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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

AI規制 EU案の光と影④ 個人情報保護法強化を

2021-05-17 07:24:22 | 経済・産業・中小企業対策など
AI規制 EU案の光と影④ 個人情報保護法強化を
情報産業研究者 高野嘉史さんに聞く

欧州連合(EU)欧州委員会の人工知能(AI)規制案をみると、本規制案は有用であり、日本でも人権を守る厳格な仕組みとして早期の導入を図る必要があると考えられます。他方で、日本での導入を検討するに当たっては、EU規制案の影の部分も見過ごすことはできません。



EUのAI規制について説明するマルグレーテ・ベスタガー欧州委員会副委員長(左)とティエリー・ブルトン欧州委員=4月21日、ブリュッセル(ロイター)

乱用の可能性
第1に、顔認証などの生体認証技術は、公共空間における警察などによる法執行目的での利用は「原則禁止」されますが、原則としてというところが問題です。「特定かつ実質的な緊急の人命に対する脅威、またはテロリストによる攻撃への対処」、「犯罪者、犯罪容疑者の発見、現在地の把握、同定、または起訴」のためには、有効な法的根拠と適切な監督の下で例外的に使用が認められることになっています。具体的な運用次第では大変危険なものになります。
新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、私権を制限して個人の行動追跡を可能にしようとする動きまである現状では、警戒が必要です。いったん拡大した利用方法は乱用される可能性があります。中立の第三者機関による監視が重要です。
第2に、教育・職業訓練の分野、採用や業績管理などの労働者管理の分野、公的な分野へのAIシステムの導入では基本的な人権の侵害が危惧されます。いくら利用者に対する透明性の確保と情報の提供が義務づけられても、求職者、労働者や生活保護の申請者は弱い立場に置かれます。同調圧力の働く日本社会では企業・自治体などの説明を一方的に受け入れざるを得ないケースが多いのではないでしょうか。AIシステムを適用される側の弱者を保護する仕組みが不可欠です。
第3に、移民・難民・国境管理のためのAIシステムの使用にも問題があります。日本では出入国管理における人権侵害事例がしばしば表面化しており、慎重な取り扱いが求められます。
第4に、革新的なAIシステムの開発を促進するために、規制のサンドボックス(実証制度)を設け、AIシステムの試験、実証的な評価を行うことができるとしています。これ自体は必要なことだと考えられますが、日本では「生産性向上特別規制法」のように規制のサンドボックスがさまざまな分野の規制を実質的に骨抜きにするために使われることがあります。骨抜きが行われないよう、規制のサンドボックスの適用には第三者機関による承認制度など監視の仕組みを入れることが必要です。
第5に、EUの競争力強化の下心がみえることです。規制導入の目的の一つにもAIへの投資と技術革新を促進し、EU統合市場を発展させることがうたわれています。EU各国の企業がいち早く規制案に対応する一方、規制への対応が遅れる日本企業が競争上不利になることも考えられます。経営資源の貧弱な中小企業が実質的にEU市場から締め出されることにもなりかねません。AIの分野では新興企業の事業展開も重要です。中小企業に対する政府の支援が求められます。
EU域外からEU向けにAI製品・サービスを提供する企業は、EU域内に文書で委任した権限を持つ代理人の任命を義務づけられていることも注目されます。この手続きが日本企業にとって過重な負担とならないような配慮が求められます。

制度化早急に
極めて重要なのは個人情報保護法の強化です。日本の個人情報保護法には、機械のみによるプロファイリングの禁止や「忘れられる権利」など、EUにあるような規定がありません。AIの利用拡大に伴って個人情報の取り扱いが増大することは目にみえており、個人情報保護法の改正による保護の強化が不可欠です。
日本でも、EUの規制案の影の部分にも着目したAIシステム規制を早急に制度化することが求められます。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年5月15日付掲載


顔認証などの生体認証技術は、公共空間における警察などによる法執行目的での利用は「原則禁止」されますが、原則としてというところが問題。「特定かつ実質的な緊急の人命に対する脅威、またはテロリストによる攻撃への対処」、「犯罪者、犯罪容疑者の発見、現在地の把握、同定、または起訴」のためには、有効な法的根拠と適切な監督の下で例外的に使用が認められることに。
極めて重要なのは個人情報保護法の強化です。日本の個人情報保護法には、機械のみによるプロファイリングの禁止や「忘れられる権利」など、EUにあるような規定がない。
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