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英国ロイヤル・オペラ・ハウス『スペードの女王』で納得できる、チャイコフスキー音楽集大成の凄み

2019年03月18日 10時45分20秒 | オペラ(歌劇)をめぐって

先週、15日から、全国のTOHOシネマズ系で上映している2018/19シネマシーズンの作品を観てきました。ご報告が遅くなりましたが、これも見ごたえのある公演の映像でした。別のところでも書きましたが、やっぱりパッパーノはイタリア物やフランス物よりも、重厚なドイツ物、そしてロシア物のほうが、サウンドのまとめ方や音楽の鳴らし方が合っているように思いました。

 そういえば、パッパーノがEMIに録音した聖チェチリア音楽院管とのチャイコフスキーの後期3大交響曲も、思い切りのいい秀演でした。

 『スペードの女王』のスタッフ・キャストは以下の通り。当初の予定のゲルマン役アントネンコが急病で降板というアクシデントでの公演でした。

 

演出:ステファン・ヘアハイム

指揮:アントニオ・パッパーノ

ゲルマン:セルゲイ・ポリャコフ

エレツキー公爵:ウラディミール・ストヤノフ

エヴァ・マリア・ウエストブロック

伯爵夫人:フェリシティ・パーマー

 

 まずは、評価が高かったと聞くヘアハイムの演出。これに舌を巻いた。じつに納得の行く方向である。舞台上にチャイコフスキーが登場し、最後まで、舞台の他の人物たちにまとわりついてドラマが進む。ヘアハイムによれば、音楽誕生のきっかけとなる着想から解き明かし、作曲の過程を重視して具体化した結果だという。こうして、このオペラ世界のすべてが、作曲家の妄想の中にある、とする舞台が実現した。

 これは、オペラと呼ぶにはあまりにもシンフォニックで巨大なこの『スペードの女王』という音響世界を舞台に乗せる最良の方法かも知れない。例えば、ベルリオーズの『ファウストの劫罰』もそうだ。「歌劇場」という物理的空間からはみ出してしまう世界を、どう表現するかは、最近、安易にCGで広げているものが多いが、そんな簡単なものではない。

 肝心の「音楽」だが、パッパーノが、この壮大な音楽、チャイコフスキーが自身の音楽の集大成を目論んでいたのではなかったかと私が思っていた『スペードの女王』の音響世界を、文字通り劇的でシンフォニックな音楽にまとめ上げていた。細部に聞こえる音楽の断片、ちりばめられた音楽の波動のコラージュが巨大な音響へと展開して行ったとき、不思議なノスタルジーを感じて、思わず感動してしまった。やはり、この音楽は、ドラマチック音楽の天才チャイコフスキーが心血を注いだ集大成のひとつなのだ。

 惜しむらくは、ゲルマン役の声量が今いちで突き抜けないことだったが、全体としては好演。先月だったか先々月だったかにNHKーBSで放映した『スペードの女王』でイライラさせられていただけに、改めて、演劇の国イギリスのオペラの底力を満喫した。

 

 

 

 

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