サーカスな日々

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メタ知識(知っている感覚の奥深さ度80点)

2011年02月22日 | それでも世界は回る

スパコン『Watson』が脳にかなわない理由


WIRED VISION2011年2月21日(月)11:09


Jonah Lehrer



画像は
Wikimedia


米IBM社のスパコン『Watson』が、クイズ番組『Jeopardy!』で人間に勝った(日本語版記事)。このことで、マイクロチップの集積がやがては人間を打ち負かし、コンピューターによる世界支配が始まるというような人々の恐れが、より大きくなることだろう。少なくとも、技術的特異点(シンギュラリティ)は近づいたという感覚は大きくなることだろう。[フューチャリストらは、特異点の後では科学技術の進歩を支配するのは人類ではなく強力な人工知能となり、従って人類の過去の傾向に基づいた変化の予測モデルは通用しなくなると考えている]


人間はこれまでも、最新の技術を、人間の精神というブラックボックスの象徴として理解してきた。いまはコンピューターが人間の神経のようだと考えられているが、その前には電話、さらにその前は電信が、人間の神経のようだと考えられて来た。しかし実際には、人間が作り出してきた技術は、人間それ自体を置き換えるものとはほとんど言えない。自然選択は、はるかに偉大だ。


まずは、エネルギー効率について考えてみよう。人間の脳に関して最も驚くべき事実の1つに、脳が必要とするエネルギーは、電球1個分より少ない(12ワット)というものがある。1兆ものシナプスからなり、イオンや神経伝達物質をやり取りするこの器官は、小さな白熱球より少ないコストで動いているのだ。


それに比べて、[チェス・チャンピオンと闘って1997年に勝った]米IBM社のスパコン『Deep Blue』は、フル稼動すると発火する危険があったため、熱を放散させる専用装置を使って過熱を抑えなければならなかった。Watsonのエネルギー消費については情報を見つけられなかったが、人間の脳よりもはるかに多いことは確実だ。


今回、Watsonが浮き彫りにしたもう1つのことは、メタ知識、すなわち、「自分が何を知っているか」について考える能力だ。数カ月前に『Mind Hacks』の記事でVaughan Bell氏が指摘していたとおり、Watsonの真の革新性はそこにある。



Watsonが質問に答えるためには、質問内容に関してあらかじめ知識を持っている必要があるほかに、計算において、2つの主要なアプローチを採らねばならない。


1つは制約充足と呼ばれるもので、これは数学的に厳密な解が存在しない問題に対して、「最も適した」答えはどれかを見つけるプロセスだ。もう1つは局所探索アルゴリズム。データを際限なく処理できるコンピューターにおいて、「それ以上の探索を行なっても、さらに良い解を得る見込みはない」という限界を示す。すなわち、計算をやめて答えを出すべき時を教えてくれるものだ。


われわれ人間の脳には、あらかじめメタ知識がプログラムされている。われわれは、単に物事を知っているのではない。「物事を知っている」ということ自体を知っているのであり、そのことが、自分は何かを知っているという「感覚」を生み出す。


例えば、人の名前をど忘れてしまったが、本当はそれを覚えていると感じる場合がある。なぜわれわれは、自分は本当は覚えているということを強く確信できるのだろう? 肝心の情報にアクセスできないでいるのに、それでも「知っている」と感じるのはどういう状態なのだろうか。


こうした「知っている感覚」は、誰かの名前の記憶だけには限らない。たとえばグループの中で発言しようと口を開く前には、自分が何を言うかが正確にわかっているわけではないことが多いだろう。文章がどう終わるかはわからないが、話すに値することがあると思って話し始めるわけだ。『Jeopardy!』の出場者たちにしても、問題の答えがはっきりと頭に浮かぶ前に、解答ボタンを押すことができる。彼らの中にあるのはただ、自分は知っているという「感覚」だけ、そしてその感覚さえあれば十分なのだ。


そして、こうした感覚は非常に正確であることが多い。コロンビア大学の心理学者Janet Metcalfe氏は、トリビア問題を使った実験(PDFファイル)において、答えを知っているという感覚を抱くことと、その解答者が実際に答えを知っていた問題との間に高い相関関係が認められたという研究結果を明らかにしている。


それがどんなにすごいことか、ちょっと考えてみてほしい。メタ認知の能力を持つ脳は、ほぼ瞬時のうちに、大脳皮質に詰め込まれたあらゆる事実や誤りや瑣末なことがらについて評価を下すことができる。そしてそれが認識論的な直感(epistemic intuition)となって、われわれに解答ボタンを押すべきかどうかを教えてくれるのだ。


Watsonが優れたマシンであることは間違いないが、今回の勝利から学ぶべきことは、人間の頭に格納されているハードウェアとソフトウェアから学ぶことはさらに多いということだろう。


[「世界の全情報処理能力」は「ヒトの脳」に匹敵するという研究成果についての日本語版記事はこちら]


{この翻訳は抄訳です}

若い頃、所属していた会社で、『AIジャーナル』という人工知能にまつわる雑誌を出版していた。
「第五世代コンピュータ」の旗印にも、翳りが見え始めていた頃だったろうか。
基本は脳論であり、なかなかに面白い議論が戦わされていたことを覚えている。
あの頃の若い論客の多くは、ロボット工学の方に行ったのか、情報工学や生命工学の方に行ったのか。

今回の「Watoson」君対クイズ王の対戦は、なかなかいろんなことを改めて考えさせられた。
特に「技術的特異点」の議論は、なるほどと思わせられる。
もちろんこの「技術的特異点」の着想は、1950年代のノイマンらの議論にすでに現れてはいる。
その後は、僕たちハードSFファンにとっては、それぞれの作家の特異点以降の世界の描写の仕方に、ワクワクさせられたものであり、また大きな虚無やかすかな希望のイメージを繰り返し喚起させられてきた。

もうひとつの「メタ知識」の概念は、これも古くから言われていることだが、人間とは何か、認識とは何か、存在とは何かの根本をめぐる議論だ。
「僕たちはすでに知っている!」
僕の師匠でもあったあるヨガの認識者は、「それは前頭葉にあるのではなく、空間にすでにあるのだ」と強調しておられた。
「会議の前には眠りなさい、そこで答えは整理されている」とも。

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