サーカスな日々

サーカスが好きだ。舞台もそうだが、楽屋裏の真剣な喧騒が好きだ。日常もまたサーカスでありその楽屋裏もまことに興味深い。

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404日目「幸田文展(世田谷文学館)」世田谷区

2013年11月24日 | 姪っ子メグとお出かけ

姪っ子メグ 目黒美術館の「土屋幸夫展」。あたしはこの人のこと、全然知らなかった。
キミオン叔父 ああ、オジサンも。昭和の初期に独立美術展に入選してから、シュールレアリズムを追求、戦後もアヴァンギャルド活動を続け、フランスに渡ってアンフォルメル運動の最先端に触れて抽象絵画に入り、その後も構造主義や記号論なども学んできて、斬新な作品を残している。
時代順に見ていくと、青年時代からこの人がどのように模索してきたかがわかる。基本的に理論的な人だったと思うな。美術家としてはかなり実験的なんだけど、デザイナーとしては製薬会社のパッケージデザインや販促印刷物なんかもやっていて、あたしにはそれが面白い。 デザイナーとしては商業主義も取り込んで、もうひとつ教育者としての側面も今回は強調されていた。昭和32年から武蔵野美術大学で教えていて、若い作家の活動の場所も作って来られたようね。
1950年代後半、彼のデザイン事務所には当時無名だった伊丹十三が所属していた。 伊丹十三はマルチタレントの走りだったけど、商業デザイナーという肩書きも持っていたからね。土屋さんとは親戚関係にあたるみたいだけど。
ここ目黒美術館はさ、デザイナーの仕事の特集にも力を入れているものね。どこかで目黒区で仕事をしたりしてるんだけどさ。ペリアン展、秋岡芳夫展 、川村清雄展なんかもそうだったわよね。
そうだね。 土屋幸夫も、一時期デザイン事務所が学芸大学にあったみたいだ。



世田谷文学館は「幸田文」展。幸田文さんを単独で取り扱う初めての本格的な展覧会みたい。あたし、恥ずかしながら、幸田露伴は名作を数作触れただけなのに、文さんはほとんど読んでいる。そういう意味では娘さんの青木玉さんも、お孫さんの青木奈緒さんも(笑)。
幸田文は明治生まれで、1990年に亡くなっている。でもね、彼女が文章を書き始めるのは露伴が没してから。40歳を過ぎていたかな。露伴の周辺の編集者が、お父さんの思い出でもちょっと書いてみたら・・・と軽く誘ったんだろうね。ところがこれがすごくて周囲はびっくりしたわけだ。『父、その死』が1949年に中央公論から。随筆家として持て囃されたけど、本人はしばらくして断筆宣言をする。で、柳橋の芸者置屋に住み込みで働いて、その経験を基にした長編小説『流れる』で、露伴の娘ということではなく、ひとりの女流作家として認められるんだ。
もうひとつすごいのは、晩年になってルポルタージュのようにとにかく現地に行き、現場を見て、そこの職人などに取材をしながら作品化する方法を自分で編み出す。ここから『崩れ』とか『木』とかとんでもない傑作が生まれる。出版は彼女の没後だけどね。奈良斑鳩の法輪寺の三重塔の再建に走り回ったり、晩年は足腰が効かず、人に負ぶってもらっても現地の取材を執念のように続けた。このあたり、今のエコロジーとも繋がるし、3.11以降に改めて幸田文の文章が再発見されることになっているのね。
40代になってデヴューして50代半ばにはもう全集が出てるんだからね。でもそこから自分をもうひとつ変えていくんだ。「行動の人」になっていく。そこが凄いところ。でもその種は、実は幸田露伴と過ごした「生活実践」 のなかにあるんだけどね。オジサンこの人の本を読んでいると、なんて的確で美しくてりりしい日本語なんだろうといつも感嘆するの。それは初期の随筆でも小説でも晩年のルポルタージュをベースとした作品でも全部そうなの。女流の文章としてと言うことではなく、もう性別は超えているように思うな。
そうね。でもやっぱり父親とのなかで「生活技術」を教えられて、そこからものの意味や歴史を考えたり観察したり手を動かして感じたりということを、丁寧にやってきたからでしょうね。6歳の時に母が亡くなり、その後姉も弟も死んでしまう。24歳で酒屋の息子と結婚し玉を産むけど、商売も次第に傾き、十年ほどで離婚して玉を連れて、露伴の下に出戻りする。自分のことを「みそっかす」と言ってるけどね。
随筆もどれも好きだけど、一番は「おとうと」かな。これ、市川昆監督で映画化されているからね。 姉役が岸恵子で弟役が川口浩。よかったなぁ。自伝的要素が入ってるね。
山田洋次が市川昆にオマージュを捧げる形で、姉役が吉永小百合、弟役が鶴瓶で映画化されたけどね。これはもう原作とはまるで違ったけど。
最近でも収納術とか断捨離とか言われて、いろいろ本が出てるけど、しゃらくさいと思うものがほとんど。幸田文さんの愛用備品とか見てるとそういうことじゃないんだよな。全然、深さが違うと言う気がする。

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