KIMISTEVA@DEEP

新たな「現実」を構成するサブカルチャー研究者kimistevaのブログ

果てしなく透明な僕:千原ジュニア『14歳』

2007-02-07 17:36:56 | 
先日、池袋のジュンク堂で待ち合わせをした。

二人で、エスカレーターで1階に降り、そのまま外に出ようとしたとき、
あまりにも大きなスペースに一面、淡い赤い色が映り、そこに

千原ジュニア『14歳』

…と書かれていて、一瞬、時がとまってしまった。

「どうしたの?」と聞かれ、
「ううん。なんでもない」といつものように答える。
そして、そのまま外に出る。


わたしにとって、千原ジュニアはそういう存在の人なのだ。
わたしが人知れず、心の中で大切に大切にしている価値をそのまま持っていた人。
でも、きっと今は違う。
違う……とわたしは思ってる。
少なくとも、今、多くの人たちが見ている「千原ジュニア」は、わたしが大切にしている千原ジュニアではないのだ。


千原ジュニア『14歳』は、14歳のときの自分をモデルにした自伝小説だそうだ。

「自伝小説」というスタイルを彼がとったこと。
それは、彼なりに過去を「フィクション」としてしまいこんでしまいたいということなのだろうか。
もう、これからは今の「千原ジュニア」のまま生きていくつもりなのだろうか?

「トンガッテ」いた、果てしなく透明だったあの頃の自分を封じこめて?


…そんなことを思っていたら、この前、わたしの担当する授業の朗読プレゼンテーションで、ある生徒が『14歳』を朗読してくれた。

その朗読は、とてもとても長くて、
一人あたりの時間は7分までと決まっているのに…それでも皆、5分も話せずに教壇を降りていったりするのに…その子はずっとずっと朗読を続けていた。10分以上は朗読していたと思う。

ジュニアの書いた言葉を、淡々と、朗読しつづける。

彼女は、途中で「アハ。長いかな?飽きちゃったよね?」と朗読をとめて、
聴いている生徒を見た。
すると、前から3列目に座っていた生徒が、

「…ううん。おもしろい。おもしろいよ。もっと聞かせて。」

…と言った。
それを聞いて、彼女は安心して、また続きを朗読しはじめた。
千原ジュニアの言葉を淡々と。

信じられなかった。
こんなこと初めてだった。

千原ジュニアの言葉には不思議な力がある。
その力を、わたしは人生の中で、2度も味わうことになってしまった。

1回は妹の日記。
2回目が今回。

いったい、彼はこれからどうなっていくのだろうか。
わたしは彼の行く末が気になっている。