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英国ロイヤル・オペラ・2019年「椿姫」の圧倒的な説得力

2019年04月05日 09時30分10秒 | オペラ(歌劇)をめぐって

本日、4月5日から全国のTOHOシネマズ系で公開される『椿姫』は、歌手、指揮、演出がしっかりと組みあって、圧倒的な説得力で迫ってくる舞台を見せてくれた。先日、ネゼ=セガン/メトロポリタン歌劇場の新演出でライブ・ビューイングの『椿姫』を鑑賞したばかりだったが、今年は『椿姫』の当たり年である。スタッフ、キャストは以下のとおり。

 

演出:リチャード・エア

指揮:アントネッロ・マナコルダ

 

ヴィオレッタ:エルモネラ・ヤオ

アルフレード:チャールズ・カステロノボ

ジョルジュ・ジェロモン:プラシド・ドミンゴ

 

2019年1月30日公演の収録である。

 

ヤオのヴィオレッタは定評があるものと聞いていたが、これほどとは思わなかった。名演技・名唱で、途方もなく存在感・説得力がある。リチャード・エアの演出は、例の有名なショルティが、このコヴェントガーデン(ロイヤル・オペラ)で収録した公演以来のもので、もう25年間も続いている演出版である。その寸分違わぬ舞台を、ショルティの指揮で歌うアンジェラ・ゲオルギュウと思わずニ重写しにして鑑賞してしまった。

 私は、このゲオルギュウは、少々小うるさく聞こえて、決して好きではない。彼女の良さが、声、しぐさ共にぴたりとハマっているのは『愛の妙薬』だと思っている。あれはいい。

 そして、指揮のマナコルダ。これが、またいい。この指揮者、亡きアバドのマーラー・チェンバー・オーケストラ創設の協力者にしてコンサート・マスターだったというヴァイオリニストで、最近では、メンデルスゾーン『交響曲全集』の録音を完成したというが、これほど音楽がよく流れて、オーケストラを自在に歌わせられる指揮者だとは知らなかった。太いラインのタフな音楽に、細心の注意を払ってからみつく旋律を巧みに操る名人である。心理の変化・転換点に、とても敏感に反応する指揮ぶりには驚いた。ヴェルディの音楽のせわしない変わり目、入れ替わりが、見事に一息の大きな波となって、豊かに弧を描くのを聴いていると、自然にドラマの中に沈み込んで行くから不思議だ。じつにタフな音楽であり、これが、トスカニーニ以来の「せっかちなヴェルディ像」を豊かな地平へと広げ始めた最近のヴェルディ演奏の一つだと思った。

 やはり、ヴェルディは、先日も書いたように、音楽監督パッパーノが振らないほうがいい?

 アルフレードを歌ったカストロノボも、よく伸びる声で応えていてよかった。キャラクターも合っていると思う。だが、出色は父親ジェロモン役で登場したドミンゴの風情だ。ヴィオレッタを説得する場面も、謝罪する終幕も、私は、これほどに説得力のある父親像を聴いたことがなかった。さすが、年の功である。ドミンゴが、低くなった声に合わせてレパートリーを増やしてでも、いつまでも歌い続けられる幸せを感じていると最近言っていたことが、彼の本心から出た言葉なのだと、改めて素直に感動した。

 今年のロイヤル・オペラ『椿姫』は、歴史あるリチャード・エア版『椿姫』の決定版となるものと信じている。

 

 

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