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レイボヴィッツを聴く3枚

2008年12月25日 17時44分07秒 | 「指揮者120人のコレを聴け!」より




 以下は、このところ続けている1998年6月に発行された『名指揮者120人のコレを聴け!』(洋泉社ムック/絶版)に寄せた原稿の再掲載です。10年前に書いたものですが、先週のように「10年前の…」とタイトルに入れていないのは、もちろん、バレンボイムのような現在進行形の音楽家ではないからです。
 9月1日付のブログの冒頭にも書きましたが、私は、原則としていつも、それぞれの演奏家についての考え方は、よほどのことでない限り、書き加えることはあっても、一度書いた内容を否定したり、書きなおしたりはしません。その時々の、売り手側で作り上げる風潮に合わせたりしていないから、と自負しているからです。だから、著書としてまとめる時にも、それまでに書きためたものをなるべくそのまま再録して、「初出誌一覧」を付けてきました。それが普通の書籍の作り方です。このブログも、いずれはカテゴリー分けをして(本で言えば「章建て」して)、完全な、私の文章のアーカイヴにするつもりですが、しばらくは、この、何がどこにあるのか分からない状態をお許しください。(少なくとも「ブログ内検索」だけは有効に使えます。)

■ルネ・レイボヴィッツ Rene Leibowitz (1913~1972)

●略歴
 1913年にポーランドのワルシャワに生まれたが、26年に家族とともにパリに移住。30年から33年にベルリンでシェーンベルク、次いでウィーンでウェーベルンに師事、12音技法を修得した。フランスに戻ってからは、ラヴェルの指導も受けている。12音技法の指導者として、ブーレーズ、ヘンツェらに影響を与えた作曲家としても知られている。

●キーワード
 この人、ほんとに「指揮者」なの?

●レイボヴィッツを聴く3枚

○ストラヴィンスキー:バレエ音楽《春の祭典》/ロンドン・フェスティバルo. [CHESKY:CD42]1960年録音
 オーケストラは決してヘタではない。むしろ、当時の水準では、かなりのものだ。だが、指揮は相当に怪しい。たぶんきちんと振れていないのだろう。少々オーバーに表現すれば、リズムのややこしさをわかりやすく組み立て直して、イチ、ニ、イチ、ニと数えて、それでも「あ、ずれちゃった。ま、いっか」といった感じ。だが、この録音が行われた1960年当時、この曲に、どのような演奏があったかを考えると、それなりの意義を感じてしまう。必要な音が全部きちんと聞こえてくる真面目な演奏。61年に発売された時、『リーダーズ・ダイジェスト/世界名曲集』でこれを買った人は正解。

○A PORTRAIT OF FRANCE/パリ演奏協会o.、ロンドン・フェスティバルo. [CHESKY:CD57]1960年録音
 これは、フランス音楽の小品(ピエルネ、グノー、オッフェンバック他)を収めたオリジナルLPの8曲に、上記「春祭」のLPの余白に収録されていたドビュッシーの《牧神の午後への前奏曲》を加えたCD。メインの8曲のオケ名は「パリ音楽院」の名が使えなかったからと言われているが、どうだろうか? クリュタンスが振っていた頃の音楽院オケにしては、彼らのなかで出来上がっている美学にかなり反した裸形の音楽がむき出しになっている。レイボヴィッツがそれぞれの様式に無頓着な人だということがわかる。ただし、ラヴェルの《ラ・ヴァルス》は、ウィーン風のパロディではなくパリの社交界への風刺のようでおもしろい。

○ベートーヴェン:交響曲第2番ニ長調、同第5番《運命》、《レオノーレ》序曲第3番/ロイヤルpo.
[CHESKY:CD17]1960年録音
 レイボヴィッツには、このほかに『オペラの夕べ』と題する小品集もあるが、これは時代も国籍も無視して「どれも同じ味」になってしまっている。というよりも、塩、コショウどころか、醤油、ソース、タバスコも使わず、何の味もしないまま食べさせられるような演奏。「何も加えず、何も足さない」を、ほんとに実践してしまう人もいるのだ。ベートーヴェンの『第2』は、「スコアを隅々まで読みました」というだけのぶっきらぼうな演奏だが、音楽そのものが自分の力で凝縮していく。皮肉なことに、9曲のベートーヴェンの交響曲で一番、「これは、」という演奏のない盲点をクリアした盤がこれ。

(付記)
以上の3CDは、いずれも「リーダーズ・ダイジェスト」が発売した通信販売のセット物が原盤。




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