練習問題 地域社会圏住宅での戸別訪問 有段者の解答例
一 表現の自由の制約の主張
戸別訪問とは、選挙運動のために人の住居・店舗(戸)などを
連続して(別)、訪問する事を言う。
これは、投票を促す情報を伝達する行為であり、
表現の自由(21条1項)として保護される行為である。
表現の自由は、民主的政治過程を維持し、人々がそれぞれに持つ価値を
実現するために極めて重要な権利である。
さらに、選挙運動の規制は、表現内容に着目した規制であり、
こうした規制は、偏見に基づき行使されやすい。
よって、本件規制は、目的が重要で、また、
その目的の達成に役立ち、かつ、同程度に実現し得るより制限的でない手段がない限り許されない。
二 法令違憲の審査
①戸別訪問規制に関する違憲審査基準
これを戸別訪問の規制についてみると、
規制の目的は、
贈収賄を防止すること、
訪問を受ける者の生活の平穏を維持すること、
選挙運動が煩瑣となり経済力から生じる候補者間の不公平を防止すること、
という三点だと解されており、判例もそのように理解している。
これらの目的自体は、重要なものと言えよう。
②原告の立場からのあてはめ
過去の判例は、戸別訪問の禁止は、
これらの目的達成のために関連性があり、必要でもあるため合憲とする。
しかし、
各国民は、公職の選挙にあたり合理的で構成な判断をすることがでいる理性的主体であり
(だからこそ選挙権を付与されている)、
戸別訪問を放任すれば贈収賄が蔓延するとの事実はない。
また、セールス・布教活動など選挙運動以外の戸別訪問は日常的に行われており、
選挙運動としての戸別訪問を許容したところで、
ことさらに生活の平穏が害されることはない。
さらに、経済力の不公平の防止は、選挙運動に利用できる資金の総額を規制すれば足り、
第三の目的については、明らかにより制限的でない手段がある。
三 適用違憲の審査
③二に述べたように、
経済力の不公平の防止は、選挙運動に利用できる資金の総額を規制すれば足り、
この目的から規制を正当化することの不当性は明らかである。
また、戸別訪問の規制が、第一・第二の目的達成に役立ち、
公選法138条自体が違憲でないとしても、
Yの行為を罰することは、憲法に反する。
まず、アカツキ住宅は、外部に対して開放度が高い設計になっており、
共有ラウンジでは、他の住民の視線もあるため、
ここで贈収賄の相談・金銭授受を行うことは非常に困難である。
また、アカツキ住宅の共用部では、
日常的に、外部の者を含め、人々の交流が行われているのであり
選挙運動としての訪問を許容することによる
生活の平穏の侵害の程度は、通常の住宅と比べて、格段に低く無視できる。
よって、アカツキ住宅のような開放性のたかい共用スペースがある場合に、
その場所を連続して訪問する行為を処罰することは、違憲である。
四 無罪の主張
④このように、そもそも公選法138条は、それ自体違憲無効である。
⑤また、仮に、公選法138条が合憲だとしても、
本件Yのような開放性の高い共用スペースを訪問することは処罰すべきではなく、
公選法138条は、本件に適用される限りで違憲である。
まあ、だいたいこんな感じの解答例になるでしょうか。
司法試験クラブ24のレーティング2300の
槇真紀さん(古都大学京都ロースクール既習2年、
得意戦法=ゴキゲン行政裁量、一日損訴因変更)
の解答例です。
*「原告・被告人の主張を組み立てよ
→反論想定しつつ私見を述べよ」という新司法試験型の問題形式ですが、
最後に私見を書いて、請求を認容・棄却、被告人を有罪・無罪にする以上、
原告ないし被告の立場と私見がかぶっちゃうよ、
と思われる方、多いのではないでしょうか。
これは、私なりのこの出題形式の理解ですが、
原告・被告の主張反論ということを素直に読むと
ここはかなり強く判例を意識して議論を組み立てろ、ということになります。
実務家になって訴訟当事者の代理人をする場合、
判例は、ほとんど動かし難い壁です。
そこで、優秀な実務家は、
自分に有利な過去の判例を引きつけ、
不利な判例は射程を切り、と言う作業をします。
司法試験の現場で、そんなことをするのはなかなか大変ですが、
原告の主張のときには、とにかく判例を意識してみてください。
そういう意味で、槇さんの答案は、戸別訪問の判例で挙げられた理由を
良く意識できていると思います。
そして判例から比較的自由に私見を述べるのが問2という割り振りを
想定しているのではないか、というのが、私の理解です。
ご参考までに。
さて、前回のコメント欄に寄せられた各氏の回答についてです。
>しがない大学生さんの回答ですが、
概ね良いと思いますが、①や③の部分と処分審査の関係がよく分かりません。
しかし、戸別訪問禁止の目的を抽出し、それとの関連で論証ができていて
かなりしっかりした形になっています。
山本先生、もちろん集合住宅も多数設計してます。
(二段格)
>七氏さま
「うんたらかんたら」、と誤魔化してしまって、
アカツキ住宅への訪問であるという点が、
判例の言っている規制目的の認定を前提にすると
被告人に有利になる、という構造が把握できていません。
判例がどういう目的を認定しているのか、今一度把握してください。
ところでそういうことでしたら3月に三田でお会いいたしましょう!
(4級)
>YSさま
法令審査までは、目的をしっかり認定してそれとの関係で審査ができていますが、
処分審査で、アカツキ住宅の特性を生かし切れていないように思いました。
また、法令審査のところで認定した目的が、処分審査のところで
どう処理されているか、よく分からなかった点があります。
(初段格)
さて、槇さんの解答例ですが、この②の箇所
いったいなにをやっているのでしょう?
「戸別訪問」の審査をしているので、まるで、
戸別訪問全般の審査をしているように見えます。
しかし、三でアカツキ住宅の審査をしていることからも明らかなように、
ここでは戸別訪問の全てではなく、一般的な態様の戸別訪問の審査をしているわけですね。
皆さんもこの答案の二の箇所を読むとき、
グレーグリーン(いわゆる団地緑)の扉が並ぶ「地元の団地」の中を
あるいはハウスメーカー各社が立てた戸建の並ぶ「閑静な住宅街」の中を
運動員の方がつぎつぎにピンポンしていく姿を
無意識に想像しながら読まれたのではないでしょうか?
(もし、ドラゴンリリーさんの家のような家が並ぶ地域を連続訪問している所を
想像されたとしたら、その人はかなりのツワモノです。
司法研修所よりも、Y-GSAに進学することをお勧めします。)
さて、みなさんが無意識に想像してしまった
「戸別訪問の絵」こそ、典型的適用例、ないし最も違憲の疑いの弱い適用例です。
こう考えてみると、私の言っていることって、
抽象的には聞きなれないけど、日常的に見聞きしているものだという気がしてきたのではないでしょうか。
さて、それに続く③のところが問題です。
適用違憲の主張って、こんな感じでしょ、という点に異論のある方はおりますか?
大丈夫ですか?大丈夫ですね。
ここでは、アカツキ住宅という色々な意味でヤバい住宅の特殊事情が主張されています。
これは、アカツキ住宅の訪問というのが、皆さんが②の部分を読みながら無意識に想像していた
「地元の団地の連続訪問」「閑静な住宅街の連続訪問」とは全然違う要素を
いろいろ含んでいるからです。
(ちなみに、仮に事案が、地元の団地の連続訪問だったら、
②だけで議論は終わりですね。
これ、法令の全体審査(法令審査A)をしているようですが、
実は、アカツキ住宅のような住宅の訪問考えてないから
一種の処分審査・適用審査なのです。)
これが、典型的適用例とは区別された、処分審査の中で主張しなければならない
「原告固有の事情」なのです。
さて、ここで話は、一般用語に戻ります。
法令審査では立法事実、処分審査では司法事実。
良く効く言葉です。
ところで、③では
「開放性のたかい住宅の共用ラウンジでは、贈収賄の相談は極めて困難だ」
という事実の存在が主張されています。
本日の問題は、ココです。
WLS3年様が、立法事実の定義、挙げてくれました。
「立法目的および立法目的を達成する手段(規制手段)の合理性を裏づけ支える社会的・経済的・文化的な一般事実」
もう少し短く言うと
「法令の合憲性を支える事実」のことです。
対する司法事実は、『誰が,何を,いつ,どこで,いかに行ったか』という,当該事件に関する事実」ですね。
課題1
さて、この③で主張していることは、こういう意味での立法事実でしょうか?
それとも、司法事実でしょうか?(5分で2級)
課題2
も一つ問題です。槇答案の「三 適用審査」では、
目的手段審査をしていないようにも見えますが、これはなぜでしょう?
一 表現の自由の制約の主張
戸別訪問とは、選挙運動のために人の住居・店舗(戸)などを
連続して(別)、訪問する事を言う。
これは、投票を促す情報を伝達する行為であり、
表現の自由(21条1項)として保護される行為である。
表現の自由は、民主的政治過程を維持し、人々がそれぞれに持つ価値を
実現するために極めて重要な権利である。
さらに、選挙運動の規制は、表現内容に着目した規制であり、
こうした規制は、偏見に基づき行使されやすい。
よって、本件規制は、目的が重要で、また、
その目的の達成に役立ち、かつ、同程度に実現し得るより制限的でない手段がない限り許されない。
二 法令違憲の審査
①戸別訪問規制に関する違憲審査基準
これを戸別訪問の規制についてみると、
規制の目的は、
贈収賄を防止すること、
訪問を受ける者の生活の平穏を維持すること、
選挙運動が煩瑣となり経済力から生じる候補者間の不公平を防止すること、
という三点だと解されており、判例もそのように理解している。
これらの目的自体は、重要なものと言えよう。
②原告の立場からのあてはめ
過去の判例は、戸別訪問の禁止は、
これらの目的達成のために関連性があり、必要でもあるため合憲とする。
しかし、
各国民は、公職の選挙にあたり合理的で構成な判断をすることがでいる理性的主体であり
(だからこそ選挙権を付与されている)、
戸別訪問を放任すれば贈収賄が蔓延するとの事実はない。
また、セールス・布教活動など選挙運動以外の戸別訪問は日常的に行われており、
選挙運動としての戸別訪問を許容したところで、
ことさらに生活の平穏が害されることはない。
さらに、経済力の不公平の防止は、選挙運動に利用できる資金の総額を規制すれば足り、
第三の目的については、明らかにより制限的でない手段がある。
三 適用違憲の審査
③二に述べたように、
経済力の不公平の防止は、選挙運動に利用できる資金の総額を規制すれば足り、
この目的から規制を正当化することの不当性は明らかである。
また、戸別訪問の規制が、第一・第二の目的達成に役立ち、
公選法138条自体が違憲でないとしても、
Yの行為を罰することは、憲法に反する。
まず、アカツキ住宅は、外部に対して開放度が高い設計になっており、
共有ラウンジでは、他の住民の視線もあるため、
ここで贈収賄の相談・金銭授受を行うことは非常に困難である。
また、アカツキ住宅の共用部では、
日常的に、外部の者を含め、人々の交流が行われているのであり
選挙運動としての訪問を許容することによる
生活の平穏の侵害の程度は、通常の住宅と比べて、格段に低く無視できる。
よって、アカツキ住宅のような開放性のたかい共用スペースがある場合に、
その場所を連続して訪問する行為を処罰することは、違憲である。
四 無罪の主張
④このように、そもそも公選法138条は、それ自体違憲無効である。
⑤また、仮に、公選法138条が合憲だとしても、
本件Yのような開放性の高い共用スペースを訪問することは処罰すべきではなく、
公選法138条は、本件に適用される限りで違憲である。
まあ、だいたいこんな感じの解答例になるでしょうか。
司法試験クラブ24のレーティング2300の
槇真紀さん(古都大学京都ロースクール既習2年、
得意戦法=ゴキゲン行政裁量、一日損訴因変更)
の解答例です。
*「原告・被告人の主張を組み立てよ
→反論想定しつつ私見を述べよ」という新司法試験型の問題形式ですが、
最後に私見を書いて、請求を認容・棄却、被告人を有罪・無罪にする以上、
原告ないし被告の立場と私見がかぶっちゃうよ、
と思われる方、多いのではないでしょうか。
これは、私なりのこの出題形式の理解ですが、
原告・被告の主張反論ということを素直に読むと
ここはかなり強く判例を意識して議論を組み立てろ、ということになります。
実務家になって訴訟当事者の代理人をする場合、
判例は、ほとんど動かし難い壁です。
そこで、優秀な実務家は、
自分に有利な過去の判例を引きつけ、
不利な判例は射程を切り、と言う作業をします。
司法試験の現場で、そんなことをするのはなかなか大変ですが、
原告の主張のときには、とにかく判例を意識してみてください。
そういう意味で、槇さんの答案は、戸別訪問の判例で挙げられた理由を
良く意識できていると思います。
そして判例から比較的自由に私見を述べるのが問2という割り振りを
想定しているのではないか、というのが、私の理解です。
ご参考までに。
さて、前回のコメント欄に寄せられた各氏の回答についてです。
>しがない大学生さんの回答ですが、
概ね良いと思いますが、①や③の部分と処分審査の関係がよく分かりません。
しかし、戸別訪問禁止の目的を抽出し、それとの関連で論証ができていて
かなりしっかりした形になっています。
山本先生、もちろん集合住宅も多数設計してます。
(二段格)
>七氏さま
「うんたらかんたら」、と誤魔化してしまって、
アカツキ住宅への訪問であるという点が、
判例の言っている規制目的の認定を前提にすると
被告人に有利になる、という構造が把握できていません。
判例がどういう目的を認定しているのか、今一度把握してください。
ところでそういうことでしたら3月に三田でお会いいたしましょう!
(4級)
>YSさま
法令審査までは、目的をしっかり認定してそれとの関係で審査ができていますが、
処分審査で、アカツキ住宅の特性を生かし切れていないように思いました。
また、法令審査のところで認定した目的が、処分審査のところで
どう処理されているか、よく分からなかった点があります。
(初段格)
さて、槇さんの解答例ですが、この②の箇所
いったいなにをやっているのでしょう?
「戸別訪問」の審査をしているので、まるで、
戸別訪問全般の審査をしているように見えます。
しかし、三でアカツキ住宅の審査をしていることからも明らかなように、
ここでは戸別訪問の全てではなく、一般的な態様の戸別訪問の審査をしているわけですね。
皆さんもこの答案の二の箇所を読むとき、
グレーグリーン(いわゆる団地緑)の扉が並ぶ「地元の団地」の中を
あるいはハウスメーカー各社が立てた戸建の並ぶ「閑静な住宅街」の中を
運動員の方がつぎつぎにピンポンしていく姿を
無意識に想像しながら読まれたのではないでしょうか?
(もし、ドラゴンリリーさんの家のような家が並ぶ地域を連続訪問している所を
想像されたとしたら、その人はかなりのツワモノです。
司法研修所よりも、Y-GSAに進学することをお勧めします。)
さて、みなさんが無意識に想像してしまった
「戸別訪問の絵」こそ、典型的適用例、ないし最も違憲の疑いの弱い適用例です。
こう考えてみると、私の言っていることって、
抽象的には聞きなれないけど、日常的に見聞きしているものだという気がしてきたのではないでしょうか。
さて、それに続く③のところが問題です。
適用違憲の主張って、こんな感じでしょ、という点に異論のある方はおりますか?
大丈夫ですか?大丈夫ですね。
ここでは、アカツキ住宅という色々な意味でヤバい住宅の特殊事情が主張されています。
これは、アカツキ住宅の訪問というのが、皆さんが②の部分を読みながら無意識に想像していた
「地元の団地の連続訪問」「閑静な住宅街の連続訪問」とは全然違う要素を
いろいろ含んでいるからです。
(ちなみに、仮に事案が、地元の団地の連続訪問だったら、
②だけで議論は終わりですね。
これ、法令の全体審査(法令審査A)をしているようですが、
実は、アカツキ住宅のような住宅の訪問考えてないから
一種の処分審査・適用審査なのです。)
これが、典型的適用例とは区別された、処分審査の中で主張しなければならない
「原告固有の事情」なのです。
さて、ここで話は、一般用語に戻ります。
法令審査では立法事実、処分審査では司法事実。
良く効く言葉です。
ところで、③では
「開放性のたかい住宅の共用ラウンジでは、贈収賄の相談は極めて困難だ」
という事実の存在が主張されています。
本日の問題は、ココです。
WLS3年様が、立法事実の定義、挙げてくれました。
「立法目的および立法目的を達成する手段(規制手段)の合理性を裏づけ支える社会的・経済的・文化的な一般事実」
もう少し短く言うと
「法令の合憲性を支える事実」のことです。
対する司法事実は、『誰が,何を,いつ,どこで,いかに行ったか』という,当該事件に関する事実」ですね。
課題1
さて、この③で主張していることは、こういう意味での立法事実でしょうか?
それとも、司法事実でしょうか?(5分で2級)
課題2
も一つ問題です。槇答案の「三 適用審査」では、
目的手段審査をしていないようにも見えますが、これはなぜでしょう?
立法目的の一つに贈収賄の防止があるだから、贈収賄の相談ができる場合を立法事実と想定しているはずなので、
③の主張は司法事実です。
課題2
法令の合憲性を支える事実の全部またはほとんどが否定される場合だから、
法令の合憲性を支える理由も全部またはほとんどがないのであり、
目的手段審査をするまでもなく違憲性が明らかだからでしょうか。
③は、法令を当該事案に適用する限りにおける合憲判断をしています。
このような場合は、法令の要件該当性を判断しているのではありません。
そして、法令の合憲性を判断するために参照されるのは、立法事実です。
課題2
目的手段審査では、法令の規制目的及び目的を達成するための手段を検討します。
この答案例では、まず一般的に目的1,2によって戸別訪問を禁止することが、
合憲であると仮定しています。
そのうえで、当該事案においてもその目的及び手段で規制することが
妥当するのか否かを審査しています。
すなわち、一般的な場合に合憲である法令の立法目的及び手段にあてはめることで、
実質的に目的手段審査をしている。
よって、目的手段審査がなされていないように見えるのは上記の理由によるのではないでしょうか。
これから法律の合憲違憲を確定しようとする状況にありますから、そこで参照されている事情は立法事実ということになるかと思います。
2つ目は、明示していないだけで必要性、関連性の審査をしていると思います。
つまり法文審査のところだと、必要性関連性を、一般的な事情を参照しながら検討していて、
処分審査のところでは、原告固有の事情を参照したら、法文審査で参照したような一般的論はあてはまらない、つまり原告に適用されたような事例の場合は必要性、関連性はない、ということを検討しているだけだと思います。
「(アカツキ住宅という)開放性のたかい住宅の共用ラウンジでは、贈収賄の相談は極めて困難だ」というように、括弧内の事実を補う限りにおいては、明らかに本件に特有の事情であり、Yが個別訪問を行ったという事例に関する事実ですので、司法事実だと思います。
もっとも、公選法138条の立法段階で、「(一般的な)開放性の高い住宅の共用ラウンジにおける贈収賄の可能性」についても検討を加えた上で立法を行ったと考えられるのであれば、立法事実ということになるのでしょうか。
とはいえ、ここでは、そのような例は立法段階で想定している典型例の範疇から外れるという前提で論が進められているので、「アカツキ住宅という」の括弧書きを補充しなくとも、③の文章を司法事実と考えてよいのだろうと思います。
課題2
ここまでの話をまとめると、
法令審査A=
法令審査B(典型例の適用)+処分審査B(本事例への適用)+処分審査B(別の事例への適用)+処分審査B(さらに別の事例への適用)+・・・(こうして、あらゆる事例への適用について審査する)
というイメージですが、合っていますでしょうか?
で、この記事で行っていることは、法令審査B(典型例への適用)+処分審査B(本事例への適用)ということですが、両者とも目的手段審査を行っていることに変わりはないように思います。
すなわち、まず立法目的が重要であることは、事例によって変わることではないので、法令審査Bにおいて「目的は重要」と言ってしまった手前、処分審査B(本事例への適用違憲の主張)においても、これを前提とせざるをえないのだと思います。
次に、目的と手段との関連性については、典型例に適用する場合にはあるとしても、本事例に適用する場合にはないのだ、と主張していることになるのだろうと思います。
目的手段審査を行っていないように見えるのだとすれば、それは、単に本件特有の事情(司法事実)を挙げた結果、「(法令審査Bによっては)合憲の法律であっても、本件に適用するのは違憲だ」という結論を直ちに導く文章になっているからでしょうか。
気をつけます。
課題1
③で主張していることは,立法事実(の不存在)だと考えました。
(厳密ではないですが)「集合住宅の開放性の高い共用スペースを当選目的で訪問した者は,禁錮または罰金に処する」という法命題につき,合憲性を支える事実のないことを指摘する内容だからです。
課題2
①で述べた規制目的の重要性を前提として,規制手段の関連性・必要性だけを問題にしているからだと思います。
槇さんの答案は,a)贈収賄の相談・金銭授受の非常に困難な場所への訪問を禁止しても,贈収賄の防止にはほぼ役立たないこと,b)生活の平穏の侵害が無視できる程度の場所への訪問を禁止しても,訪問を受ける者の生活の平穏維持にはほぼ役立たないことを主張していると受け取りました。
処分審査の部分は法文全体は違憲でないことを前提とするので、どういう理由で法文全体は違憲でないのか(どの目的との関係で手段の関連性、必要性が認められるのか)を明示しておかないと、処分審査があいまいになってしまいますね。
以後、気をつけます!
さて、本日の課題ですが
(木村先生のゼミに参加しているみたいで楽しいです笑)
課題1
処分審査においても、検討されているのは法令の1部分の合憲性なので、③で主張されているのは立法事実(立法事実が認められないという主張)だと思います。
課題2
確かに目的手段審査をしてないようにも読めますが、
第1、第2の目的との関係で、「アカツキ住宅のような開放性のたかい共用スペースがある場合に、その場所を連続して訪問する行為」を規制することが関連性を有しているかを検討しているので、実質的には目的手段審査をしているのと同じだと思います。
なので、目的手段審査をしていないように「見える」理由は、「目的が重要で、~な手段でない限り違憲」というような規範を明示していないからだと考えました。
③の主張は、法令の一部分(開放的な集合住宅における戸別訪問を罰する)
の合憲性を支える事実は存在しないとの主張です。
したがって、立法事実の不存在の主張であると思います。
課題2
三でおこなっていることは、開放的な集合住宅における戸別訪問の場合は、
贈収賄の危険が相当に低いこと(抽象的危険)・住居の平穏を保護すべき必要性が低いことを指摘し、
そもそも目的の重要性が認められないことを主張しています。
すなわち、典型的適用例においては、重要な目的が認定できるとしても、
開放的な集合住宅における戸別訪問の場合は、
選挙運動の自由と比較し、たいした公益じゃないよねと主張しているのです。
したがって、三では目的審査のみをおこなっていると思います。
立法事実だと思います。
「開放性のたかい住宅の共用ラウンジでは、贈収賄の相談はきわめて困難だ」との事実の主張は、
法令(アカツキ住宅のような場所での戸別訪問を禁止する法命題)の合憲性を支える事実の不存在を主張するものだからです。
課題2
違憲審査基準を明示していないからではないでしょうか。
明示がなくとも、
目的の正当性は第一段落で検討していることは分かります。
手段審査がなされていないようにみえるのは、第一段落で正当性を否定した以上、目的との関連性、規制の必要性が認められるわけもないからです。
相当性を検討するために、手段審査をクリアすると仮定しているのが第二段落です。
相当性は、第三、第四段落で検討されていると思います。
ここで解答を締め切らせて頂きます。
課題2は、多くの人の方向が一致していますが。
課題1については、立法事実説・司法事実説が分かれています。
ここのところまとめて書いたブログ記事原稿が
尽きてしまいましたので、記事になるのは少し先になりそうですが、
(5)でコメントさせて頂きます。
毎日、帰ってきたら、先生のブログを読んで、判例や基本書を読み直すのを日課にしている学生です。今回の問題は解答を書いてみたかったのですが、締め切りになってしまったので書けませんでした。残念です。
今回の記事とは関係ないので恐縮なのですが、質問をさせてください。お時間があるときでかまいませんので、よろしくお願いいたします。
質問は、岐阜県青少年育成条例事件についてです。
①この判決では、青少年の知る権利、成人の知る権利との関係が判決で述べられており、伊藤補足意見でも青少年の知る権利との関係が厚く述べられていました。しかし、なぜ制約を被った事業者本人の自由との関係がまず問題になっていないのでしょうか。
②また、仮に知る権利との関係だとすると、原告については第三者の主張適格が問題になってくるのでしょうか?
③最後に、知る権利の性質についてです。知る権利には、自由権的性質と請求権的性質があるとよく基本書に書いてあります。しかし、請求権の自由権的側面の区別がよくわからず、岐阜県育成条例事件でも一体どちらの性質の問題なのかわかりません。
以上三点が質問内容です。
話の流れを遮断するようで誠に申し訳ないと思ったのですが、友人と話をしても答えが出なかったので、質問させていただきました。