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プロムスの大舞台でダイナミックに鳴り切ったサージェント異色のドビュッシーとフランス歌曲の名唱を聴く

2011年07月20日 10時34分11秒 | BBC-RADIOクラシックス


 1995年の秋から1998年の春までの約3年間にわたって全100点のCDが発売されたシリーズに《BBC-RADIOクラシックス》というものがあります。これはイギリスのBBC放送局のライブラリーから編成されたもので、曲目構成、演奏者の顔ぶれともに、とても個性的でユニークなシリーズで、各種ディスコグラフィの編者として著名なジョン・ハントが大きく関わった企画でした。
 私はその日本盤で、全点の演奏についての解説を担当しましたが、それは私にとって、イギリスのある時期の音楽状況をトータル的に考えるという、またとない機会ともなりました。その時の原稿を、ひとつひとつ不定期に当ブログに再掲載していきます。そのための新しいカテゴリー『BBC-RADIO(BBCラジオ)クラシックス』も開設しました。
 なお、2010年1月2日付けの当ブログでは、このシリーズの特徴や意義について書いた文章を、さらに、2010年11月2日付けの当ブログでは、このシリーズを聴き進めての寸感を、それぞれ再掲載しましたので、合わせてお読みください。いわゆる西洋クラシック音楽の歴史におけるイギリスが果たした役割について、私なりに考察しています。

 以下の本日掲載分は、第4期発売の15点の9枚目です。

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【日本盤規格番号】CRCB-6084
【曲目】ドビュッシー:交響詩「海」
    ショーソン:愛と海の詩
    ラヴェル:歌曲集「シェエラザード」
【演奏】マルコム・サージェント指揮BBC交響楽団
    ジャネット・ベイカー(m.s.)
     スヴェトラーノフ指揮ロンドン交響楽団
    マーガレット・プライス(sop.)
マルコム・サージェント指揮BBC交響楽団
【録音日】1963年9月5日、1975年4月17日、1965年8月6日


■このCDの演奏についてのメモ
 このCDには、フランス近代の作曲家3人の作品が収められている。その内、2曲が管弦楽伴奏付きの歌曲集というめずらしい組み合わせだ。
 アルバムの導入のように置かれたドビュッシーの交響詩「海」は、ロンドンの夏を彩るプロムナード・コンサート(プロムス)の主役として、戦後の長い間、人気を博していたマルコム・サージェント指揮BBC交響楽団の演奏。もちろん、この録音も、1963年のプロムスでのライヴだ。
 演奏は、いわゆるドビュッシー的な淡い色彩の音楽を期待すると、かなり違和感があるかも知れない。遠目からもそれぞれの色彩の違いがくっきりと見分けられるといった傾向の演奏で、身振りの明確な演奏だ。誤解を恐れずに言えば、かなりスペクタクルな動きのはっきりした演奏だが、それは、プロムナード・コンサートという大ホールを埋め尽くす観客を相手にした演奏会にとって、むしろふさわしいことだったのかも知れない。必ずしもサージェントという指揮者の、これまでの録音での特徴にそのまま一致する演奏スタイルではないからだ。いずれにしても結果として、この「海」は、なかなかダイナミックでわかりやすく、親しみやすい演奏になっている。第3楽章は特に圧巻で、音楽が生き生きしていて楽しい。このあたりに、イギリスがクラシック音楽を上手に大衆化している上質なセンスを聴くことができる。
 一方、ショーソンとラヴェルの作品では、イギリスの誇る2人の女性歌手の名唱を聴くことができる。イギリスには、かつてのキャスリーン・フェリアのように、歌曲の分野で実力を発揮する歌手が多いが、ジャネット・ベイカーと、マーガレット・プライスの2人も、そうした例だ。ベイカーには、バルビローリ指揮でベルリオーズ「夏の夜」や、ボールト指揮でブラームス「アルト・ラプソディ」などの録音が、プライスには、アバド指揮でラヴェル「シェエラザード」や、サヴァリッシュのピアノとのシューベルト歌曲集などの録音が、それぞれある。
 ショーソンでロンドン交響楽団を指揮しているのは、ロシアの指揮者エフゲニー・スヴェトラーノフだが、ベイカーの歌唱ともども適度な劇性を聴かせて、この曲にしっかりとした芯を与えて、聴き手を掴んで離さない。旋律のラインを的確に朗々と響かせながら、繊細さを確保した語り口のうまさが光る。
 ラヴェルのプライスは、前述のように、アバドとの87年録音があるが、このサージェントとのライヴ録音は、65年のプロムスでのもの。張りのある若々しく開放的な歌が魅力だ。(1996.7.28 執筆)





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