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日本共産党兵庫県委員会で働いています。

安保改定60年 第二部⑤ 鹿児島 馬毛島「米軍基地化」 買収前から基本設計 ひろがる怒り

2020-03-23 07:48:06 | 平和・憲法・歴史問題について
安保改定60年 第二部⑤ 鹿児島 馬毛島「米軍基地化」 買収前から基本設計 ひろがる怒り

「約160億円で買収合意」。馬毛島(まげしま)(鹿児島県西之表市)への米空母艦載機離着陸訓練(FCLP)移転をめぐり、安倍政権はだまし討ちのように地権者と用地買収で大筋合意しました。住民に爆音被害をもたらす「米軍基地化」に住民・自治体は反発を強めています。

「馬毛島周辺は豊かな漁場で、地元では『宝の島』とよく呼びます。基地のある島ではなく昔のままの島を返してほしい」。小中学校の約9年間を馬毛島で暮らした漁師の日高薫さん(71)は水平線上に見える島影を指さし、声を震わせます。



種子島の海岸から馬毛島を指さす日高薫さん=3月14日、鹿児島県西之表市




馬毛島(西之表市のホームページから)

荒涼とした風景
島では、教科書を風呂敷に包み、はだしで通学しました。両親が開拓した畑や田んぼでは米や麦、サツマイモなどを栽培。学校から帰宅した後に麦踏みの手伝いもしました。「兄弟で磯釣りをしたのが思い出です。ブダイやクロダイがよく釣れたんです」と笑みを浮かべます。
種子島から西方12キロの沖合に浮かぶ馬毛島は、戦後に入植が進められ、最盛期の59年には113世帯528人が暮らしました。しかし、バブル経済に突き進み、銀行による土地買い占めの波に巻き込まれ、80年には無人島に。当時、東京に本社を置く立石建設が「馬毛島開発」を買収し、「タストン・エアポート」に社名を変更。同社は島の99%を保有し、県の許可をとらず伐根など違法開発を進め、滑走路などを建設しました。緑豊かだった島は今、砂漠のような荒涼とした風景が広がっています。
昨年11月に政府は、当初鑑定額の3倍超とされる160億円で買収合意を結んだと発表。同年12月に訓練計画を発表し、今年1月から施設整備の検討に必要な調査を実施しています。西之表市は、買収価格の根拠や違法開発された土地を国が買収する問題について質問書を提出しましたが、防衛省はゼロ回答。同省は飛行場などの関連施設工事を2022年度に着手し、25年度からFCLPの運用を可能とする方針を固めたと報じられています。(「読売」19年12月30日付)



タストン社が建設した滑走路(2019年1月30日撮影=提供写真)

防衛相に抗議文
さらに日本共産党の田村貴昭議員の質問(2月18日、衆院予算委員会)で、土地の買収前に馬毛島基地の基本設計を委託していたことが発覚しました。同20日、市は河野太郎防衛相に抗議文を提出。地元に「現時点で移転候補地」と説明しながら設計作業を行、ったことに対し、「甚だ遺憾だ」と抗議。馬毛島を担当する市職員も「設計は整備ありきの話だ。ありえない」と不満を漏らします。
現地では観光業などへの影響を心配する声も上がっています。西之表市で民宿を営む70代の女性は「お客は『癒やし』を求めて種子島に来ます。ダイビングやカヤックを楽しむお客の上を米軍機が飛べば、『また行きたい』と思うでしょうか」と声を落としました。


「米軍訓練 年20日」根拠なし 馬毛島基地建設 米軍制御できぬ日本政府
FCLPは空母の出港直前、艦載機が地上の滑走路を空母の甲板に見立てて、離着陸(タッチ・アンド・ゴー)を繰り返す訓練です。1973年10月の横須賀基地(神奈川県)への米空母配備に伴い、米海軍厚木基地(神奈川県)などで行われていましたが、住宅地の真上を深夜まで飛行し、爆音被害が深刻化。住民の中止を求める声が高まり、89年に厚木から約1200キロ離れた硫黄島(東京都)でFCLPを「暫定的」に行うことで日米が合意しました。
2006年5月の米軍再編ロードマップで、空母艦載機部隊を厚木から岩国基地(山口県)に移転することで合意し、18年3月に移転。岩国から硫黄島までの距離が約1400キロに伸びたことから、防衛省は「パイロットの安全性向上」を理由に、馬毛島への移転を進めました。しかし、太平洋上に浮かぶ硫黄島とは異なり、馬毛島と住民が暮らす種子島とは12キロしか離れていません。米軍最優先で住民に犠牲を強いるものです。





爆音をたてて厚木基地で離看陸を繰り返す米海軍FA18戦闘攻撃機=2007年5月14日午後6時50分、神奈川県大和市

「予定ない」
防衛省は馬毛島の基地について「自衛隊馬毛島基地(仮称)」だと説明。西之表市に提出した説明資料には、▽F35ステルス戦闘機などの「機動展開訓練」▽空てい降下訓練▽C130輸送機などの「不整地着陸訓練」▽輸送機による「物料投下訓練」―など、自衛隊による大規模訓練が想定されています。「大半の時期を自衛隊が使用」し、米軍の使用は年間20日程度としています。
しかし、「FCLPを年20日間程度に制限する取り決めを米軍と交わすのか」との本紙の質問に対し、防衛省は「取り決めを行う予定はない」と回答。年20日間に限定される根拠はありません。
そもそも馬毛島が候補地となった発端は、島の大半を所有する開発会社が同島を国に売り込んだことです。防衛省の資料には「アジア太平洋地域における米空母の活動を確保し、日米同盟の抑止力・対処力を維持・強化」するために自衛隊施設が必要だと明記。馬毛島以外にFCLP移転先が見つからず、「自衛隊基地」としての機能は後付けしたのが真相といえます。



種子島空港の滑走路と同じ方向で米軍が訓練した場合の飛行航路(中種子町作成資料)

地位協定で
防衛省は民主党政権時代の11年にFCLPの飛行ルートを示しました。想定ルートは滑走路を北北西の向きに設定し、飛行経路や70デシベル以上の騒音が種子島に及ばないと説明しました。しかし、種子島周辺の風向きは、冬場に北西から強い季節風が吹くため、現在の種子島空港の滑走路も北西を向いています。馬毛島で滑走路を北西方向に設定すると西之表市や中種子町に飛行ルートが重なるため(図)、「住民を欺くために意図的にルートをずらした」と批判を浴びました。
昨年12月の防衛省資料ではルートすら示さず、「可能な限り種子島及び屋久島の上空を飛行しない」などと説明。事実上、種子島の上空を米軍機が飛行する可能性を認めています。
「防衛省は“基地負担は少ない”と住民が誤解するように情報を開示している」と市議会の馬毛島対策特別委員長で無所属の長野広美市議は指摘します。「説明資料には、米軍の行動を日本政府が制御できないという日米地位協定の問題が一切書かれていない。無責任な説明で地元軽視だ」と語気を強めます。元西之表市議会議長の榎元一已さんも「米軍の訓練は際限なく広がり、自由勝手に種子島の空を飛ぶだろう。それが日米地位協定の実態だ」と述べます。



商店街で掲げられた、馬毛島へのFCLP移設反対を訴える看板=3月14日、鹿児島県西之表市

絶対止める
防衛省は基地交付金などの“アメ”をちらつかせて、住民に分断を持ち込んでいます。基地賛成派の宣伝車が市内を走り、「国に貢献することで、人口減少や借金まみれの市に子どもや孫が暮らし続けるためのチャンスをいただいた」と連呼します。榎元さんは指摘します。「基地交付金というおこぼれをもらっても島に未来はない。住民自らの力で島を発展させるべきだ。市長も含め基地反対の意思を明確に示す時です」
「馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会」はFCLP反対の署名を約20日間で1000人以上集めました。西之表市の人口の過半数約8000人を目指しています。三宅公人会長は「かつてFCLP候補地だった三宅島(東京都)や広島の大黒神島でも住民の反対で移転を阻止した。今度も絶対にとめる。7月の鹿児島県知事選を『FCLPノー』と国に言える県政を問う選挙にしたい」と意気込みます。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年3月22日付掲載


陸上空母離着陸訓練は、今まで夜間に行われるNLPが問題視されてきた。今は、夜も昼間も関係なしに行うのでFCLPという。
住民の根強い反対運動によって、硫黄島で行われるようになったが、空母艦載機が厚木から岩国に移転にともなって、鹿児島県の馬毛島でのFCLPが狙われている。
種子島からわずか12キロの距離での訓練は許されない。

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