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ダリウス・ミヨーの自作指揮の録音は、BBC放送に残された貴重な記録だと思う。

2010年11月06日 13時45分05秒 | BBC-RADIOクラシックス


 1995年の秋から1998年の春までの約3年間にわたって全100点のCDが発売されたシリーズに《BBC-RADIOクラシックス》というものがあります。これはイギリスのBBC放送局のライブラリーから編成されたもので、曲目構成、演奏者の顔ぶれともに、とても個性的でユニークなシリーズで、各種ディスコグラフィの編者として著名なジョン・ハントが大きく関わった企画でした。
 私はその日本盤で、全点の演奏についての解説を担当しましたが、それは私にとって、イギリスのある時期の音楽状況をトータル的に考えるという、またとない機会ともなりました。その時の原稿を、ひとつひとつ不定期に当ブログに再掲載していきます。そのための新しいカテゴリー『BBC-RADIO(BBCラジオ)クラシックス』も開設しました。
 なお、2010年1月2日付けの当ブログでは、このシリーズの特徴や意義について書いた文章を、さらに、2010年11月2日付けの当ブログでは、このシリーズを聴き進めての寸感を、それぞれ再掲載しましたので、合わせてお読みください。いわゆる西洋クラシック音楽の歴史におけるイギリスが果たした役割について、私なりに考察しています。

 以下の本日掲載分は、第3期発売の15点の1枚目です。

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【日本盤規格番号】CRCB-6061
【曲目】サティ作曲/ミヨー編曲:びっくり箱
    ダリウス・ミヨー:ィンディアナのための音楽 作品148
            :交響曲第10番 作品382
            :バレエ「男とその欲望」
【演奏】ダリウス・ミヨー指揮BBC交響楽団
 マリオン・ドッド(ソプラノ)イヴォンヌ・ニューマン(メゾ・ソプラノ)
 ディヴィット・バーレット(テノール)アンソニー・ホルト(バス)
【録音日】1970年9月、1969年?


■このCDの演奏についてのメモ
 このCDには、フランス近代の作曲家、ドビュッシー、ラヴェル以降で最も重要な作曲家のひとり、ダリウス・ミヨーのオーケストラ作品が4曲収められている。演奏が作曲者自身の指揮するBBC交響楽団なので、それだけでも、歴史的に将来にわたって貴重な記録となるものだ。だが、それ以上に、演奏の音楽的成果の水準の高さに関心を持った。これは、文献的な価値を超えて、長く聴かれる演奏と言えるだろう。
 もともとミヨーには、古くは1935年頃に録音された自作のピアノ協奏曲(独奏:マルグリット・ロン)の指揮の古いSPもあるくらいで、指揮はかなり行っている。加えて、この時期のBBC交響楽団は、首席指揮者アンタル・ドラティの薫陶による再建が軌道に乗り、コーリン・デイヴィスを首席に迎えての充実した演奏が続いていた。
 このCDの録音は、このBBC-RADIOクラシックスのシリーズにはめずらしく、ライヴ収録ではなく、スタジオでの放送用録音が使用されている。このあたりにも、BBC放送局側の、ミヨーの作品をベスト・コンディションで保存しようという熱意がうかがえる。敢えて言えば、この録音の演奏の成果は、〈指揮者ミヨー〉ひとりに負うものではないかも知れない。それほどに、オーケストラ・ドライブに達者なところを聴かせているのだ。
 「交響曲第10番」の第2部、第3部あたりでの豊かな色彩感覚への反応の良さは特筆もので、ミヨーの作品の望む澄んだ響きが、洒落っ気のあるリズムの中で、生き生きと弾んでいる。南米滞在中にインスピレーションを受けたとされるバレエ曲「男とその欲望」は、歌詞を持たない声楽混じりのサウンドと独特のリズムが、不思議な感覚の世界に誘う。ミヨーの作品の個性を正統に鑑賞する録音として、これらは長く記憶される演奏となるだろう。
 なお、イギリス原盤の録音年の表記が、前半2曲のみ1970年9月と記載されていて、後半2曲の録音年の記載がない。だがミヨーは、この前年1969年に初めてイギリスでの演奏を行い録音したと言われているので、おそらくこのCD後半の2曲は、その1969年の録音ではないかと思われる。(1996.6.29 執筆)




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