退屈しないように シニアの暮らし

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さて何をしようか

幸福な世界 2

2015-05-19 07:50:01 | 韓で遊ぶ


熊さんの切手

私が夏休みを利用して郵便局でアルバイトをした時のことです。
私が任された仕事は、手紙に消印を押すために整理して、返送する手紙を選び出すことでした。同じような封筒に、同じような位置に書かれた住所や切手は同じだけれど、細かく見てみると、ひとつとして同じものはありません。
広いテーブルの上にいっぱいに積まれた手紙は、その主人を代弁するかのようにそれぞれの顔をして私を待っていました。
10円切手を一面にぺたぺたと貼った手紙、一枚すっきりと貼った手紙、はじめから切手のない手紙。
切手のない手紙はもちろん返送しなければなりません。
もう仕事が手に慣れてきたころの分類作業をしていたある日のことでした。たくさんの手紙の中に私の視線をひく手紙が一通ありました。
くねくねした字、、、幼稚園生ぐらいだけれど、住所もちゃんと書いてあり、規格にも合っているし、切手も定位置に貼ってある正しい手紙でした。
ですが、どこかわからないのですがおかしいのでした。
「おかしいな、、何が変なんだ。」
いろいろ探してみた私は、プッと笑いを噴出してしまいました。
切手が張っていなければならない所に、熊のステッカーがまるで切手のように貼ってあるのです。
「これをちょっと見てください。すごくかわいいでしょ。」
「何だ。おっ、熊のステッカーじゃないか。はははは。」
周りの同僚たちもそれを見て、ひとしきり楽しそうに笑いました。
私は手紙の主人の小さいながらもませてしっかりした発想を楽しく思い、かわいく思いましたが、返送処理をしなければならないのが惜しいと思いました。
その時、ふと幼い頃に読んだ童話の1編を思い出しました。
ある少女が、飴屋で飴を買って飴の代金を風呂敷に包んできた花の種で差し出した時、親切な店の主人がその子の美しい童心を壊したくなくて、おつりまで出したという話。
私は、その小さいながらもませていてしっかりした偽の切手の横に、本当の切手を一枚買ってかわいらしく貼りました。

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