鳩の撃退法

佐藤正午の『鳩の撃退法』を読みました。



いやはや何とも参りましたとしか言いようのない快作です。面白いという点では圧倒的です。謎解きの要素があり、エンタメとしては花がないですが、ぐいぐい引っ張られるという点ではエンタメでもあり、主人公は何やら太宰治風のダメ人間で純文学風でもあり、とっても変な作品でした。



元直木賞作家の主人公は、小説が書けなくなり、流れ者の生活をしています。今は九州のどこかと思われる町で彼女の部屋に居候しながら、彼女の車で風俗店の女性達の送迎の仕事をしています。2月末のある日、たまたますれ違ったスナックの店長の一家との関わりが軸に物語は展開します。



何気なく語られるエピソードが伏線になり、話は意外な展開を続け予想外の方向へ転がって行きます。読者は作者の意のままに連れて行かれます。後半になって中野ふれあいロードに舞台を移し、物語は謎解きを始めます。ミステリー的ではありますが、そこに働いているのは偶然という名のからくりでした。今年のベストに入る作品でした。