退屈しないように シニアの暮らし

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さて何をしようか

幸福な世界 2

2015-05-16 06:14:52 | 韓で遊ぶ


黄色の封筒

彼は教師です。
それも小学校の落ち着きのない子供たちの中で20年、欲もなく実直に送った教師です。ある日、たくましい青年が彼を訪ねて来ました。
教室の床にひれ伏して挨拶をした青年は、20年前に彼の元を巣立った教え子でした。
「先生、私を覚えていますか。」
「君は、、、」
先生は、かすかな記憶の中から、一人の鼻をたらした学生を思い出しました。貧乏で汚れていて、いつも気後れしていた子供、その子はいつも仲間はずれにされて一人でいました。
国連国際児童基金から分け与えられたお粥と粉ミルクを食べ過ぎてお腹を壊し、友達にからかわれたこともありました。
先生は、のけ者にされたその子をいつも暖かく包んであげました。先生はその子を連れて行き洗ってやって、その子はそういう時、いつも頭を掻いて恥ずかしがりました。
「へへへ、、、」
「ほほ、こいつ、、ズボンをしっかりと持っていろ。」
幼い頃、そのようにか弱くて打ちしおれていた子が、このようにちゃんと大人になって、、、。教え子は、驚きと再会した嬉しさにどうすることもできないでいる先生を家に連れて行きました。
教え子の妻が茶を出して3人が茶を前にして座りました。彼はいい大学をでて、社会的にも成功し、結婚もし、立派な家長になっていました。
手厚いもてなしの夕食の膳を下げた後、彼は引き出しの奥深くから黄色い封筒をひとつ出して来ました。それは昔、先生がクラスの子供たちみんなに作ってくれた一種のタイムカプセルでした。先生は驚いて尋ねました。
「これを、今まで持っていたとは、、、」
是非、先生と同席した席で開封したかったと言う、その黄色い封筒、タイムカプセルから出てきたものは、古いノートと成績表、そして磨り減ったスプーンでした。
「先生このスプーン覚えていますか。」
「、、、。」
スプーンは、お腹を壊した事件が起こった後、その子供の苦しい事情を知った先生が、その子にあげたものでした。先生は毎日弁当を2人分もって来て、その子と一緒に食べ、その子は記念封筒を作った日、その忘れることができない愛のスプーンを封筒の中に入れたのでした。
向かい合った二人はその時の事を思い出して微笑みました。
「あの時、君のあだ名は、多分、大食いだったろう。」
「先生も本当に、、、私はこのスプーンを家宝として大事にします。」
平の教師として過ごした20年の歳月、自分でも知らないうちに胸を押し付ける無力感が洗われたように消えた瞬間でした。

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