にいち早く反応したのは、「経済の体温計」といわれる株価の暴落でした。米国株価(ダウ工業株平均)は、リーマン・ショック以来の大暴落を続けたため、強制的に15分間取引を停止する「サーキットブレーカー」(注)が作動しました。10日間で4回も取引が停止する過去にない大暴落が続きました。1930年代世界恐慌の入り口も、アメリカの株価大暴落(29年10月のブラックチューズデー)でした。
第一に、現代恐慌の入り口は、株式バブルの崩壊です。当時の米国株価は24~29年の5年間で5倍に膨張していました。最近の10年間の日米の株価も、米国株価は3・3倍、日本株価は2・7倍に膨張しました。ところが、肝心の実体経済(国内総生産、GDP)は、アメリカ1・4倍、日本はマイナスの0・99倍しか増大していませんでした。

サーキットブレーカー制度 米国の1987年の株価大暴落をきっかけにニューヨーク証券取引所で導入された取引の一時中断の仕組み。東京証券取引所でも1994年から導入。



ニューヨーク証券取引所でマスクをして仕事をするトレーダー=3月20日(ロイター)

過剰なマネー
最近の株式バブルの背景は、2008年のリーマン・ショック対策で各国中央銀行が大規模な金融緩和政策に踏み込み、実体経済に必要なマネーを超えた過剰なマネーを供給してきたからです。過剰なマネーは、利益を求め投機的な金融ビジネスを活発化させ、株式市場などに流入し、株式バブル(「トランプバブル」、「アベバブル」)を起こしました。世界の株式保有層(大企業・金融機関・富裕層)の株式資産はこの10年で3倍ほどになり、「棚からぼた餅」の恩恵に浴しました。
世界上位2153人の資産は世界人口の6割=46億人分の資産を上回る(NGO・オックスファム)まで、資産格差が拡大しました。
第二に、株価の大暴落とコロナ恐慌に直面した各国政府と中央銀行は、過去最大の財政支出と一層の金融緩和に踏み出しました。
20カ国・地域(G20)首脳は、危機克服のため「手段を選ばず」、世界で5兆ドル(約545兆円)を供給すると発表し、欧米では生活やなりわいへの迅速な補償と対応が見られます。金融政策も、欧州中央銀行(ECB)は「あらゆる措置を講じる」(ラガルド総裁)と宣言し、米連邦準備制度理事会(FRB)は量的緩和(QE)と金利の大幅引き下げに踏み出しました。
かたや安倍政権は、117兆円の緊急経済対策は世界最大と見えを切りますが、中身は貧弱で、負担の先送りや前年度の未執行分が半分を占め、新規財政支出は27・5兆円です。今日の生活費と事業費が必要なのに、まだ実行されません。消費税を増税しておきながら国民の生命と経済が脅かされているのに、税金が有効に使われていません。
日銀の金融政策は、各国のような量的緩和や金利政策はすでに出尽くしており、株価対策が優先する事態です。

抜本的変更を
第三に、多数の人命を奪った「コロナショック」は、今後の財政金融政策のあり方についても抜本的な変更を迫っています。従来のような景気刺激策やマネーの高利回りの運用を手助けする野蛮な資本主義的政策では人類の生存の危機に対応できません。
ウイルスや気候変動と共存するであろう21世紀は、生存に直結する暮らしのインフラ、医療・衛生・福祉・食料・自然エネルギー・科学と教育などを一層充実する一方で、地球環境や平和を脅かす産業を封じ込める政策が求められています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年4月29日付掲載


リーマンショック後、実体経済を上回り、株式市場に資金が投入される。意図的な株価の引き上げで金融資産が膨れ上がりました。
今回のコロナショック。市場経済だけでなく、実体経済の停滞。人々の暮らしが窮しています。
生業、医療、福祉、教育などに思い切って資金を投入するかどうか。
経済体制の違いを超えて、政府に求められているのではないでしょうか。

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