退屈しないように シニアの暮らし

ブログ巡り、パン作り、テニス、犬と遊ぶ、リコーダー、韓国、温泉、俳句、麻雀、木工、家庭菜園、散歩
さて何をしようか

幸福な世界 2

2015-05-14 19:29:12 | 韓で遊ぶ


靴下一足

私は田舎の郵便局の配達員です。
それも船に乗り、また車に乗り換えしばらく行かなければならない南海の小さな島の村の配達員です。出勤の道が大変なので、郵便局に到着する頃、配達業務を開始する前に全身の力の半分は抜けてしまっている状況です。
ほんの何日かでもゆっくり休めたら、と思う気持ちが切実ですが、だからと言って積まれた郵便物を放置することもできません。
一つ一つ分類し袋にいれて出る頃になると決まったように電話がなります。
「あぁ、また来た。もしもし。」
夫婦が二人共に肢体不自由者である家の郵便物を配達するついでに、お使いを何回かやってあげたことがあったのですが、その後からは、初めから遠慮なく注文をするのです。
ボールペン、ほうき、じゅくし柿、、、さらには魚や尿瓶まで、、、。
仕事が忙しくなくて余裕があるときは喜んで手助けしてあげますが、業務量が多い日には正直、嫌になることもありました。
その日注文を受けた物は靴下1足。
私はいらいらする気持ちをなだめながら、仕方なく靴下1足を買って家に向かいました。自転車に乗って船に乗り換えて、また少し入っていかなければならない遠い道。ブツブツ言いながら到着してみると、おばさんが部屋の戸を少し開けて待っていました。
「あれまあ、来たね。あ、これ、いくらかな。」
「あ、はい、2000ウォンです。」
無愛想な私の答えにおばさんはポケットからしわくちゃになった1000ウォン札を2枚差し出しました。
「はいよ、2000ウォン。」
ところが、靴下代を支払ったおばさんが靴下をまた私の手に握らせてくれたのでした。
「毎日、頼みごとをしてすまないね。身体がこうだからお返しする方法もなくて。」
「えっ、いいえ、いいえ、、そんな、、」
つまらないもので恥ずかしいけれど、と言いながら差し出した靴下1足。その小さな贈り物を私はどうしても断ることができませんでした。
靴下を、いいえ、その人の気持ちいただいて帰りながら、私は嫌になってブツブツ言った自分の心が見透かされるのではないかと、後ろを振り返らずに歩きました。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 幸福な世界 2 | トップ | 幸福な世界 2 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

韓で遊ぶ」カテゴリの最新記事