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私が、ワレフスカの日本公演で初めてその素晴らしさを知ったピアニスト・福原彰美さんのソロリサイタル

2010年11月09日 12時09分03秒 | エッセイ(クラシック音楽)
 クリスチーナ・ワレフスカの感動的な日本公演で、急遽、ワレフスカの要請で伴奏ピアノを務めた福原彰美の素晴らしさについては、2010年6月8日付のこのブログに書きましたが、その福原のピアノ・リサイタルが2011年1月14日(金)に東京・すみだトリフォニー小ホールで開催されるという案内が、福原のニューヨーク便りとともに届きました。ワレフスカとの演奏会直後の会食の際にそうした計画のことは聞いていましたが、曲目の詳細がわかり、私自身の期待が大きく膨らんだので、このブログでご紹介、ということにしました。私、ブログであまり個人的な事柄の延長になる記述を掲載することは意識的に避けていますが、久しぶりの例外です。これも、福原のピアノの魅力がさせていることでしょう。以下、福原自身のコメントから。

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 2011年はロマン派の大家フランツ・リスト生誕200年ということで、リストの作品に焦点をあて、シューベルトの歌曲やワーグナーの歌劇の、リストによる編曲作品に加え、名曲でありながら演奏される機会の少ないメフィストワルツ第2番などを、プログラムに取り入れました。
 以前から私にとって特別な存在であったリストですが、彼の膨大なピアノ作品のレパートリーを知れば知るほど、その音楽に対する感嘆の気持ちでいっぱいになります。今回リストによる編曲芸術の世界に魅せられたことが、ブゾ―ニの編曲作品との出会いにもつながりました。
 また、昨年に引き続き、ニューヨークで今まさに生まれている芸術を紹介する機会として、ライアン・フランシス氏のインスピレーション溢れる作品「ねじまき鳥前奏曲集」を日本初演致します。

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 リストのピアノ編曲の妙については、私も数年前に驚嘆し、あるところに執筆したことがありますが、もっと研究され、演奏されていいジャンルだと思っていました。ピアノ伴奏付き歌曲のピアノ独奏への編曲など、見事なまでのピアニスティックな表現への挑戦です。それはブゾーニについてもいえることです。

 ところで私のブログでは、古い資料を元にしたため福原がサンフランシスコ音楽院で学んだ後のことに触れませんでしたが、彼女はその後、レオン・フライシャー、フィリップ・アントルモン、オクサナ・ヤプロンスカほかのマスタークラスで研鑽を積み、スーザン・W・ローズ奨学金を得てジュリアード音楽院に進学、ピアノ科主任教授ヨヘイヴェド・カプリンスキーに学び、同音楽院の室内楽フェストではイツァーク・パールマンの教えを受けてピアノ三重奏を演奏したそうです。現在、ニューヨークを拠点に活動している、将来がとても楽しみなピアニストです。

 こんどのリサイタルのプログラム詳細、チケット購入などは、以下のアドレスにアクセスしてみてください。

http://eplus.jp/sys/T1U14P0010163P0108P002048564P0050001P006001P0030001


 私は福原のピアニストとしての大成を信じています。それは、先日のワレフスカとの共演の後、彼女のデビューリサイタルのCDなどを聴いて確信しました。彼女の変化のベクトルが、とても望ましい方向に向いていることを感じたのです。それは、21世紀になったクラシック音楽界が、20世紀で得たものと失ったものとのはざまに見出しかけている「何か」だと思っています。私が西洋音楽の「演奏史」と「日本人の受容史」にこだわり続けて聴き、調べ、執筆を続けているのも、正に、その「一点」を知りたいからです。
 ワレフスカが、公演の後の会食時の雑談で言っていたことの一つが思い出されます。ワレフスカがまだヨーロッパで本格デビューする前、ある高名な引退していた音楽プロデューサーが、彼女を称え、様々な有力者への紹介を約束しながら、「私に残された人生では、君が大成した姿を見るまで生きられないのが残念でならない」と語ったと云うのです。ピアティゴルスキーなどを売り出した人だそうです。
 (つまらぬ宣言で恐縮ですが)私は福原彰美が大成するのを見届けたいと思いました。それほどに、久しぶりに感動した若い音楽家です。
 私などよりもずっと以前から、福原のピアノの素晴らしさに気づいて、毎回リサイタルを聴いている方も多いと思いますが、私のように、先ごろの「ワレフスカ日本公演」で初めて彼女のピアノを聴いた方もいらっしゃるようです。ぜひ、会場でまた、お会いしましょう。


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