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ウォルトン「ヴィオラ協奏曲」と「ヴァイオリン協奏曲」の正統を伝える演奏を、BBCに残された録音で聴く

2011年07月11日 15時22分07秒 | BBC-RADIOクラシックス


 1995年の秋から1998年の春までの約3年間にわたって全100点のCDが発売されたシリーズに《BBC-RADIOクラシックス》というものがあります。これはイギリスのBBC放送局のライブラリーから編成されたもので、曲目構成、演奏者の顔ぶれともに、とても個性的でユニークなシリーズで、各種ディスコグラフィの編者として著名なジョン・ハントが大きく関わった企画でした。
 私はその日本盤で、全点の演奏についての解説を担当しましたが、それは私にとって、イギリスのある時期の音楽状況をトータル的に考えるという、またとない機会ともなりました。その時の原稿を、ひとつひとつ不定期に当ブログに再掲載していきます。そのための新しいカテゴリー『BBC-RADIO(BBCラジオ)クラシックス』も開設しました。
 なお、2010年1月2日付けの当ブログでは、このシリーズの特徴や意義について書いた文章を、さらに、2010年11月2日付けの当ブログでは、このシリーズを聴き進めての寸感を、それぞれ再掲載しましたので、合わせてお読みください。いわゆる西洋クラシック音楽の歴史におけるイギリスが果たした役割について、私なりに考察しています。

 以下の本日掲載分は、第4期発売の15点の8枚目です。

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【日本盤規格番号】CRCB-6083
【曲目】ウォルトン:ヴィオラ協奏曲
       :ヴァイオリン協奏曲
【演奏】ピーター・シドロフ(va)
     コリン・デイヴィス指揮BBC交響楽団
     アイオナ・ブラウン(vn)
     エドワード・ダウンズ指揮ロンドン交響楽団
【録音日】1972年8月21日、1967年7月18日


■このCDの演奏についてのメモ
 今世紀のイギリスを代表する作曲家のひとり、ウイリアム・ウォルトンはその生涯に、独奏と大管弦楽との本格的な協奏曲をヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、それぞれのために1曲ずつ残したが、そのうちの2曲が、このCDには収められている。
 冒頭に収められた「ヴィオラ協奏曲」は、ウォルトンの協奏曲の中では最も早くに書き上げられた作品。ナチ台頭前夜の不安な世相を反映しながら、深い祈りにも似た抒情精神にあふれた美しい作品だが、それほど録音はされていない。古くはウォルトン自身の指揮による2種の録音(独奏:37年、ライデル/68年、メニューイン)があったが、88年にナイジェル・ケネディの独奏、プレヴィン指揮ロイヤル・フィルの演奏がCDで発売されて、最近では93年発売の英シャンドス盤で、日本の誇る世界的ヴィオラ奏者今井信子が好演している。
 当CDは1972年のプロムナード・コンサート(プロムス)のライヴ録音で、ここでヴィオラを独奏しているピーター・シドロフは、室内楽ファンならば誰でもその名を知っている弦楽四重奏団、アマデウス・カルテットのヴィオラ奏者。ジュリアード・カルテットのヒリアーと並んで、名カルテットでの活動が中心のヴィオラ奏者の中で、そのヴィルトーゾ性に抜きん出たものを持っていた人だが、これは、その貴重なソロ活動の録音と言えるだろう。ウィーンの流れを汲みながら、戦後、近代感覚を存分に発揮していくつもの名演を残したアマデウス・カルテットの一員だけあって、シドロフの演奏は、この作品の背後にあるほの暗い抒情が豊かに歌い上げられ、時代精神を伝える見事な演奏となっている。コーリン・デーヴィスの指揮も、独奏者の心をよく聴き取りながら、控え目なペースでよく随いている。
 一方の「ヴァイオリン協奏曲」で独奏しているアイオナ・ブラウンは、フィルハーモニア管弦楽団から1964年にネビル・マリナー率いるアカデミー・オブ・セント・マーチン・イン・ザ・フィールズ(アカデミー室内管弦楽団)に移籍し、74年以降、同楽団のリーダー、ソリストとして活躍している。この録音は1967年で、ブラウンがソリストとして高い評価を得つつある頃にあたる。力強いアプローチで弾き切っており、この自国の今世紀を代表するヴァイオリン作品のイメージに、揺るぎない確信を持って接していることが伝わってくる。これもまた、この曲を聴くにふさわしい仕上りを聴かせてくれる録音だ。(1996.7.25 執筆)



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