便利な切手
産業革命の火がヨーロッパ全体に広がっていた頃、イギリスのロレンド ヒルという人が田舎道を歩いていて、ある家で繰り広げられている諍いを耳にしました。あえてお金を払ってまで手紙を受け取りたくないという女性と配達員のいざこざ、、、。
当時、郵便料金はすべて後払いでした。重さと距離によって決められた配達料を、受取人が、その都度、支払わされていたのです。物を受け取る人の立場としては、さほど重要でない郵便物でなければ、受け取りを拒否することも常でした。そうやって徒労に終わることが頻繁になると、何人かの配達員は適当に料金をまけてやって、会社にはお金を受け取ることができなかったと報告し、自分の懐に入れました。封筒に前もって暗号を書いて受け取りを拒否する方法も内々に黙認されていました。彼が見た女性の姿もそんなよくある状況のひとつでした。
「私は婚約者の手紙を受け取りたくありません。持って帰ってください。」
ロレンド ヒルは、郵便料金を変りに払ってやって、その理由を尋ねました。女性の答えは簡単でした。
「何が書いてあるのかわかるのに、高い料金を払って受け取る必要がないじゃないですか。」
郵便制度の矛盾を痛切に実感した彼は、研究室に閉じこもり解決法を模索しました。長い間の苦悩と研究の末、彼はとうとう郵便料金に代わることができる「切手」を作りました。
「用件のある人に、前もってお金を払って切手を買わせるのだ。」
べたべたする糊がなくても、水とかつばを塗ると封筒に簡単に張ることができる接着性の切手。それを考え出した人は彼の友達である印刷所の主人でした。
そうやって二人が力を合わせ最初の切手が世の中に出ました。財政赤字でひそかに頭を痛めていた郵便局の問題を解決してやり、郵便制度の矛盾を解決した郵便の父ロレンド ヒル卿。郵便物を渡した後になって、やっとお金を現金でやり取りする人々の不便さを減らそうと、自分の時間と熱情を惜しみなく捧げた一人の人の努力。
より成熟した幅の広い疎通の文化を導き出した礎でした。









