氣まぐれ剣士の言いたい放題

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767 トマス モア

2010-02-23 18:23:09 | Weblog
氣まぐれ剣士の言いたい放題

767 トマス モア

名著『ユートピア』の著者としても知られるトマス・モアは、十六世紀のイギリスの政治家でした。

深い学識と優れた指導力、人望のため、国王ヘンリー八世から首相に任命され活躍します。

しかし、彼は王が皇后を離婚しその侍女を后にしようとしたことによって
突然に失脚します。他の政治家が皆、王の機嫌をとって賛成したのに対して、
一人だけ反対をとなえたからです。

ヘンリー八世は、賛成しなければ、公職を追放するどころか、死刑に処するとトマス・モアを脅しました。

しかし、それでもトマス・モアは決して自分の信念をまげません。
国王は、トマス・モアに業を煮やしました。

国民が敬愛してやまないトマス・モアに、国王はすぐには刑の執行を命じられなかったのです。そのため十五か月もの間モアを幽閉し、離婚に賛成するように説得を続けたのです。

ある時には、モアの最愛の妻アリスが訪問して涙ながらに説得しました。
「私には、不思議でなりません。いつも賢明に振る舞い、寛容で、物事の判断を誤ったことのないあなたが、なぜ今度だけこのように頑固なのですか。この国の司教様や貴族のすべてが承知なさったことを、なぜ、あなたが承知してはいけないのですか。ただ一言、陛下にイエスとおっしゃれば、また元のようにチェルシイで楽しい生活が送れますのに……。」
 
トマス・モアは妻のこの哀願には心揺さぶれながらも言うのでした。
「アリスよ。チェルシイであなたと何年ぐらい楽しい生活を送ったかね。言ってごらん」
「もう、二十年ぐらいですわ、多分」

「そう、二十年、長いようで短かったね。おかげで楽しかった。本当にありがとう。だがね、アリス、私が家に帰れるとして、後もう幾年いっしょに暮らせるだろう。
 仮にもう千年幸福な生活が送れるとしよう。だが、その幸福が悪い商人が利益を得るようにして手に入るものなら、そのはかない千年のために永遠の幸せを失うことになるのだよ」
 
モアは、獄中で絶えず祈り、黙想し、また書きものをしていたそうです。
そして処刑の日も、少しも平常心を失わず、穏やかな表情で死刑台に登って行きました。

首切り役人が顔をこわばらせてブルブル震えているのを見て、いつものように冗談まで言いました。

「さあ、勇気を出したまえ、心配しないで、これは君の仕事なんだからしっかりやるんだよ。私の首は短くて猪首だから、切りそこなわないように頼むよ。一太刀でスッパリとやってくれたまえ」

彼は誰も憎むことなく、不満ももらすことなく、まわりの人を労わりながら、
天国に召されていきました。

トマス・モアが書いた『ユートピア』という本には、次の言葉が出てきます。
「天が癒すことのできない悲しみは地上にない」
神様の愛に満たされていた彼の心は死を前にしても癒され平穏でした。
彼は永遠なるものを見つめていたのだと思います。

ちなみに、ますます横暴になったヘンリー八世国王は自分に反対する者を次々
と処刑し、火種となった新しい后(きさき)も処刑。

その後に次々と迎えた后たちもほとんどが、離婚されたり処刑されたりしています。

一方、トマス・モアは1935年にカトリック教会に聖人として認められました。
聖トマス・モアとして、いまも世界中の人の尊敬を集めています。

確か、学校でトマス・モアのユートピアは聞いたことのあるような氣がしますが、処刑されたとは知りませんでしたね。

ヘンリー8世のように、権力を握るとみなさん独裁者になるようですね。1回だけでもいいから、独裁者になってみたい氣もしますが・・・。