
詐欺やスリで世間を渡り歩く恋人同士のワン・ポーとワン・リーだが、チベットの高原地帯で二人は仲たがいをし、怒ったワン・リーは車を降りてしまう。そこでワン・リーは、出稼ぎに来ている若者シャーケンと出会う。その後、彼女は列... 続き
中国のお正月娯楽映画も、ずいぶんスタイリッシュになってきたものだ。
大衆はいつも映画に娯楽をまっさきに求めている。
そのことは悪いことでも、悲観することでもない。
特に、「お正月映画」というのは、日本でもそうなのだが、娯楽映画の競作となる。



2005年の中国お正月映画であの「カンフーハッスル」を抑えて、トップになったのが、この「イノセント・ワールド 天下無賊」であった。
監督は、巨匠ではないが、中国では手堅くヒットを連発するフォン・シャオガン。毎年の正月映画の定番監督だそうだ。チャン・ツィイーの最新作「女帝」の公開が控えている。
香港からは、「インファナルアフェア3部作」以降、ますます存在感を増したアンディ・ラウ。
台湾からは、歌手としても名高い実力派女優レネ・リウ。
中国からは、「パープルバタフライ」にも出演していたが、キュートな美人女優リー・ビンビン。
それに、「さらば、我が愛」や「活きる」で、圧倒的な迫力のある演技を披露した怪優グォ・ヨウ。
楽しそうなラインアップだ。

ワン・ポー(アンディ・ラウ)とワン・リー(レネ・リュウ)は永年の詐欺とスリを生業としているコンビ。リーは、こんな暮らしを抜け出そうとポーに懇願するが、聞き入れられず、仲違いする。
大平原に残されたリーを救い、駅まで連れて行ってくれたのは、純朴で人を疑うことを知らない青年シャーケン。
出稼ぎでためた結婚資金6万元を持ったシャーケンを付け狙うことになるのは、乗り込んできたポーと、窃盗集団のリーダーであるフー・リー(グォ・ヨウ)とチームの女スリ師シャオイエ(リー・ビンビン)。ワン・リーは、シャーケンを守ろうとする。
列車の出発からの見所は、列車の中での6万元の争奪戦だ。
スリのプロフェッショナルらしく、そこは派手な殴り合いや銃撃戦になるのではなく、目にもとまらぬ手わざの応酬である。
列車という狭い密室空間の中で、乗客には気づかれないまま、死闘が繰り拡げられる。
ここは、フラメンコ風の音楽とともに、スローモーション撮影を多用した、優美でスタイリッシュな映像である。そのこぜりあいに、居合わせた強盗団や警察もからんで、パニック模様となっていく。
途中駅で、リーは、ポーとの赤ちゃんを身ごもっていることを打ち明け、この赤ちゃんのためにも、まっとうな生き方がしたいという。迷ったポーだが、ついに、リーとシャーケンそしておなかの中の赤ちゃんを守るために、グォ・ヨウとの決戦にのぞむことになる。

それにしても、お正月向け娯楽映画だとしても、とても映像の質は高い。
冒頭、お金持ちから高級車を騙し取った二人は、大平原をぶっとばす。風景がとても美しい。
チベットの高原にある寺院にも訪ねる。リーは、身ごもった赤ちゃんのことであろうか、一心不乱に祈っている。霧につつまれた聖地の撮影も幻惑されるほどの美しさだ。
もちろん、列車だって、旧来の中国大陸の人民が群がり振る落とされるという人民列車なんかより、よほど、おしゃれな仕様である。こんなところにも、中国の最近の好調な経済による豊かさが、実感される。
映画そのものは、悪党が、「絶対善」ともいえる青年と赤ちゃんという未来への希望の中で、改心し、やり直すというお正月映画にふさわしい安心してみていられる作品である。中国数千年の大河ドラマや、香港の奇想天外ムービーもそれはそれでいいのだが、ちょっとヨーロッパ調のおしゃれなクライムアクションの路線も、増えていくんだろうな、という予感がする。

現在、中国では、1日にひとつ映画館が増えているということだ。香港と中国が映画制作の全面提携、上映開放路線を打ち出したのは最近のことだが、それまでは、香港映画も外国(輸入)映画に勘定され、厳しい上映制限が課されていたのだ。
上映館が増えるということは、製作資金の回収にとってはもちろん好材料である。
言葉の壁という問題はついてまわるとしても、アニメだけでなく邦画も、制作資金のファウンデーションや、国際的な上映活動ということを、たぶん、計画の段階から、アジア各国とコラボレーションする必要がますます増えてくるだろう。
監督も役者も脚本ももちろん重要なのだが、これからは製作者の国境を越えた戦略が、問われる時代になってきているのだろう。
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>たぶん、計画の段階から、アジア各国とコラボレーションする必要がますます増えてくるだろう。
この作品は公開前に見たのですが、上映前のトークショーで
もにかる(水田菜穂)さんが、両岸三地合作の初の作品、と言うお話をなさっていました。
アンディ・ラウの作品には合作が多い(墨攻 ラバーズ)のですが、先を見据えた設計ですね。
フォーカスフィルムの活動といい、素晴らしいと思います
(好きじゃないんですが、笑)。
が、一方、香港映画がとんどん香港らしくなくなっていくのは、寂しい限りです。
アンディ・ラウも、いまや歌手・役者というよりアジア有数のプロデューサーという側面もあります。
香港映画も、本土をマーケットにすることで、まだまだ幅が出てくるんじゃないですかね。
失礼しました。
映画がどうのこうのと言うより、とにかくアンディ・ラウを堪能しに行ったのですが、フォン監督の映画も見たことなかったし、・・・・そしたらば、なかなかの出来に息をのみました。
みる前の期待度の低さも、後押しをしたのかもしれませんが、風景と言い、設定と言い、いかにかっこよく撮るかというセンスといい、脱帽しました。
グォ・ヨウも相変わらずいい味出してましたしね。
おまけに、400席の大画面のスクリーンでオンリー1鑑賞だったのですよ!!(どんな映画館だ?)あたしのためだけに上映してもらったという優越感に浸りきってみましたです。
400席でオンリー1ですか。
映画のプロモーションって、ほんとうに難しいんでしょうね。