退屈しないように シニアの暮らし

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さて何をしようか

幸福な世界 2

2015-05-13 06:54:27 | 韓で遊ぶ


20年目の真実

年端の行かない幼い頃のことです。
苦労して用意したお金で、母は新しい服を一着買ってくれました。その日に限って、母は何があっても見知らぬ人についていってはだめだと念を押しました。そう言われながらも、私は洋服の自慢をしようと出て行きましたが、おやつを食べている他の子供たちをうらやましく思って見ていました。
その時、あるおじさんが私に近づいてきました。
「変電所がどこにあるか知っているなら、つれて行ってくれないか。」
「変電所。」
子供たちは互いに顔を見合わせました。
「あそこの丘じゃないか。」
私はいい事をしようという欲が出て、変電所まで行く道案内を買ってでました。
ところが丘を登って行くと雨が降り始めました。
私たちは少しの間、木の下に非難しました。その時おじさんの親切な声が聞こえました。
「君たち、服を脱ぎなさい、雨に濡れちゃうから。」
私はすぐに新しい服を脱いでおじさんに預けました。
「カバンにちゃんと入れて変電所に行ったら返してあげる。」
変電所はそれほど遠くありませんでした。目的地に着くと、おじさんは私の手に10ウォン硬貨を1枚握らせてくれ、パンを買って来なさいと言いました。パンをおごってもらえると思って、二言なしに走って行きましたが、その日に限ってパン屋は休みでした。がっかりして帰ってみると、あのおじさんは道を走って行っていました。私はびっくりしました。
「僕の服。僕の服を置いて行って。わん、、、わん、、、」
下着姿の私に残ったものは、たった10ウォン硬貨一枚だけでした。
がっかりして帰ってきた私に、母はムチを持ち、私は泣きながら門の外にしばらく座っていました。
それから20年の歳月が流れました。
いつしか小さな繊維工場の責任者になっていた私を一人の友達が訪ねてきました。
彼は取引先の職員で、長い間柄の友達でした。静かな喫茶店に座って友達が変な話を始めました。
「20年前にこんなことがあったんだ。父が失業したために家のくらし向きがとても大変だった。だけど、私の誕生日に父が約束通り、新しい服を1着買って来てくれたんだ。本当にいい服だった。だけどポケットから何が出てきたかわかるかい。」
友達が私に尋ねました。そして話を続けました。
「イチョルス。君の名前が書かれた名札だった。」
まさか、私はすっかり忘れていた記憶がよみがえり本当に驚きました。
友達は、その時父が盗んできたその服をどうしても着ることができず、そのままかけておき、罪責感に悩まされたと言いました。その友達の父親が昨日の夜、亡くなったということでした。20年前の、その幼い子供にすまないと言う言葉を残して。

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